営業所技術者等の役割や資格要件
建設業許可の要件の一つとして、営業所ごとに「営業所技術者等」を置かなければなりません。
令和5年7月の建設業法改正前は、「専任技術者」とよばれていました。
一般建設業許可の営業所技術者等は「営業所技術者」、特定建設業許可の営業所技術者等は「特定営業所技術者」と呼ばれます。
この記事では建設業許可の基本である「営業所技術者等」を、建設業者様のために説明しています。
1.営業所技術者等の役割
営業所技術者等は、通常の勤務時間中は営業所に常勤して、職務に従事する必要があります。(テレワークを含む)
知識と経験を活かして、発注者の期待に応える役割を担います。
- 建設工事の請負契約の適正な締結と履行の確保
- 建設工事の見積もり作成
- 請負契約の締結に関する技術的なサポート
- 発注者との技術的な打ち合わせ
- 契約内容に基づいた工事の進捗管理
- 営業所における技術的なサポート
- 建設工事に関する技術的な相談対応
- 現場の監理技術者や主任技術者への技術的な指導・助言
- 技術的な観点からの契約内容の確認
営業所技術者等の役割は、建設工事の品質と安全性を確保し、建設業の健全な発展に貢献することです。
複数の営業所がある場合、営業所技術者等は兼務することはできません。
1つの営業所に専任している必要があります。

同一営業所内であれば、一人が複数の許可業種の営業所技術者等として掛け持ちをすることはできます。
2.営業所技術者等の資格要件
営業所技術者等の資格要件は、一般建設業許可と特定建設業許可で異なります。
一般建設業許可と特定建設業許可の資格要件は、下表のようになります。
一般建設業許可の営業所技術者
要件 | 詳細 | 備考 |
---|---|---|
国家資格 | 一級、二級建築施工管理技士 一級、二級土木施工管理技士 一級、二級電気工事施工管理技士 一級、二級管工事施工管理技士 等 | 許可を受けようとする業種に関して、一定の国家資格を有する者(一級、二級) |
学歴+実務経験 | 指定学科卒業+実務経験 | 高校所定学科卒業後 + 実務経験5年以上 大学所定学科卒業後 + 実務経験3年以上 |
実務経験 | 10年以上の実務経験 | 許可を受けようとする業種経験で、建設工事の施工を指揮、監督した経験および実際に建設工事の施工に携わった経験です。また注文者側として設計に従事した経験や現場監督技術者としての経験も含まれます。ただし単なる雑務や事務の仕事に関する経験は含まれません。 |
検定合格(技士補・技士)+実務経験 | 検定合格+実務経験 | (令和5年7月1日の要件緩和) 二級の一次検定または二次検定合格後 + 実務経験5年以上 一級の一次検定または二次検定合格後 + 実務経験3年以上 技術検定合格者を指定学科卒業と同等とみなします。(技術検定種目に対応する指定学科に限る) 指定建設業(土、建、電、管、鋼、舗、園)と通は除く。 |

実務経験では、1業種ごとに10年以上の実務経験が必要です。
同じ10年間の期間に、複数工事の実務経験があっても1業種しか認められません。
平成28年5月以前に「とび・土工工事業」許可で請け負った解体工事だけは、「とび・土工工事業」と「解体工事業」の両方の実務経験としてダブルカウントできます。
指定学科卒業の場合は、下表の学科一覧になります。
学科名は高校や大学によって異なるため、判断が難しい場合には許可行政庁に確認してください。
許可を受ける業種 | 指定学科 |
---|---|
土木工事業 舗装工事業 | 土木工学(農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科を含む。以下、この表において同じ。)、都市工学、衛生工学又は交通工学に関する学科 |
建築工事業 大工工事業 ガラス工事業 内装仕上工事業 | 建築学又は都市工学に関する学科 |
左官工事業 とび・土工工事業 石工事業 屋根工事業 タイル・れんが・ブロック工事業 塗装工事業 解体工事業 | 土木工学又は建築学に関する学科 |
電気工事業 電気通信工事業 | 電気工学又は電気通信工学に関する学科 |
管工事業 水道施設工事業 清掃施設工事業 | 土木工学、建築学、機械工学、都市工学又は衛生工学に関する学科 |
鋼構造物工事業 鉄筋工事業 | 土木工学、建築学、又は機械工学に関する学科 |
しゅんせつ工事業 | 土木工学又は機械工学に関する学科 |
板金工事業 | 建築学又は機械工学に関する学科 |
防水工事業 | 土木工学又は建築学に関する学科 |
機械器具設置工事業 消防施設工事業 | 建築学、機械工学又は電気工学に関する学科 |
熱絶縁工事業 | 土木工学、建築学又は機械工学に関する学科 |
造園工事業 | 土木工学、建築学、都市工学又は林学に関する学科 |
さく井工事業 | 土木工学、鉱山学、機械工学又は衛生工学に関する学科 |
建具工事業 | 建築学又は機械工学に関する学科 |
特定建設業許可の特定営業所技術者
要件 | 詳細 | 備考 |
---|---|---|
国家資格 | 一級建築施工管理技士 一級土木施工管理技士 一級電気工事施工管理技士 一級管工事施工管理技士 等 | 許可を受けようとする業種に関して、一定の国家資格を有する者(一級) |
実務経験 | 一般建設業要件+指導監督的実務経験 | 一般建設業許可の営業所技術者の要件を満たし、元請として4,500万円以上の工事について2年以上の指導監督的な実務経験を有する者 指定建設業(土、建、電、管、鋼、舗、園)は除く。 |
大臣認定 | 個別の審査による特例措置 | 海外での実務経験や学歴を持つ者 特定の分野で高度な技術や経験を持つ者 |
技術検定合格による営業所技術者
令和3年4月1日の改正建設業法施行により、技術検定試験の学科試験は第一次検定、実地試験は第2次検定へ変更されました。
第一次検定の合格者には、「技士補」の資格が付与されます。(令和3年以降の技術検定試験を受験した方のみ)
第一次検定の合格者と第二次検定の合格者には、「技士」の資格が付与されます。
1級 第一次検定合格(1級技士補)➡ 第二次検定合格(1級技士)
2級 第一次検定合格(2級技士補)➡ 第二次検定合格(2級技士)
「技士補」または「技士」の資格を取得することで、指定学科卒業と同等と見なされることになりました。
技術検定に対応する指定学科は、下表のとおりになります。
建築機械施工管理技士・電気通信工事施工管理技士は対象外です。
技術検定科目 | 同等とみなす指定学科 |
---|---|
土木施工管理技士 造園施工管理技士 | 土木工学 |
建築施工管理技士 | 建築学 |
電気工事施工管理技士 | 電気工学 |
管工事施工管理技士 | 機械工学 |
下表のとおり、一級の技士補・技士は大学の指定学科卒業者、二級の技士補・技士は高校の指定学科卒業者と同等と見なされます。
指定建設業(土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業)と電気通信工事業は除きます。
実務経験年数 | ||
---|---|---|
大学・短大などの指定学科 | 卒業後3年 | |
高等学校の指定学科 | 卒業後5年 | |
技士補・技士 | 1級第一次又は第二次検定合格 | 合格後3年 |
2級第一次又は第二次検定合格 | 合格後5年 | |
上記以外 | 10年 |

機械器具設置工事業など、技士の資格だけでは営業所技術者になれない業種でも、3年や5年の実務経験を積むことで営業所技術者になることができますね。
3.営業所技術者等の専任性
次に該当する場合は、専任性が認められないため営業所技術者等になることはできません。
- 勤務すべき営業所が現住所から著しく遠距離であり、常識上、通勤することができない者
- すでに他の営業所や他の建設業者の営業所技術者等になっている者
- 「専任の宅地建物取引士」や「管理建築士」など、他の法令により別の営業所での専任が求められる者(同じ営業所内は除く)
- 他に個人事業を行ったり、他の法人の常勤役員となっている者
- パートやアルバイト、契約社員など有期の雇用契約を締結している者
常勤役員でなくても、資格要件を満たせば、一般従業員でも営業所技術者等になることができます。
勤務状況、給与の支払状況、その者に対する人事権の状況等により専任性が認められる場合は、出向社員であっても専任の技術者として取り扱うことができます。
営業所技術者等は、営業所ごとに専任で職務に従事しなければなりません。
そのため、主任技術者や監理技術者と原則兼務することはできません。
しかし小規模な建設業者は、経営業務の管理責任者と営業所技術者等を兼ねて、現場も回ったりします。
そのような事情から、以下の条件に該当する場合は、配置技術者になることができます。
- 専任する営業所で、請負契約が締結された工事であること
- 工事現場と営業所が近接し、常時連絡がとれる体制が整えられていること
- 該当工事が「公共性のある施設もしくは工作物または多数の者が利用する施設もしくは工作物に関する重要な建設工事(個人住宅を除く大部分の工事が該当)で請負期間が4,500万円(建築一式工事の場合は9,000万円)以上」でないこと
※令和7年2月の建設業法施行令改正により、従前の「4,000万円(8,000万円)以上」から引き上げられました。
ちょっと古い情報の動画ですが、参考としてYoutube動画をアップしています。