【知らないと損】経審Z点(技術力)の隠れた加点項目を行政書士が徹底解説
公共工事の入札参加や、会社の信用力を測る上で非常に大切な経営事項審査(経審)。
その中でも技術力評点Zは、皆さんの会社がどれだけの「技術力」を持っているかを数値で示す、いわば会社の「技術の通信簿」のようなものです。
このZ点をしっかり上げることで、より多くのチャンスを掴むことができます。
しかし、「うちは技術者も少ないし、大きな工事もあまりやってないから」と諦めてしまうのは、ちょっと待ってください!
実は、Z点には見落としがちな「隠れた加点項目」が存在します。
これらをしっかり活用すれば、思わぬ点数アップに繋がる可能性があるんですよ。
1.まずはZ点の基本をおさらいしましょう!
技術力評点Zは、次の2つの要素から算出されます。
- 技術職員数点数Z1: 会社に所属する技術者の資格と人数で決まります。
- 元請完成工事高点数Z2: 過去の元請工事の実績金額で決まります。
計算式は以下の通りです。
技術力評点Z=((技術職員数点数Z1×4)+元請完成工事高点数Z2)/5
※小数点以下は切り捨てになります。
つまり、Z点を上げるためには、技術者の「質」と「量」が非常に重要になってくるんです。
しかし、今日お伝えしたいのは、このZ1とZ2、それぞれに潜む「隠れた加点項目」についてです!
2.【隠れた加点項目その1】技術職員数点数Z1に潜む加点チャンス
「うちにはベテランはいるけど、資格はそんなに多くないんだよな」そう思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。
でも、ご安心ください。
Z1点の評価は、単に「1級資格者が何人」というだけではありません。
見落としがちなポイント:全ての技術者の「資格」と「役割」を再確認!
Z1点を算出するための技術職員数値は、以下の区分に基づいて計算されます。
| 点数 | 技術職員区分 | 例 |
|---|---|---|
| 6点 | 1級資格者かつ監理技術者資格者証の交付を受け、かつ管理技術者講習の修了者 | 1級土木施工管理技士、1級管工事施工管理技士、1級建築士等 建設・総合技術管理技術士(技術士法)等 |
| 5点 | 1級資格者 | 1級土木施工管理技士、1級管工事施工管理技士、1級建築士等 建設・総合技術管理技術士(技術士法)等 |
| 4点 | 監理技術者補佐(1級技士補) | 主任技術者資格 + 1級土木施工管理技士補、1級管工事施工管理技士補等 |
| 3点 | 基幹技能者等(登録基幹技能者講習の修了者)、CCUSレベル4 | 登録電気工事基幹技能者等 |
| 2点 | 2級資格者、CCUSレベル3 | 2級土木施工管理技士、2級管工事施工管理技士、2級建築士等 第1種電気工事士、1級左官技能士(職業能力開発促進法)等 ※登録基礎ぐい工事試験の合格者等 |
| 1点 | その他の技術者(10年以上の実務経験者など) | 第1種電気工事士+実務経験3年以上等 電気主任技術者+実務経験5年以上等 給水装置工事主任技術者+実務経験1年以上等 実務経験10年以上の技術職員 |
技術職員数値 = (6点保持者数 × 6) + (5点保持者数 × 5) + (4点保持者数 × 4) + (3点保持者数 × 3) + (2点保持者数 × 2) + (1点保持者数 × 1)
上記の計算式によって算出された技術職員数値を、点数表に割り当てて「技術職員数の点数」を割り出します
【Z1点の隠れた加点項目を逃さないためのチェックポイント】
- 「監理技術者講習」の修了有無を再確認!: 1級資格を持っていても、監理技術者講習を修了しているかどうかで点数が大きく変わります。もし、1級資格者がいてまだ講習を受けていないなら、今すぐ受講を検討しましょう。これが一番手軽で効果的な加点策になることがあります。
- 「基幹技能者」の存在を見落としていませんか?: 会社の中に、長年の経験と確かな技術を持ち、現場のリーダーとして活躍している方はいませんか? その方が「登録基幹技能者講習」を修了していれば、Z1点に加算できます。意外と知られていない加点項目ですので、ぜひ確認してみてください。
- 「その他技術者」も諦めないで!: 施工管理系の資格はなくても、学歴と実務経験で技術者として認められる場合があります。指定学科卒業後、3年または5年の実務経験を積んだ主任技術者になれるものも加点対象となりました。
- 「建設キャリアアップシステム(CCUS)」は活用していますか?: CCUSに登録し、技能者情報や就業履歴を蓄積することで、Z点評価の対象となる場合があります。特に若手技術者の育成や、技能者の見える化にも繋がりますので、積極的に導入・活用を進めましょう。
- 「技士補」の加点も見逃さないで!: 令和3年度の経審改正で、施工管理技士の「1級技士補」も加点対象となりました。せっかくの資格を活かせるよう、忘れずに計上しましょう。
【重要】技術職員に関する加点ルールの詳細と注意点
せっかくの加点チャンスを逃さないためにも、技術職員の加点に関する以下のルールはしっかり押さえておきましょう。
- 1人の技術職員で加点できる業種は、原則2業種まで
例えば、ある技術者が「土木一式工事」と「舗装工事」の資格を両方持っている場合、それぞれの業種で加点することは可能です。しかし、3つ以上の業種では加点できません。最も点数が高くなる組み合わせで計上することが重要です。
- 1人の技術職員で同じ業種を、2つ加点することはできない
これは当たり前のように感じるかもしれませんが、例えば「土木一式工事」の資格を2つ持っていたとしても、同じ業種で重複して加点することはできません。その技術者が持つ最も評価の高い資格が、その業種で一度だけ計上されることになります。
- 受審する業種しか、加点対象にすることができない
これは意外と見落としがちです。経審で評価対象となるのは、皆さんが実際に経営事項審査を受けようとしている業種に限られます。例えば、電気工事の資格を持つ技術者がいても、電気工事を受審しない場合は、その資格はZ点の加点対象にはなりませんのでご注意ください。
3.【隠れた加点項目その2】元請完成工事高点数Z2に潜む加点チャンス
「うちの会社は〇〇工事がメインだから、他の業種の実績は少ないよな」そう思っていませんか?
Z2点には、まさにそんな会社様のための「隠れた加点項目」があるんです!
見落としがちなポイント:Z2点はX1点(完成工事高)と連動!2年平均か3年平均かを選択
Z2点(元請完成工事高)は、経審全体の点数を算出する上で非常に重要なX1点(完成工事高)と連動しています。
そして、この完成工事高については、過去2年間の平均を使うか、過去3年間の平均を使うかを、会社が選択できるという非常に重要なポイントがあります。
この選択は、会社の工事実績の推移によって、有利不利が分かれます。
まずは、直近の3会計年度分の完成工事高を正確に把握し、2年平均で計算した場合と3年平均で計算した場合、どちらの工事高が高くなるかを試算してみましょう。
元請完成工事高も同様に比較: 元請完成工事高(Z2点の元になる部分)についても、2年平均と3年平均でどちらが有利になるかを確認しましょう。
X1点とZ2点は連動しているため、どちらの平均を選択するかは慎重な判断が必要です。
見落としがちなポイント:Z2点はX1点(完成工事高)と連動!業種間振替の活用
こちらもZ2点(元請完成工事高)は、経審全体の点数を算出する上で非常に重要なX1点(完成工事高)と連動しています。
ある業種で計上した完成工事高を、別の関連する業種に振り替えて計上することを指します。
連動して、元請完成工事高も別の関連する業種に振り替えて計上することになります。
ただし振替をした業種は受審対象にならないため、Z1点についても加点対象にすることができないので注意してください。
Z点には、このように見落とされがちな加点項目や、複雑なルール、そして有利な選択肢が隠されています。
これらの項目を適切に評価し、最大限に活用するためには、経審に関する専門知識と、個別の工事内容を詳しくヒアリングし、正確に判断する経験が必要です。
この情報が、あなたの事業の発展に少しでも貢献できれば幸いです。

