ゼロからわかる!「解体工事業許可」の取り方と知っておくべきポイント
解体工職人として、あなたの技術と情熱をさらに大きく花開かせたい。
そうお考えなら、「解体工事業許可」の取得は避けて通れない大切なステップです。
この記事では、解体工事業許可の取得要件から見落としがちなポイントまで、あなたが知りたい情報をわかりやすく解説していきます。
1.「解体工事業」の範囲を明確に!作業内容と他業種との違い
解体工事業は、役目を終えた建物や構造物を取り壊し、新しい土地の利用へと繋げる、非常に重要な役割を担うお仕事ですね。
具体的にどのような作業が含まれるのか、そして他の業種とどう違うのか、ご説明しますね。
「建設工事の内容を定める告示」に基づく解体工事業の作業内容
まず、「建設工事の内容を定める告示」という国のルールでは、解体工事業は以下のように定義されています。
- 解体工事
工作物解体工事を施工する工事
簡単に言うと、建物やその他の工作物(橋、道路、プラントなど)を取り壊す工事全般を指します。
「建設業許可事務ガイドラインの例示」に基づく具体的な作業内容
次に、「建設業許可事務ガイドライン」という、許可を出す側の行政が参考にしている資料には、もっと具体的な例が載っています。
これらの例を一つずつ詳しく見ていきましょう。
- 建物解体工事全般
- 木造建物の解体: 住宅、長屋、店舗など、木造でできた建物を解体します。手作業と重機を組み合わせて、安全かつ効率的に進めます。
- 鉄骨造建物の解体: 工場、倉庫、商業施設など、鉄骨でできた建物を解体します。ガス切断や重機を用いた切断・破砕などが伴います。
- 鉄筋コンクリート造(RC造)建物の解体: マンション、ビル、学校など、鉄筋とコンクリートでできた強固な建物を解体します。大型重機による圧砕、ブレーカーによる破砕、ワイヤーソーなど、専門的な機械と技術を要します。
- 内装解体工事
- 店舗や事務所の改装・原状回復に伴う、内壁、床、天井、間仕切り、設備機器などの部分的な解体。これは「解体工事」の許可だけでなく、規模によっては「内装仕上工事」の範疇とみなされることもあります。
- 付帯設備の解体
- 建物の解体に伴う、給排水管、電気配線、空調設備などの撤去。
- アスベスト(石綿)除去工事
- 建物にアスベストが含まれている場合、飛散防止措置を講じた上で、専門の作業員が除去する工事です。これは解体工事の中でも特に専門性が高く、別途「特定粉じん作業等」の届出や、作業主任者の配置、防護措置などが厳しく義務付けられています。
- 基礎部分の解体・撤去
- 建物本体を解体した後、地中に残る基礎部分(コンクリート、杭など)を撤去し、更地にする作業。
- 工作物(建物以外)の解体
- 橋梁、道路構造物、トンネルの一部、ダムの一部、タンク、プラント設備、煙突、擁壁などの解体工事。これらの解体も解体工事業の範囲に含まれます。
- RC橋梁上部解体工事、高架構造物解体工事、舗装版破砕工事など
- ここが重要です!
解体工事業は、ただ壊すだけでなく、安全管理、環境対策(騒音、振動、粉じん、廃棄物の分別・処理)、そして周辺への影響を最小限に抑えるための技術とノウハウが非常に重要となります。
間違いやすい他の業種との切り分け
2016年(平成28年)の建設業法改正により、「とび・土工・コンクリート工事業」から「解体工事業」が独立しました。これにより、以前はとび・土工で請け負っていた解体工事も、500万円以上の場合は別途「解体工事業」の許可が必要になりました。
解体工事業と間違えやすい業種がいくつかありますので、しっかり区別できるようにしましょう。
- とび・土工・コンクリート工事との違い
- 以前は解体工事の多くが「とび・土工・コンクリート工事業」に含まれていましたが、法改正により分離されました。
- とび・土工・コンクリート工事は、足場の組立て、重量物の運搬据付、鉄骨の組立て、くい打ち・くい抜き、土砂等の掘削・盛上げ・締固め、コンクリートの築造など、「建設工事の基礎部分や、重機・高所作業全般」 を指します。
- 解体工事業は、「工作物を取り壊すこと」 に特化しています。
- 切り分けのポイント:「新しく造るための基礎工事や土砂の移動」 はとび・土工・コンクリート工事。「既存の工作物を取り壊し、撤去する」 のが解体工事業。
ただし、解体工事の現場では、足場組立(とび)、重機の使用(とび・土工)、基礎の撤去(土工・コンクリート)など、とび・土工工事業の技術が不可欠です。そのため、多くの解体工事業者はとび・土工工事業の許可も併せて取得しています。
- 切り分けのポイント:「新しく造るための基礎工事や土砂の移動」 はとび・土工・コンクリート工事。「既存の工作物を取り壊し、撤去する」 のが解体工事業。
- 土木一式工事、建築一式工事との違い
- 一式工事(土木一式、建築一式) は、大規模な土木工作物や建物を、総合的に企画、指導及び調整して完成させる工事です。
- 解体工事業は、その一式工事の一部として行われる「解体」という専門工事です。例えば、新しい建物を建てるための準備として既存建物を解体する場合、解体工事は建築一式工事の中の一工程として位置づけられます。
- 切り分けのポイント:「建物や道路全体を統括して造る」のが一式工事、「既存のものを壊す」のが解体工事業。一式工事の元請けが、下請けとして解体業者に発注するのが一般的です。
- 内装仕上工事との違い
- 内装仕上工事業は、建物の内装(壁、床、天井、間仕切りなど)を「新しく造ったり、改修したりする」工事です。
- 解体工事業は、内装を「取り壊し、撤去する」作業です。
- 切り分けのポイント: 原状回復のための内装解体は「解体工事業」に該当しますが、新しい内装を造る前提での解体であれば、全体として「内装仕上工事」の一部とみなされることもあります。契約の実態や工事の主たる目的で判断されます。
2.「解体工事業」で一般建設業許可を取得するための要件や注意点
ここからは、実際に許可を取得するための大切な要件について、最新の情報も踏まえてご説明しますね。
以前よりも緩和された部分もありますので、ぜひ前向きにご検討ください。
建設業許可の5つの基本要件
一般建設業許可を取得するためには、大きく分けて以下の5つの要件を満たす必要があります。
- 経営業務の管理責任者等
- 営業所ごとに置く専任の技術者(旧:専任技術者)
- 財産的基礎又は金銭的信用
- 欠格要件に該当しないこと
- 誠実性
一つずつ、分かりやすくご説明しますね。
1.経営業務の管理責任者等
以前は「経営業務の管理責任者(通称:経管)」という、かなり厳しい要件がありましたが、令和2年10月1日からは「経営業務の管理責任者等」という新しい要件に緩和されました。
これは、経営経験のある方がいなくても、経験のある方を補佐する体制が整っていれば許可が取れるようになったということです。
具体的には、以下のいずれかに該当する必要があります。
- (A)経営業務の管理責任者としての経験を持つ方
- 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
- 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験を有する者
- 建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者
- (B)適切な経営体制が構築されている方
- 建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
- 5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有する者
さらに、以下を有するものを置く必要があります。- 申請を行う会社で、建設業の財務管理について役員等に次ぐ職制上の地位の経験を5年以上有する者
- 申請を行う会社で、建設業の労務管理について役員等に次ぐ職制上の地位の経験を5年以上有する者
- 申請を行う会社で、建設業の業務運営について役員等に次ぐ職制上の地位の経験を5年以上有する者
ここがポイント:- 以前のように社長さんや役員の方が必ずしも長年の建設業経営経験を持っている必要がなくなりました。経験豊富なナンバー2の方や、会社の財務・労務をしっかりと管理できる方がいれば、許可取得の道が開ける可能性が高まりました。
- 常勤役員等は、原則としてその会社の役員や個人事業主でなければなりません。
- 経験を証明する書類(確定申告書、工事請負契約書など)が必要になりますので、日ごろからきちんと保管しておくことが大切です。
2.営業所ごとに置く専任の技術者(旧:専任技術者)
以前は「専任技術者」と呼ばれていましたが、要件の本質は変わりません。
各営業所に、その業種に関する専門知識と経験を持った技術者(「営業所技術者」と呼ぶこともあります)を常勤で配置する必要があります。
解体工事業の場合、以下のいずれかの要件を満たす方が必要です。
- (A)国家資格を持っている方
- 建設業法「技術検定」:合格証明書
- 一級土木施工管理技士
(平成27年度までの合格者に対しては、解体工事に関する実務経験1年以上又は登録解体工事講習の受講が必要) - 一級土木施工管理技士補:合格後3年以上の実務経験
- 二級土木施工管理技士(土木)
(平成27年度までの合格者に対しては、解体工事に関する実務経験1年以上又は登録解体工事講習の受講が必要) - 二級土木施工管理技士(鋼構造物塗装、薬液注入):合格後5年以上の実務経験
- 二級土木施工管理技士補(土木、鋼構造物塗装、薬液注入):合格後5年以上の実務経験
- 一級建築施工管理技士
(平成27年度までの合格者に対しては、解体工事に関する実務経験1年以上又は登録解体工事講習の受講が必要) - 一級建築施工管理技士補:合格後3年以上の実務経験
- 二級建築施工管理技士(建築、躯体)
(平成27年度までの合格者に対しては、解体工事に関する実務経験1年以上又は登録解体工事講習の受講が必要) - 二級建築施工管理技士(仕上げ):合格後5年以上の実務経験
- 二級建築施工管理技士補:合格後5年以上の実務経験
- 一級造園施工管理技士:合格後3年以上の実務経験
- 一級造園施工管理技士補:合格後3年以上の実務経験
- 二級造園施工管理技士:合格後5年以上の実務経験
- 二級造園施工管理技士補:合格後5年以上の実務経験
- 一級土木施工管理技士
- 技術士法「技術士試験」:登録証
- 建設 ・総合技術監理(建設)
*合格年度に関わらず、解体工事の実務経験1年以上の証明又は登録解体工事講習の受講が必要 - 建設 「鋼構造及びコンクリート」 ・総合技術監理 (建設 「鋼構造及びコンクリート」 )
*合格年度に関わらず、解体工事の実務経験1年以上の証明又は登録解体工事講習の受講が必要
- 建設 ・総合技術監理(建設)
- 民間資格:合格証明書、登録証、資格者証
- 解体工事施工技士
- 職業能力開発促進法「技能検定」:合格証書
検定職種の等級区分が二級のものは、合格後1年以上の実務経験が必要(平成16年4月1日以降の合格者は実務経験3年以上必要)- とび・とび工(解体工事に関する実務経験のみに限る)
- 国土交通大臣が認める登録基幹技能者
- 登録解体基幹技能者
- 建設業法「技術検定」:合格証明書
- (B)実務経験が豊富な方
- 解体工事業に関する実務経験が10年以上ある方
- 指定学科(土木工学、建築学)を卒業している場合、経験年数が短縮されます。
- 大学・高専卒業:3年以上
- 高校卒業:5年以上
ここがポイント:- 実務経験10年というのは、個人事業主としての経験も含まれます。
- 経験を証明するためには、工事請負契約書、請求書、入金確認ができる通帳のコピーなど、具体的な証拠書類が必要になります。曖昧な記憶ではなく、客観的に証明できるものを用意しましょう。
- 専任性について: 営業所技術者は、その営業所に常勤している必要があります。他の会社に籍を置いていたり、他の事業を兼業していたりする場合は認められません。
3.財産的基礎又は金銭的信用
会社にお金がきちんとあるか、信用があるか、という要件です。
一般建設業許可の場合は、以下のいずれかを満たす必要があります。
- 自己資本が500万円以上あること
直前の決算書(貸借対照表)の「純資産の額」が500万円以上であればOKです。 - 500万円以上の資金を調達する能力があること
預金残高証明書などで500万円以上の残高を証明できればOKです。申請日直前の残高証明書が必要です。 - 許可申請直前の過去5年間、継続して建設業の許可を受けて営業した実績があること
すでに許可をお持ちで更新される方などはこちらの要件でクリアできます。
ここがポイント:- 「500万円以上の資金を調達する能力」は、申請時に一時的に預金残高を増やして証明することも可能です。ただし、一時的な増額は、将来の経営に影響が出ないよう、慎重に検討しましょう。
4.欠格要件に該当しないこと
建設業の許可を取り消されたり、法律に違反したりしたことがないか、という要件です。
具体的には、以下のような事項に該当しないことが必要です。
- 成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者
- 不正な手段で許可を受けた、または営業停止処分に違反したことにより許可を取り消されてから5年が経過していない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年が経過していない者
- 建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法などの特定法令に違反して罰金刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年が経過していない者
- 暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年が経過していない者
- 未成年者で、その法定代理人が上記のいずれかに該当する者
ここがポイント:- 役員全員、政令で定める使用人(支店長など)、総株主の議決権の5%以上を有する個人株主、個人事業主本人などが対象となります。
5.誠実性
請負契約の締結や履行において、不正または不誠実な行為をするおそれがないこと、という要件です。
- 具体的には、契約内容を故意に履行しなかったり、請負代金をごまかしたり、他社を欺いたりするような行為がないことが求められます。
- 過去に建設業法違反などがあった場合、誠実性が認められないことがあります。
社会保険について
建設業許可の取得には、社会保険(健康保険、厚生年金保険)への加入が必須です。
- 法人であれば、従業員の有無にかかわらず、社長さん一人でも加入義務があります。
- 個人事業主の場合も、従業員を5人以上雇用していれば加入義務があります。
- 雇用保険も、従業員を雇用していれば加入義務があります。
ここがポイント:- 未加入の場合は、許可申請前に加入手続きを済ませておく必要があります。これは、建設業界全体の健全化を目指す国の動きとして、非常に重視されています。
その他、許可取得に向けた注意点
- 申請書類の準備: 必要書類は非常に多く、複雑です。ご自身で準備される場合は、時間と労力がかかります。
- 実務経験の証明: 工事請負契約書、注文書、請求書、入金確認ができる通帳のコピーなど、具体的な証拠書類を漏れなく揃えることが重要です。
- 営業所の確認: 営業所がきちんと機能しているか(独立したスペースがあるか、看板があるかなど)も確認されます。バーチャルオフィスなどは認められません。
- 経営業務の管理責任者等と営業所技術者の兼任: 要件を満たせば、同一人物が両方を兼ねることも可能です。ただし、その人が実態としてそれぞれの業務を遂行できる状況にある必要があります。
- 役員変更登記など: 許可申請前に役員や商号変更などが必要な場合は、事前に済ませておく必要があります。
3.「解体工事登録」について
解体工事を請け負う場合、建設業許可(解体工事業)とは別に、「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)」 に基づく「解体工事業者の登録」が必要になる場合があります。
これは、建設リサイクル法が、特定の建設資材の分別解体等及び再資源化等を促進することにより、廃棄物の減量化と資源の有効利用を目的としているためです。
建設業許可の「土木一式工事業」「建築一式工事業」「解体工事業」のいずれかの許可がある場合は解体工事業者登録は不要です。
これは、建設業許可の方がより厳しい要件をクリアしているため、建設リサイクル法の求める基準も満たしているとみなされるためです。
なぜ解体工事登録が必要なのか?
- 建設リサイクル法の遵守: 建設リサイクル法で定められた「対象建設工事」(特定建設資材を使用している一定規模以上の工事)を適正に分別解体し、資材を再資源化することを義務付けるためです。
- 不法投棄の防止: 建設副産物の不法投棄を防ぎ、適正な処理を確保するためです。
- 環境負荷の低減: 資源の枯渇や最終処分場のひっ迫といった環境問題に対応するため、解体工事におけるリサイクル率向上を目指しています。
登録の主な要件
解体工事業者登録は、解体工事を行う都道府県ごとに登録が必要です。
解体工事業者登録の要件は、建設業許可と比べて、経営や財産に関する要件はなく、「技術管理者」の設置と「欠格要件に該当しないこと」がポイントです。
- 技術管理者の設置
解体工事の施工に関する技術上の管理をつかさどる「技術管理者」を営業所に選任する必要があります。この技術管理者は、以下のいずれかの基準を満たす者でなければなりません。- 解体工事に関する8年以上の実務経験
- 特定の学科(土木工学、建築学など)を修了し、所定の実務経験(大学卒で2年以上、高校卒で4年以上など)
- 特定の資格(1級・2級建設機械施工技士、1級・2級土木施工管理技士、1級・2級建築施工管理技士、技術士、解体工事施工技士など)
- 国土交通大臣が登録する講習(解体工事施工技術講習など)の修了と所定の実務経験
- 欠格要件に該当しないこと
- 不正行為を行った、登録を取り消された経緯がある、暴力団関係者であるなどの場合は登録できません。
重要なのは、建設業許可は「工事を請け負う金額」に関わるのに対し、解体工事業登録は「建設リサイクル法の対象となる工事かどうか」に関わる、という点です。
ほとんどの解体工事は建設リサイクル法の対象となるため、解体工事業を営むのであれば、どちらかの手続きは必要不可欠です。
解体工事業の許可取得は、決して簡単な道のりではありません。
許可取得はゴールではなく、新たなスタートラインです。
この情報が、あなたの事業の発展に少しでも貢献できれば幸いです。

