経営事項審査を受ける前に知っておくべき3つのポイント!

「公共工事を受注していきたい!」とお考えなら、経営事項審査(通称:けいしん)を受ける必要があります。
公共工事には、工事費用の取りっぱぐれや、値引き交渉がありません。
公共工事のメリットを活かして、会社を成長させるのは良い考えです。
経営事項審査を受けたい企業様に対して、わかりやすく解説してみます。
閲覧していただいた皆様のご参考になれば嬉しいです!
1.「経営事項審査」の役割は?
経営事項審査とは、公共工事を発注者から直接請負うのに、必ず受けなければならない審査です。
前提として、建設業の許可は持っていなければなりません。
下請けとして公共工事に参加するだけなら、「経営事項審査」を受ける必要はありません。
公共工事とは、下記の発注者が発注する建設工事です。
- 国
- 地方公共団体
- 法人税別表第一に掲げる公共法人(地方公共団体除く)
- 上記に準ずるものとして国土交通省令で定める法人
経営事項審査の申請書には、3つの申請項目があります。
- 経営規模等評価結果通知書の発行申請
- 経営規模等評価再審査申立書
- 総合評定値請求書
以下の4つの指標をもとに、申請業者を客観的に数値化したものが「経営規模等評価結果通知書の発行申請」です。
4つの指標は、アルファベットで表されます。
- 経営規模の認定(X)
- 技術力の評価(Z)
- 社会性等の確認(W)
- 経営状況の分析(Y)
客観的に数値化した値で、「総合得点」を得るのが「総合評定値請求書」です。
公共工事では、「総合評定値」を得るのを条件としているため、「経営規模等評価結果通知書の発行申請」と「総合評定値請求書」は同時に申請することになります。
「経営規模等評価再審査申立書」は、建設業法の改正等で評価結果の点数が変更になる可能性がある場合に、改正後の基準で再評価してもらう際に使用します。
「経営事項審査」は、「客観的事項(客観点)」を求める審査です。
この審査は、許可行政庁で審査を行います。
公共工事の発注者は、競争入札に参加しようとする建設業者について資格審査を行います。
資格審査は「客観的事項(客観点)」と「発注者別評価(発注者点)」、それぞれの点数を合計し総合点数で評価します。
建設業者は経営事項審査で求めた客観点で、公共工事の入札に参加希望の申し込みをすることになります。

2.総合評定値(P点)を求める流れは?
経営事項審査では、4つの指標をもとに数値化されます。
- 経営規模の認定(X)
- 技術力の評価(Z)
- 社会性等の確認(W)
- 経営状況の分析(Y)
技術力の評価(Z)に関しては、 以下のページでまとめています。
差がつく経審の評点UPは?「技術力(Z)編」
経営事項審査の指標のひとつに、「技術力(Z)」があります。 経営事項審査の評価UPをしたい企業様によって、この指標は無視できません。全体の評価点数にたいして、2…
社会性等の確認 (W)に関しては、以下のページでまとめています。
差がつく経審の評点UPは?「社会性等(W)編」
経営事項審査の指標のひとつに、「社会性等(W)」があります。「社会性等(W)」は、社会的貢献度などを評価します。 全体の評価点数にたいして、15%のウエイトがあ…
経営状況の分析(Y)に関しては、以下のページでまとめています。
差がつく経審の評点UPは?「経営状況(Y)編」
経営事項審査の指標のひとつに、「経営状況(Y)」があります。 主に建設業の財務諸表から、「経営状況(Y)」の評点を算出します。全体の評価点数にたいして、20%も…
経営規模の認定(X)のみ、以下の2つに分かれます。
- 完成工事高(X1)
- 経営規模(X2)
完成工事高(X1)については、以下のページでまとめています。
差がつく経審の評点UPは?「完成工事高(X1)編」
経 経営事項審査の指標のひとつに、「完成工事高(X1)」があります。 経営事項審査の評価UPをしたい企業様によって、この指標は無視できません。全体の評価点数にた…
経営規模(X2)については、以下のページでまとめています。
差がつく経審の評点UPは?「経営規模(X2)編」
経営事項審査の指標のひとつに、「経営規模(X2)」があります。 会社の経営状況との関連性が強く、評価UPの結果を出すのが難しい指標です。ただ知っているのと、知ら…
そして、つぎの数式により総合評定値が算出されます。
総合評定値(P)= 0.25 x(X1) + 0.15 x (X2) + 0.20 x (Y) + 0.25 x (Z) + 0.15 x (W)
※小数点第1位を四捨五入
総合評定値(P)は、「P点」と呼ばれます。
この「P点」を求めるのに、「経営状況の分析(Y)」もあらかじめ算出しなければなりません。
「経営状況の分析(Y)」 は、事業年度の決算内容を分析して算出されます。
そのため事業年度の「決算変更届」が、提出されている必要がります。
建設業許可を取得している事業者は、「決算変更届」を決算期から4か月以内に許可行政庁に提出しなければなりません。
経営事項審査は、許可行政庁が審査担当を行います。
ただし「経営状況の分析(Y)」については、国土交通省に登録された「経営状況分析機関」で行うことになっています。
令和3年11月時点では、以下の10の経営状況分析機関があります。
- (一財)建設業情報管理センター
- (株)マネージメント・データ・リサーチ
- ワイズ公共データシステム(株)
- (株)九州経営情報分析センター
- (株)北海道経営情報センター
- (株)ネットコア
- (株)経営状況分析センター
- 経営状況分析センター西日本(株)
- (株)NKB
- (株)建設業経営情報分析センター
それぞれの分析機関により、手数料は分析時間などのサービス内容が異なります。
経営事項審査を受ける場合は、登録機関から自由に選択して利用できます。
決算から経営事項審査までの手続きの流れは、以下のとおりになります。

3.経営事項審査の有効期間は?
入札参加資格の登録は、一定期間ごとに更新する必要があります。
そのためには毎年、経営事項審査を受審しておく必要があります。
経営事項審査の結果が有効期間中に、次の決算期の経営事項審査の審査結果を得る必要があります。
経営事項審査は、決算期を基準として審査が行われます。
経営事項審査の結果通知書の有効期限は、基準となる決算期から1年7か月です。
1年ではなく、1年7か月である理由は、申請の準備期間や審査期間など時間を要するためです。

公共工事を毎年継続して入札に参加できる状況を維持するためには、常に入札に参加できる状況を維持しておく必要があります。

そして国土交通大臣では、審査手数料貼付書に収入印紙を貼付けして納付します。
都道府県知事では、現金で納付する場合や証紙によって納付する場合と、行政庁によって異なります。
審査手数料は、 審査対象業種数 によって決まります。
経営規模等評価申請の手数料=11,000円+(2,500×(審査対象業種数-1))
まとめ
経営事項審査は、建設業者さんが公共工事を元請業者として直接各自治体から受注したい場合に受審する必要があります。
経営事項審査は、建設業許可を取得している建設業者さんだけが受審することが出来ます。
公共工事を受注すると利益率が上がり、会社の経営が安定します。
工事費用の取りっぱぐれや、値引き交渉が無いのが魅力です。
公共工事のメリットを活かして、会社を成長させるのは良い考えでしょう。

まとめてみると。
- 公共工事を請負うには、経営事項審査を受ける必要がある。
- 総合評定値(P点)を求めるには、4つの指標をもとに数値化される。
- 経営事項審査は、決算期を基準として審査が行われる。
- 経営事項審査の有効期間は、基準となる決算期から1年7か月になる。
経営事項審査は、複雑なルールや仕組みだけではなく、準備する書類も多く厄介な手続です。
経営事項審査で良い点数を取って、入札の格付けで上位のランクを狙うのであれば、決算を迎える前に対策を考える必要があります。
経営事項審査は、奥が深い審査です。