ゼロからわかる!「とび・土工工事業許可」の取り方と知っておくべきポイント
鳶工職人や土工職人として、あなたの技術と情熱をさらに大きく花開かせたい。
そうお考えなら、「とび・土工工事業許可」の取得は避けて通れない大切なステップです。
この記事では、とび・土工工事業許可の取得要件から見落としがちなポイントまで、あなたが知りたい情報をわかりやすく解説していきます。
1.「とび・土工工事業」の範囲を明確に!作業内容と他業種との違い
とび・土工工事業は、建物を建てるための基礎を造ったり、重いものを運び据え付けたり、高い場所での作業を安全に進めるための足場を組んだり、まさに建設現場の「縁の下の力持ち」であり、多様な技術と経験が求められます。
具体的にどのような作業が含まれるのか、そして他の業種とどう違うのか、ご説明しますね。
「建設工事の内容を定める告示」に基づくとび・土工工事業の作業内容
まず、「建設工事の内容を定める告示」という国のルールでは、とび・土工工事業は以下のように定義されています。
- とび・土工・コンクリート工事
足場の組立て、機械器具・建設資材等の重量物の運搬配置、鉄骨等の組立て、くい打ち、くい抜き及び場所打ちぐい工事、土砂等の掘削、盛上げ、締固め等を行う工事、コンクリートにより工作物を築造する工事その他これらに類する工事
少し長いですが、大きく分けて「とび工事」「土工工事」「コンクリート工事」という3つの要素が含まれています。
「建設業許可事務ガイドラインの例示」に基づく具体的な作業内容
次に、「建設業許可事務ガイドライン」という、許可を出す側の行政が参考にしている資料には、もっと具体的な例が載っています。
これらの例を一つずつ詳しく見ていきましょう。
- とび工事
- 足場組立工事: 建設現場で高所作業を行う職人さんが安全に作業できるよう、建物の周りに足場を組み立てる工事です。建設の安全と効率を左右する、非常に重要な作業です。
- 鉄骨組立工事: 工場で加工された鉄骨部材を現場に運び込み、クレーンなどを使って柱や梁として組み立て、建物の骨組みを造る工事です。高所での作業が多く、高い技術と安全管理が求められます。
- 機械器具設置工事: 重量の大きい機械(例:ボイラー、発電機、大型生産設備など)を現場に運び、基礎の上に正確に据え付ける工事です。クレーンなどの重機を使い、精密な据付技術が求められます。
- 送電線鉄塔組立工事、煙突組立工事、各種プラント・揚排水場等の重量物据付工事、コンクリートブロック据付工事: いずれも、巨大な構造物や重量物を組み立てたり、特定の場所に正確に設置したりする工事であり、「とび」の技術が活かされます。
- 土工工事
- 掘削工事: 建物の基礎を造るためや、道路、下水道などを埋設するために、土を掘り起こす工事です。重機を使った大規模な掘削から、手作業での細かな掘削まで含まれます。
- 盛土工事: 地面を高くしたり、平坦にしたりするために、土を盛り上げて締め固める工事です。道路の路盤や宅地の造成などで重要になります。
- コンクリート打設工事: 型枠の中に生コンクリートを流し込み、固めて構造物(基礎、擁壁、床など)を造る工事です。コンクリートの品質管理と、正確な打設が求められます。
- 地すべり防止工事: 地盤の安定を図るために、アンカー工法や排水工法などを駆使して、地すべりを防ぐ工事です。斜面の安定化工事なども含まれます。
- 地盤改良工事: 軟弱な地盤を強化するために、薬液注入、砂杭打設、深層混合処理など、様々な工法を用いて地盤の支持力を高める工事です。
- ボーリング工事: 地盤調査のために穴を掘ったり、地盤改良のために薬剤などを注入するための穴を掘ったりする工事です。
- コンクリート工事
- 基礎工事: 建物の荷重を地盤に伝えるための土台を造る工事です。杭基礎、直接基礎など、地盤の状況に応じた様々な工法があります。
- 擁壁工事: 土砂の崩壊を防ぐために、コンクリートなどで壁を造る工事です。宅地造成などで斜面を安定させるために行われます。
- 水路工事、ダム工事: コンクリートを用いて水路やダムの一部を造る工事です。土木一式工事の中の個別工程としても行われます。
間違いやすい他の業種との切り分け
ここがとても大切なポイントです。
とび・土工工事業と間違えやすい業種がいくつかありますので、しっかり区別できるようにしましょう。
- 土木一式工事、建築一式工事との違い
- 一式工事(土木一式、建築一式) は、大規模な土木工作物や建物を、総合的に企画、指導及び調整して完成させる工事です。とび・土工工事業は、それら一式工事の中の個別の専門工事の一つです。
- 切り分けのポイント:「建物や道路全体を統括して造る」のが一式工事、「土を掘る、足場を組む、コンクリートを打つ、重量物を据え付ける」といった個別の専門的な作業を単体で請け負うのがとび・土工工事業です。
- 一式工事(土木一式、建築一式) は、大規模な土木工作物や建物を、総合的に企画、指導及び調整して完成させる工事です。とび・土工工事業は、それら一式工事の中の個別の専門工事の一つです。
- 鋼構造物工事との違い
- 鋼構造物工事業は、形鋼や鋼板などの「鋼材を加工し、溶接やボルトで組み立てて、構造物として建設する」工事です。
- とび・土工工事業の「鉄骨組立工事」も鉄骨を組み立てる点では似ていますが、とび・土工工事業はあくまで「現場での鉄骨の組み立て・建方(たてかた)作業」が主であり、工場での鋼材加工や製作は含みません。
- 切り分けのポイント:「鋼材そのものの製作・加工」が鋼構造物工事、「現場での鋼材の据え付け・組み立て」がとび・土工工事業。ただし、多くのとび工事業者は、鋼構造物工事の許可も併せて取得しています。
- 機械器具設置工事との違い
- 機械器具設置工事は、工場生産設備、運搬機器、立体駐車場など、「特定の機能を持つ機械器具そのものを設置する」 工事です。
- とび・土工工事業の「機械器具設置工事」は、機械器具の「運搬、配置、据え付け(基礎への固定など)」を行います。
- 切り分けのポイント: 「機械本体の組み立てや試運転調整まで含めて設置する」のが機械器具設置工事、「機械の運搬、適切な場所への据え付け、基礎工事」がとび・土工工事業。これも重複する部分が多く、両方の許可を持つ業者が多いです。
- 舗装工事との違い
- 舗装工事は、アスファルトやコンクリートで道路などを「舗装する」工事です。
- とび・土工工事業は、舗装を行う前の「路盤の形成、地盤改良、掘削・盛土」など、舗装の下地となる作業を行います。
- 切り分けのポイント: 「舗装材を敷き均し、固める」のが舗装工事、「舗装のための土台を造る」のがとび・土工工事業。
2.「とび・土工工事業」で一般建設業許可を取得するための要件や注意点
ここからは、実際に許可を取得するための大切な要件について、最新の情報も踏まえてご説明しますね。
以前よりも緩和された部分もありますので、ぜひ前向きにご検討ください。
建設業許可の5つの基本要件
一般建設業許可を取得するためには、大きく分けて以下の5つの要件を満たす必要があります。
- 経営業務の管理責任者等
- 営業所ごとに置く専任の技術者(旧:専任技術者)
- 財産的基礎又は金銭的信用
- 欠格要件に該当しないこと
- 誠実性
一つずつ、分かりやすくご説明しますね。
1.経営業務の管理責任者等
以前は「経営業務の管理責任者(通称:経管)」という、かなり厳しい要件がありましたが、令和2年10月1日からは「経営業務の管理責任者等」という新しい要件に緩和されました。
これは、経営経験のある方がいなくても、経験のある方を補佐する体制が整っていれば許可が取れるようになったということです。
具体的には、以下のいずれかに該当する必要があります。
- (A)経営業務の管理責任者としての経験を持つ方
- 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
- 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験を有する者
- 建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者
- (B)適切な経営体制が構築されている方
- 建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
- 5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有する者
さらに、以下を有するものを置く必要があります。- 申請を行う会社で、建設業の財務管理について役員等に次ぐ職制上の地位の経験を5年以上有する者
- 申請を行う会社で、建設業の労務管理について役員等に次ぐ職制上の地位の経験を5年以上有する者
- 申請を行う会社で、建設業の業務運営について役員等に次ぐ職制上の地位の経験を5年以上有する者
ここがポイント:- 以前のように社長さんや役員の方が必ずしも長年の建設業経営経験を持っている必要がなくなりました。経験豊富なナンバー2の方や、会社の財務・労務をしっかりと管理できる方がいれば、許可取得の道が開ける可能性が高まりました。
- 常勤役員等は、原則としてその会社の役員や個人事業主でなければなりません。
- 経験を証明する書類(確定申告書、工事請負契約書など)が必要になりますので、日ごろからきちんと保管しておくことが大切です。
2.営業所ごとに置く専任の技術者(旧:専任技術者)
以前は「専任技術者」と呼ばれていましたが、要件の本質は変わりません。
各営業所に、その業種に関する専門知識と経験を持った技術者(「営業所技術者」と呼ぶこともあります)を常勤で配置する必要があります。
とび・土工工事業の場合、以下のいずれかの要件を満たす方が必要です。
- (A)国家資格を持っている方
- 建設業法「技術検定」:合格証明書
- 一級建設機械施工管理技士
- 二級建設機械施工管理技士(第一種~第六種)
- 一級土木施工管理技士
- 一級土木施工管理技士補:合格後実務経験3年以上
- 二級土木施工管理技士(土木、薬液注入)
- 二級土木施工管理技士(鋼構造物塗装):合格後実務経験5年以上
- 二級土木施工管理技士補(土木、鋼構造物塗装、薬液注入):合格後実務経験5年以上
- 一級建築施工管理技士
- 一級建築施工管理技士補:合格後実務経験3年以上
- 二級建築施工管理技士(建築、仕上げ):合格後実務経験5年以上
- 二級建築施工管理技士(躯体)
- 二級建築施工管理技士補:合格後実務経験5年以上
- 一級造園施工管理技士:合格後実務経験3年以上
- 一級造園施工管理技士補:合格後実務経験3年以上
- 二級造園施工管理技士:合格後実務経験5年以上
- 二級造園施工管理技士補:合格後実務経験5年以上
- 技術士法「技術士試験」:登録証
- 建設・総合技術監理(建設)
- 建設「鋼構造及びコンクリート」・総合技術監理(建設「鋼構造及びコンクリート」)
- 農業「農業農村工学」・総合技術監理(農業「農業農村工学」)
- 水産「水産土木」・総合技術監理(水産「水産土木」)
- 森林「森林土木」・総合技術監理(森林「森林土木」)
- 民間資格:認定証明書、認定証、登録証
- 地すべり防止工事士:登録後1年以上の実務経験
- 登録基礎ぐい工事
- 職業能力開発促進法「技能検定」:合格証書
検定職種の等級区分が二級のものは、合格後1年以上の実務経験が必要(平成16年4月1日以降の合格者は実務経験3年以上必要)- ウェルポイント施工
*実務経験は土工工事に関するものに限る - 型枠施工
- とび・とび工/コンクリート圧送施工
*検定職種「とび・とび工」の実務経験はとび工事に関するもの、「コンクリート圧送施工」の実務経験はコンクリート工事に関するものに限る
- ウェルポイント施工
- 国土交通大臣が認める登録基幹技能者
- 登録橋梁基幹技能者
- 登録コンクリート圧送基幹技能者
- 登録トンネル基幹技能者
- 登録機械土工基幹技能者
- 登録PC基幹技能者
- 登録鳶・土工基幹技能者
- 登録切断穿孔基幹技能者
- 登録エクステリア基幹技能者
- 登録グラウト基幹技能者
- 登録運動施設基幹技能者
- 登録基礎工基幹技能者
- 登録標識・路面標示基幹技能者
- 登録あと施工アンカー基幹技能者
- 登録土質改良基幹技能者
- 登録都市トンネル基幹技能者
- 登録潜函基幹技能者
- 建設業法「技術検定」:合格証明書
- (B)実務経験が豊富な方
- とび・土工工事業に関する実務経験が10年以上ある方
- 指定学科(土木工学、建築学)を卒業している場合、経験年数が短縮されます。
- 大学・高専卒業:3年以上
- 高校卒業:5年以上
ここがポイント:- 実務経験10年というのは、個人事業主としての経験も含まれます。
- 経験を証明するためには、工事請負契約書、請求書、入金確認ができる通帳のコピーなど、具体的な証拠書類が必要になります。曖昧な記憶ではなく、客観的に証明できるものを用意しましょう。
- 専任性について: 営業所技術者は、その営業所に常勤している必要があります。他の会社に籍を置いていたり、他の事業を兼業していたりする場合は認められません。
3.財産的基礎又は金銭的信用
会社にお金がきちんとあるか、信用があるか、という要件です。
一般建設業許可の場合は、以下のいずれかを満たす必要があります。
- 自己資本が500万円以上あること
直前の決算書(貸借対照表)の「純資産の額」が500万円以上であればOKです。 - 500万円以上の資金を調達する能力があること
預金残高証明書などで500万円以上の残高を証明できればOKです。申請日直前の残高証明書が必要です。 - 許可申請直前の過去5年間、継続して建設業の許可を受けて営業した実績があること
すでに許可をお持ちで更新される方などはこちらの要件でクリアできます。
ここがポイント:- 「500万円以上の資金を調達する能力」は、申請時に一時的に預金残高を増やして証明することも可能です。ただし、一時的な増額は、将来の経営に影響が出ないよう、慎重に検討しましょう。
4.欠格要件に該当しないこと
建設業の許可を取り消されたり、法律に違反したりしたことがないか、という要件です。
具体的には、以下のような事項に該当しないことが必要です。
- 成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者
- 不正な手段で許可を受けた、または営業停止処分に違反したことにより許可を取り消されてから5年が経過していない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年が経過していない者
- 建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法などの特定法令に違反して罰金刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年が経過していない者
- 暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年が経過していない者
- 未成年者で、その法定代理人が上記のいずれかに該当する者
ここがポイント:- 役員全員、政令で定める使用人(支店長など)、総株主の議決権の5%以上を有する個人株主、個人事業主本人などが対象となります。
5.誠実性
請負契約の締結や履行において、不正または不誠実な行為をするおそれがないこと、という要件です。
- 具体的には、契約内容を故意に履行しなかったり、請負代金をごまかしたり、他社を欺いたりするような行為がないことが求められます。
- 過去に建設業法違反などがあった場合、誠実性が認められないことがあります。
社会保険について
建設業許可の取得には、社会保険(健康保険、厚生年金保険)への加入が必須です。
- 法人であれば、従業員の有無にかかわらず、社長さん一人でも加入義務があります。
- 個人事業主の場合も、従業員を5人以上雇用していれば加入義務があります。
- 雇用保険も、従業員を雇用していれば加入義務があります。
ここがポイント:- 未加入の場合は、許可申請前に加入手続きを済ませておく必要があります。これは、建設業界全体の健全化を目指す国の動きとして、非常に重視されています。
その他、許可取得に向けた注意点
- 申請書類の準備: 必要書類は非常に多く、複雑です。ご自身で準備される場合は、時間と労力がかかります。
- 実務経験の証明: 工事請負契約書、注文書、請求書、入金確認ができる通帳のコピーなど、具体的な証拠書類を漏れなく揃えることが重要です。
- 営業所の確認: 営業所がきちんと機能しているか(独立したスペースがあるか、看板があるかなど)も確認されます。バーチャルオフィスなどは認められません。
- 経営業務の管理責任者等と営業所技術者の兼任: 要件を満たせば、同一人物が両方を兼ねることも可能です。ただし、その人が実態としてそれぞれの業務を遂行できる状況にある必要があります。
- 役員変更登記など: 許可申請前に役員や商号変更などが必要な場合は、事前に済ませておく必要があります。
3.経営事項審査における「法面処理工事」について
経営事項審査(経審)は、公共工事の入札に参加するために必要となる、会社の経営状況や技術力を数値化して評価する制度です。この経審の中で、「法面処理工事」も重要な評価項目の一つとして扱われます。
法面処理工事とは?
「法面(のりめん)」とは、道路や鉄道、造成地などで、切り土(掘り下げた部分)や盛り土(盛り上げた部分)によって作られた斜面のことです。この法面は、雨や風、地震などによって崩壊する危険性があるため、これを防止し、安定させるための工事が「法面処理工事」です。
法面処理工事は、とび・土工工事業の重要な作業内容の一つであり、「地すべり防止工事」や「地盤改良工事」などと密接に関連します。
経営事項審査での評価のされ方
法面処理工事の完成工事高は、高く評価される項目の一つです。
公共工事において法面処理は頻繁に行われるため、実績が直接的に評価につながります。
法面処理工事は、以下のような理由から、建設業の中でも特に高度な技術と社会的な重要性が求められる工事として認識されています。
- 災害防止: 地すべりや落石、斜面崩壊などの自然災害から人命や財産を守るための、非常に重要な防災工事です。
- 専門性の高さ: 地質、水文、地形、気象などの多様な要素を考慮した専門的な判断と、適切な工法の選定が必要です。
- 安全性: 高所作業や危険な斜面での作業が多く、高い安全管理体制が求められます。
- 公共性の高さ: 道路や鉄道、宅地造成など、公共性の高いインフラ整備に直接関わります。
これらの理由から、法面処理工事の実績を持つ建設業者は、高い技術力と信頼性を持っていると評価され、経審において優遇される傾向にあります。
とび・土工工事業の許可取得は、決して簡単な道のりではありません。
許可取得はゴールではなく、新たなスタートラインです。
この情報が、あなたの事業の発展に少しでも貢献できれば幸いです。

