完成工事高(X1点)で点数アップしたい

経営事項審査とは、公共工事の受注をめざす建設業者に義務づけられている審査です。
その中の評価項目の一つとして、「業種別年間平均完成工事高」を確認する(X1点)があります。

この記事では『経営事項審査』を受けたい建設業者様のために、「業種別年間平均完成工事高」(X1点)で点数アップをしたい方に向けて説明しています。

1.業種別年間平均完成工事高(X1)の算出方法

経営事項審査は、以下の計算式で総合評点値(P点)を算出します。

総合評定値(P点)=(X1点)×0.25+(X2点)×0.15+(Y点)×0.20+(Z点)×0.25+(W点)×0.15

経営事項審査の指標をアルファベットで表します。
業種別年間平均完成工事高(X1点)は、総合評定値(P点)のウエイトで25%あることになります。
X1点の評点幅は、最高2309点~最低397点になります。

業種別年間平均完成工事高とは、審査基準日の直前2年または3年の平均完成工事高のことです。
2年または3年平均のうち、有利なものを選択することができます。
業種毎に、2年平均と3年平均を混合することはできません。

完成工事高2年平均の記載例

完成工事高2年平均の記載例
福島県の経営事項審査の手引きより引用

完成工事高3年平均の記載例

完成工事高3年平均の記載例
福島県の経営事項審査の手引きより引用

算出方法は、業種別年間平均完成工事高の金額を、点数表があるので当てはめて点数にします。

前回まで2年平均や3年平均だったからとかで選択すると、評点で損をすることになるからね。

完成工事高の虚偽申請防止

業種別年間平均完成工事高(X1点)では、完成工事高の水増し申請の虚偽申請防止が課題です。
そのため大阪府では、以下の書類の提示を求めることになっています。

審査対象事業年度及び完成工事高計算基準の区分に応じた年度分に係る、次に掲げる全ての書類の写しが必要となります。

  1. 法人の場合
    • 法人税確定申告書別表一(令和7年以降の申告分は、税務署の受付印不要)
      電子申告による場合は、税務署からの受信通知も必要。
    • 決算報告書のうち損益計算書
  2. 個人事業主の場合
    • 所得税確定申告書第一表(令和7年以降の申告分は、税務署の受付印不要)
      電子申告による場合は、税務署からの受信通知も必要。
    • 所得税確定申告書第二表
    • 収支内訳書又は青色申告決算書
  3. 消費税及び地方消費税確定申告書控及び添付書類(令和7年以降の申告分は、税務署の受付印不要)
    電子申告による場合は、税務署からの受信通知も必要。
  4. 消費税及び地方消費税納税証明書(その1・納税額等証明書用)
    発行日から3か月以内
    ※電子納税証明書は不可

消費税及び地方消費税確定申告書及び添付書類並びに納税証明書については、免税期間については不要です。

以下の場合には、そのまま経営事項審査を受付されません。

  1. 消費税確定申告書の課税標準額が、完成工事高より小さい。
  2. 消費税確定申告書(⑨欄)+(⑳欄)が、納税証明書申告額と不一致

受付されない場合は、理由書(代表者印の押印が必要)及び修正申告書写し等の資料を提出する必要があります。

完成工事高が課税標準額を上回っている場合、完成工事高を水増しする粉飾決算の疑いを持たれる可能性があるということです。

完成工事高が課税標準額を上回っている場合の例

  • 完成工事高を税込みで処理していた
  • 不動産売買等の収入を完成工事高に含んでいた
  • 修正後の消費税確定申告書を提示していなかった

完成工事高が課税標準額を下回っている場合の例

  • 兼業の売上がある
  • 雑収入がある

売上高や完成工事高の誤りであれば、決算変更届や経営状況分析のやり直しになる場合があります。
課税額の誤りなら、修正申告の必要の場合があります。

消費税の滞納があっても、経営事項審査(経審)を受けること自体は可能です。
しかし、滞納状況によっては、公共工事の入札参加に影響が出る可能性があります。

経営事項審査の納納税証明書(その1)は、滞納の有無ではなく、納付すべき消費税額の確認が目的です。

2.完成工事高(X1)の点数アップ方法

完成工事高(X1)は、受注量をUPさせることで評点アップします。

ただし利益が少ない工事や赤字工事を受注し、財務内容に悪影響を及ぼしマイナスと働くこともあります。
完成工事高よりも利益に重点を置いた、制度設計が必要となります。

完成工事高(X1)を評点アップさせるのに、簡単にできるのは2つあります。

① 直前2年か3年の平均完成工事高を選択する

完成工事高は、審査基準日の直前2年平均、または3年平均を選択することができます。
ただし全ての受審業種で、2年平均または3年平均を統一しなければなりません。

「激変緩和措置」を採用し、急激な受注減等の変化があった場合に、評価の現象を緩やかにするための措置です。

例えば受審する内装仕上工事が、過去3年間の完成工事高が以下だとします。

  • 前々期→5,000万円
  • 前期→3,000万円
  • 今期→4,000万円

2年平均だと、7,000万円(3,000万円+4,000万円)÷2年=3,500万円です。

3年平均だと、12,000万円(5,000万円+3,000万円+4,000万円)÷3年=4,000万円です。

3年平均を選択する方が、完成工事高が高くなります。

② 完成工事高の業種間振替

許可を持っている業種を関連する業種に、完成工事高を振り替えることができます。
ただし無制限に積み上げができるわけではなく、関連性がある業種間に限って認められます。

よくあるのは、一式工事(土木・建築)に専門工事(土木系・建築系)を積み上げるパターンです。
積み上げた業種は、受審することはできません。

また振替の際に、売上高の一部のみを振り返ることはできません。
例えば、とび・土工工事の5000万円を土木一式工事へ、残りの1000万円をとび・土工工事に残すということはできません。

例えば以下の許可を持っている業者が、各業種の完成工事高が以下だとします。

  • 建築一式工事→8,000万円
  • 塗装工事→2,000万円
  • 防水工事→1,000万円

そのまま、建築一式工事、塗装工事、防水工事を受審してもよいのですが、以下のように建築一式工事に完成工事高を振り替えることができます。
その場合は、塗装工事と防水工事は受審することができません。

建築一式工事(8,000万円)+塗装工事(2,000万円)+防水工事(1,000万円)⇒建築一式工事(11,000万円)

振り替えのルールは、各自治体によってあるので、手引きを熟読しましょうね。