経営事項審査の仕組み
公共工事を国や地方公共団体等から直接請負う建設業者が、必ず受けなければならない審査が経営事項審査です。
経営事項審査は、建設業法により許可行政庁が審査を実施することとされており、最終的には許可業種ごとに点数が付与されます。
この記事では「経営事項審査」について知りたい、建設業者様のために説明しています。
1.経営事項審査の審査項目
経営事項審査は、公共工事を直接請負うために、建設業者が受けなければならない審査です。
公共工事とは、国や地方公共団体などの公的機関が発注する建設工事のことです。
道路、橋、ダム、学校、病院、庁舎など、社会インフラの整備や維持管理を目的として行われます。
これらの工事は、税金を主な財源として行われ、国民全体の利益のために実施されるという点が、民間工事とは大きく異なります。
ただし経営事項審査を受けても、それだけで公共工事が受注できるわけではありません。
公共工事は、おもに「競争入札」により発注者が決められます。
その競争入札に参加するためには、建設業者は「入札参加資格」を持っていなければなりません。
「入札参加資格」は、発注者ごとに申請が必要です。
発注者は、経営事項審査で求めた点数「客観的事項の審査」と、地域の実情や工事の内容などを反映した審査「主観的事項の審査」で点数化し、順位付け、格付けが行われます。

経営事項審査は、工事実績、技術者の数や所有資格及び常勤性の確認など、様々な要因で審査されます。
5つの審査項目から総合評定値(P点)を出すことで成り立っています。
令和5年8月14日以降を審査基準日とする経営事項審査における最高点と最低点は、下表のとおりです。
審査項目 | 最高点 | 最低点 | P点換算 (最高点) | P点換算 (最低点) | ウェイト |
---|---|---|---|---|---|
X1:経営規模(完成工事高) | 2,309点 | 397点 | 577.25点 | 99.25点 | 0.25 |
X2:経営規模(自己資本額・利益額) | 2,280点 | 454点 | 342.00点 | 68.10点 | 0.15 |
Y:経営状況 | 1,595点 | 0点 | 319.00点 | 0.00点 | 0.20 |
Z:技術力 | 2,441点 | 456点 | 610.25点 | 114.00点 | 0.25 |
W:その他審査項目(社会性等) | 2,073点 | ▲1,837点 | 310.95点 | ▲275.55点 | 0.15 |
W点の最高点と最低点が、令和5年8月14日以前の基準日から変更されています。
- 最高点:1,966点 → 2,073点
- 最低点:▲1,995点 → ▲1,837点
これに伴い、W点のP点換算の最高点と最低点も変更されています。
- 最高点:294.90点 → 310.95点
- 最低点:▲299.25点 → ▲275.55点
各項目の最高点と最低点がそれぞれ異なるため、P点の最高点と最低点は単純な合計にはなりません。
以下のとおり、ウェイトを考慮した計算式になります。
(X1)×0.25+(X2)×0.15+(Y)×0.20+(Z)×0.25+(W)×0.15= P点
※小数点以下、四捨五入
P点の最高点と最低点も、令和5年8月14日以前の基準日から変更されることになります。
- 最高点:2,143点 → 2,159点
- 最低点:▲18点 → 6点
各5つの審査項目は、次のページにてまとめています。

P点を挙げるための特別なテクニックや裏技をなくすため、P点を算出する計算式は複雑なものとなっているんだね。
2.経営事項審査および入札までの流れ
公共工事の入札に参加するには、経営事項審査を受けなければなりません。
経営事項審査を受けるには、各種変更届や決算変更届、経営状況分析が終わってからでないと、経審を受けることはできません。
初めて経審を受ける場合、入札に参加できるようになるまでに3~6カ月程度の時間がかかることを想定します。
この工事の入札に参加したいと思ってから準備するのでは、遅すぎることもあります。
公共工事の入札に参加するのであれば、早めに手続きを済ませてから、入札の案件が出てきたらすぐにでも入札に参加できる体制をとっておくことが重要です。

入札参加資格の登録は、一定期間ごとに更新する必要があります。
そのためには毎年、経営事項審査を受審しておく必要があります。
経営事項審査の結果が有効期間中に、次の決算期の経営事項審査の審査結果を得る必要があります。
経営事項審査は、決算期を基準として審査が行われます。
経営事項審査の結果通知書の有効期限は、基準となる決算期から1年7か月です。
1年ではなく、1年7か月である理由は、申請の準備期間や審査期間など時間を要するためです。
公共工事を毎年継続して入札に参加できる状況を維持するためには、常に入札に参加できる状況を維持しておく必要があります。


申請時に既に新しい決算日(審査基準日)を迎えている場合、従前の決算日(審査基準日)では審査を受けることはできないよ。
3.経営事項審査の結果通知書の見方
経営事項審査の申請手続きをすると、許可行政庁が経営規模等評価を行い、総合評定値(P点)を算出して結果通知書を申請業者に通知します。
正式名称は「経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書」といいます。
この結果通知書は、インターネットで公表されています。
経営事項審査の通知書から、各項目の点数を確認することができます。
この通知書には、経審で評価された以下の項目に関する数値が記載されています。
- 経営規模 (X1, X2): 企業の完成工事高や自己資本額など、経営規模を示す指標
- 経営状況 (Y): 企業の安全性や収益性など、経営状況を分析した指標
- 技術力 (Z): 企業の技術職員数や資格、工事実績など、技術力を示す指標
- その他審査項目 (W): 企業の社会性やコンプライアンス、地域貢献などを示す指標
そして、これらの評価項目に基づいて算出された総合評定値(P点)が記載されます。
このP点が、公共工事の入札に参加する際の企業のランク分けや評価の基準となります。

経営事項審査の結果通知書の主な役割は、以下のとおりです。
- 入札参加資格審査の申請: 国や地方公共団体などの公共機関に入札参加資格を申請する際に、必須書類の一つとなります。
- 入札時の評価: 各公共機関は、入札に参加した企業のP点を評価基準の一つとして、落札者を決定します。
- 企業の経営状況の把握: 建設業者自身が自社の経営状況、技術力、社会的な取り組みなどを客観的な数値で把握し、経営改善に役立てることができます。
- 取引先の判断材料: 金融機関や取引先が、建設業者の経営状況を判断する際の参考資料となることがあります。

経営事項審査の結果通知書は、公共工事の入札に参加する建設業者にとって、「会社の成績証明書」とも言える非常に重要な書類なんだね。
ちょっと古い情報の動画ですが、参考としてYoutube動画をアップしています。