ゼロからわかる!「造園工事業許可」の取り方と知っておくべきポイント

造園工職人として、あなたの技術と情熱をさらに大きく花開かせたい。
そうお考えなら、「造園工事業許可」の取得は避けて通れない大切なステップです。

この記事では、造園工事業許可の取得要件から見落としがちなポイントまで、あなたが知りたい情報をわかりやすく解説していきます。

1.「造園工事業」の範囲を明確に!作業内容と他業種との違い

造園工事業は、公園や庭園、街路樹など、私たちの生活空間に緑と潤いをもたらす、とても大切な仕事ですね。
具体的にどのような作業が含まれるのか、そして他の業種とどう違うのか、ご説明しますね。

「建設工事の内容を定める告示」に基づく造園工事業の作業内容

まず、「建設工事の内容を定める告示」という国のルールでは、造園工事業は以下のように定義されています。

  • 造園工事
    整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造し、又は道路、建築物の屋上等を緑化する工事

少し専門的な言葉が並んでいますが、簡単に言うと、土地を整えたり、木を植えたり、石を配置したりして、庭や公園、緑地などを作り、あるいは道路や建物の屋上などを緑で覆う工事全般を指します。

「建設業許可事務ガイドラインの例示」に基づく具体的な作業内容

次に、「建設業許可事務ガイドライン」という、許可を出す側の行政が参考にしている資料には、もっと具体的な例が載っています。

これらの例を一つずつ詳しく見ていきましょう。

  • 植栽工事(しょくさいこうじ)
    • 木や草花を植える作業です。単に植えるだけでなく、その植物が育ちやすいように土壌を改良したり、適切な配置を計画したりする専門的な知識が必要です。
  • 地被工事(ちひこうじ)
    • 地面を覆う植物(芝生、グランドカバーなど)を植える作業です。土壌の侵食防止や美観の向上のために行われます。
  • 景石工事(けいせきこうじ)
    • 庭園や公園で、景観を構成する石(景石)を配置する作業です。石の選び方、配置のバランス、据え付けの技術が求められます。
  • 地ごしらえ工事(じごしらえこうじ)
    • 植栽や施設設置のために、土地の形を整えたり、土壌を改良したりする基礎的な作業です。土の入れ替え、盛り土、客土(きゃくど:質の良い土を入れること)などがあります。
  • 公園設備工事(こうえんせつびこうじ)
    • 公園に遊具(ブランコ、すべり台など)、ベンチ、案内板、パーゴラ(つる棚)などを設置する工事です。
  • 広場工事(ひろばこうじ)
    • 公園内の広場や広場舗装の整備を行う工事です。インターロッキングブロック、レンガ敷き、アスファルト舗装などがあります。
  • 園路工事(えんろこうじ)
    • 庭園や公園内の散策路、通路を整備する工事です。自然石、砂利、舗装材など様々な材料が使われます。
  • 水景工事(すいけいこうじ)
    • 池、滝、噴水、せせらぎなど、水を利用した景観施設を造る工事です。防水処理や循環設備の設置なども含まれます。
  • 屋上緑化工事
    • 建物の屋上を緑化する工事です。特殊な防水層や軽量土壌など、屋上特有の技術が用いられます。都市のヒートアイランド現象緩和など、環境面でも注目されています。
  • 壁面緑化工事
    • 建物の壁面を植物で覆う工事です。壁に取り付けるための専用の構造や灌水(かんすい)システムなども含まれます。
  • 緑地管理工事(ただし、維持管理のみの作業を除く)
    • 植栽後の木の剪定、草刈り、施肥など、緑地の育成・維持管理に関する工事です。ただし、「維持管理のみの作業」、つまり単なる草むしりや水やり、ごみ拾いといった軽微な日常的な管理業務は、建設工事には含まれません。あくまで、建設工事として行われる管理(例:大規模な樹木の移植、病害虫駆除のための薬剤散布など、専門的な技術を要する作業) が対象となります。

間違いやすい他の業種との切り分け

ここがとても大切なポイントです。
造園工事業と間違えやすい業種がいくつかありますので、しっかり区別できるようにしましょう。

  1. 土木一式工事・とび・土工・コンクリート工事との違い
    • 土木一式工事とび・土工・コンクリート工事は、道路の造成、基礎工事、コンクリート構造物の打設など、大規模なインフラ整備や建物の基礎・躯体(くたい)を造る工事がメインです。
    • 造園工事業でも、整地や簡単な地ごしらえ、舗装工事の一部を行うことはありますが、これはあくまで「庭園や公園を作るため」の作業です。例えば、公園の園路のための基盤を作るのは造園工事ですが、公道の造成工事は土木一式工事です。
      • 切り分けのポイント:「公園や庭園などの苑地を作る」という目的で行われる付随的な土工・舗装工事は造園工事。単独で大規模な土砂の移動や構造物を作るのが土木一式やとび・土工・コンクリート工事、と区別されます。
         
  2. 石工事との違い
    • 石工事は、石材を加工して石垣を積んだり、石張りの壁や床を造ったりする工事です。
    • 造園工事業でも「景石のすえ付け」が含まれますが、これは庭園の景観を構成する石を配置する作業であり、石材を加工して積み上げるような本格的な石積み工事とは異なります。
      • 切り分けのポイント: 「景観を目的とした石の配置」が造園工事、「構造物や建築物の一部として石を加工・積み上げる」のが石工事、というイメージです。
         
  3. 舗装工事との違い
    • 舗装工事は、道路や駐車場、運動場などをアスファルト、コンクリート、ブロックなどで舗装する工事です。
    • 造園工事業でも「広場工事」「園路工事」として舗装を行うことがありますが、これは「公園内」や「庭園内」の小規模な通路や広場のための舗装に限られます。公道や大規模な駐車場の舗装は舗装工事が専門です。
      • 切り分けのポイント: 「公園や庭園の付帯施設としての小規模な舗装」が造園工事、「単独の専門工事としての舗装」が舗装工事、と区別されます。

2.「造園工事業」で一般建設業許可を取得するための要件や注意点

ここからは、実際に許可を取得するための大切な要件について、最新の情報も踏まえてご説明しますね。
以前よりも緩和された部分もありますので、ぜひ前向きにご検討ください。

建設業許可の5つの基本要件

一般建設業許可を取得するためには、大きく分けて以下の5つの要件を満たす必要があります。

  1. 経営業務の管理責任者等
  2. 営業所ごとに置く専任の技術者(旧:専任技術者)
  3. 財産的基礎又は金銭的信用
  4. 欠格要件に該当しないこと
  5. 誠実性

一つずつ、分かりやすくご説明しますね。

1.経営業務の管理責任者等

以前は「経営業務の管理責任者(通称:経管)」という、かなり厳しい要件がありましたが、令和2年10月1日からは「経営業務の管理責任者等」という新しい要件に緩和されました。

これは、経営経験のある方がいなくても、経験のある方を補佐する体制が整っていれば許可が取れるようになったということです。

具体的には、以下のいずれかに該当する必要があります。

  • (A)経営業務の管理責任者としての経験を持つ方
    • 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
    • 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験を有する者
    • 建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者
  • (B)適切な経営体制が構築されている方
    • 建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
    • 5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有する者
       
      さらに、以下を有するものを置く必要があります。
      • 申請を行う会社で、建設業の財務管理について役員等に次ぐ職制上の地位の経験を5年以上有する者
      • 申請を行う会社で、建設業の労務管理について役員等に次ぐ職制上の地位の経験を5年以上有する者
      • 申請を行う会社で、建設業の業務運営について役員等に次ぐ職制上の地位の経験を5年以上有する者
         
        ここがポイント:
        • 以前のように社長さんや役員の方が必ずしも長年の建設業経営経験を持っている必要がなくなりました。経験豊富なナンバー2の方や、会社の財務・労務をしっかりと管理できる方がいれば、許可取得の道が開ける可能性が高まりました。
        • 常勤役員等は、原則としてその会社の役員や個人事業主でなければなりません。
        • 経験を証明する書類(確定申告書、工事請負契約書など)が必要になりますので、日ごろからきちんと保管しておくことが大切です。

2.営業所ごとに置く専任の技術者(旧:専任技術者)

以前は「専任技術者」と呼ばれていましたが、要件の本質は変わりません。
各営業所に、その業種に関する専門知識と経験を持った技術者(「営業所技術者」と呼ぶこともあります)を常勤で配置する必要があります。

造園工事業の場合、以下のいずれかの要件を満たす方が必要です。

  • (A)国家資格を持っている方
    • 建設業法「技術検定」:合格証明書
      • 一級造園施工管理技士
      • 二級造園施工管理技士
    • 技術士法「技術士試験」:登録証
      • 建設・総合技術監理(建設)
      • 建設「鋼構造及びコンクリート」・総合技術監理(建設「鋼構造及びコンクリート」)
      • 森林「林業・林産」・総合技術監理(森林「林業・林産」)
      • 森林「森林土木」・総合技術監理(森林「森林土木」)
    • 職業能力開発促進法「技能検定」:合格証書
      検定職種の等級区分が二級のものは、合格後1年以上の実務経験が必要(平成16年4月1日以降の合格者は実務経験3年以上必要)
      • 造園
    • 国土交通大臣が認める登録基幹技能者
      • 登録造園基幹技能者
      • 登録運動施設基幹技能者
  • (B)実務経験が豊富な方
    • 造園工事業に関する実務経験が10年以上ある方
    • 指定学科(土木工学、建築学、都市工学、林学)を卒業している場合、経験年数が短縮されます。
      • 大学・高専卒業:3年以上
      • 高校卒業:5年以上
         
        ここがポイント:
        • 実務経験10年というのは、個人事業主としての経験も含まれます。
        • 経験を証明するためには、工事請負契約書、請求書、入金確認ができる通帳のコピーなど、具体的な証拠書類が必要になります。曖昧な記憶ではなく、客観的に証明できるものを用意しましょう。
        • 専任性について: 営業所技術者は、その営業所に常勤している必要があります。他の会社に籍を置いていたり、他の事業を兼業していたりする場合は認められません。

3.財産的基礎又は金銭的信用

会社にお金がきちんとあるか、信用があるか、という要件です。
一般建設業許可の場合は、以下のいずれかを満たす必要があります。

  • 自己資本が500万円以上あること
    直前の決算書(貸借対照表)の「純資産の額」が500万円以上であればOKです。
  • 500万円以上の資金を調達する能力があること
    預金残高証明書などで500万円以上の残高を証明できればOKです。申請日直前の残高証明書が必要です。
  • 許可申請直前の過去5年間、継続して建設業の許可を受けて営業した実績があること
    すでに許可をお持ちで更新される方などはこちらの要件でクリアできます。
     
    ここがポイント:
    • 「500万円以上の資金を調達する能力」は、申請時に一時的に預金残高を増やして証明することも可能です。ただし、一時的な増額は、将来の経営に影響が出ないよう、慎重に検討しましょう。

4.欠格要件に該当しないこと

建設業の許可を取り消されたり、法律に違反したりしたことがないか、という要件です。

具体的には、以下のような事項に該当しないことが必要です。

  • 成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者
  • 不正な手段で許可を受けた、または営業停止処分に違反したことにより許可を取り消されてから5年が経過していない者
  • 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年が経過していない者
  • 建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法などの特定法令に違反して罰金刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年が経過していない者
  • 暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年が経過していない者
  • 未成年者で、その法定代理人が上記のいずれかに該当する者
     
    ここがポイント:
    • 役員全員、政令で定める使用人(支店長など)、総株主の議決権の5%以上を有する個人株主、個人事業主本人などが対象となります。

5.誠実性

請負契約の締結や履行において、不正または不誠実な行為をするおそれがないこと、という要件です。

  • 具体的には、契約内容を故意に履行しなかったり、請負代金をごまかしたり、他社を欺いたりするような行為がないことが求められます。
  • 過去に建設業法違反などがあった場合、誠実性が認められないことがあります。

社会保険について

建設業許可の取得には、社会保険(健康保険、厚生年金保険)への加入が必須です。

  • 法人であれば、従業員の有無にかかわらず、社長さん一人でも加入義務があります。
  • 個人事業主の場合も、従業員を5人以上雇用していれば加入義務があります。
  • 雇用保険も、従業員を雇用していれば加入義務があります。
     
    ここがポイント:
    • 未加入の場合は、許可申請前に加入手続きを済ませておく必要があります。これは、建設業界全体の健全化を目指す国の動きとして、非常に重視されています。

その他、許可取得に向けた注意点

  • 申請書類の準備: 必要書類は非常に多く、複雑です。ご自身で準備される場合は、時間と労力がかかります。
  • 実務経験の証明: 工事請負契約書、注文書、請求書、入金確認ができる通帳のコピーなど、具体的な証拠書類を漏れなく揃えることが重要です。
  • 営業所の確認: 営業所がきちんと機能しているか(独立したスペースがあるか、看板があるかなど)も確認されます。バーチャルオフィスなどは認められません。
  • 経営業務の管理責任者等と営業所技術者の兼任: 要件を満たせば、同一人物が両方を兼ねることも可能です。ただし、その人が実態としてそれぞれの業務を遂行できる状況にある必要があります。
  • 役員変更登記など: 許可申請前に役員や商号変更などが必要な場合は、事前に済ませておく必要があります。

造園工事業の許可取得は、決して簡単な道のりではありません。

許可取得はゴールではなく、新たなスタートラインです。
この情報が、あなたの事業の発展に少しでも貢献できれば幸いです。