技術力(Z点)で点数アップしたい
経営事項審査とは、公共工事の受注をめざす建設業者に義務づけられている審査です。
その中の評価項目の一つとして、「技術力」を確認する(Z点)があります。
この記事では『経営事項審査』を受けたい建設業者様のために、「技術力」(Z点)で点数アップをしたい方に向けて説明しています。
1.技術力(Z)の算出方法
経営事項審査は、以下の計算式で総合評点値(P点)を算出します。
総合評定値(P点)=(X1点)×0.25+(X2点)×0.15+(Y点)×0.20+(Z点)×0.25+(W点)×0.15
経営事項審査の指標をアルファベットで表します。
技術力(Z点)は、総合評定値(P点)のウエイトで25%あることになります。
20%は「業種別技術職員数」に係るもので、残りの5パーセントが「種類別年間平均元請完成工事高」のウエイトになります。
Z点の評点幅は、最高2,441点~最低456点になります。
算出方法は、業種別技術職員数と種類別年間平均元請完成工事高から算出します。
技術力(Z) = (業種別技術職員数 x 0.8) + (種類別年間平均元請完成工事高 x 0.2)
※小数点以下は切り捨て
技術職員数と工事種類別年間平均元請完成工事高の金額を、それぞれの点数表があるので当てはめて点数にします。
そのうえで、上記の算出式に当てはめます。
種類別年間平均元請完成工事高の求め方
完成工事高は、X1点で元請・下請関係なく評点として使用されます。
Z点では、元請の完成工事高に絞って、評価の対象としています。
Z点の元請完成工事高は、2年平均か3年平均か選択することになります。
ただし完成工事高評点(X1点)と連動して、選択することになります。
完成工事高の振替ルールも、完成工事高評点(X1点)と連動することになります。

公共工事を受注すれば当然、元請として工事にあたることになるよね。
だから元請業者に求めれるマネジメント力も、加点対象としているんだね。
業種別技術職員数の求め方
技術職員数については、以下の区分により技術職員数値を算出します。
点数 | 技術職員区分 | 例 |
---|---|---|
6点 | 1級資格者かつ監理技術者資格者証の交付を受け、かつ管理技術者講習の修了者 | 1級土木施工管理技士、1級管工事施工管理技士、1級建築士等 建設・総合技術管理技術士(技術士法)等 |
5点 | 1級資格者 | 1級土木施工管理技士、1級管工事施工管理技士、1級建築士等 建設・総合技術管理技術士(技術士法)等 |
4点 | 監理技術者補佐(1級技士補) | 主任技術者資格 + 1級土木施工管理技士補、1級管工事施工管理技士補等 |
3点 | 基幹技能者等(登録基幹技能者講習の修了者)、CCUSレベル4 | 登録電気工事基幹技能者等 |
2点 | 2級資格者、CCUSレベル3 | 2級土木施工管理技士、2級管工事施工管理技士、2級建築士等 第1種電気工事士、1級左官技能士(職業能力開発促進法)等 ※登録基礎ぐい工事試験の合格者等 |
1点 | その他の技術者(10年以上の実務経験者など) | 第1種電気工事士+実務経験3年以上等 電気主任技術者+実務経験5年以上等 給水装置工事主任技術者+実務経験1年以上等 実務経験10年以上の技術職員 |
技術職員数値 = (6点保持者数 × 6) + (5点保持者数 × 5) + (4点保持者数 × 4) + (3点保持者数 × 3) + (2点保持者数 × 2) + (1点保持者数 × 1)
上記の計算式によって算出された技術職員数値を、点数表に割り当てて「技術職員数の点数」を割り出します。
技術職員に関しても、以下の一定のルールがあります。
- 1人の技術職員に加点ができる業種は、2業種まで。
- 1人の技術職員に同じ業種を、2つ加点することはできない。
- 受審する業種しか、加点対象にすることができない。
- 出向者も出向元との雇用関係が明らかであれば、加点対象とすることができる。
- 技術職員は、審査基準日以前6カ月+1日以上の雇用関係を満たす必要がある。
資格者証や実務経験等の証明確認(大阪府の場合)
技術職員名簿の資格証での確認には、以下があります。
「前期に申請していない場合」や「前期の申請内容から変更があった場合」に提出が必要となります。
- 基幹技能者にあっては、有効期間内の登録基幹技能者講習修了証
登録基幹技能者講習修了証の有効期間は、講習修了年月日の翌日から起算して5年間です。
登録基幹技能者講習を受講するためには、次の要件すべてを満たしている必要があります。
・当該基幹技能者の職種において、10年以上の実務経験
・実務経験のうち3年以上の職長経験
・実施機関において定めている資格等の保有 (1級技能士、施工管理技士等)
- 大臣認定の者にあっては、有効期間内の大臣認定書
外国で取得した学歴、資格、実務経験が、日本と同等であることを認定します。
過去に法改正で、国土交通大臣が認定を行うことがありました。
有効期間は、個別の有効認定により異なります。
- 営業所技術者等以外の者で指定学科卒の者にあっては、卒業証書又は卒業証明書
指定学科とは、建設業の種類ごとに定められた学科のことです。
これらの学科を卒業することで、一定の実務経験年数が短縮されるなどの優遇措置があります。
- 営業所技術者等で当該営業所技術者等の要件となる国家資格等以外の国家資格等を有する職員にあっては、当該資格等を証する書類
基準日以前に合格している(合格後、実務経験が必要な資格にあっては、基準日時点でその要件を満たしている)ことが必要です。
- 監理技術者講習受講者にあっては、有効期間内の監理技術者資格者証及び講習修了証
監理技術者資格者証を取得するには、1級の資格を有している必要があります。
資格者証の交付申請と、監理技術者講習、どちらの手続きが先でも構いません。
監理技術者資格者証の有効期限は、交付日から5年間です。
監理技術者講習の有効期間は、受講した日の属する年の翌年から起算して5年です。
- 国家資格者等で令和2年4月1日以降に新たな資格を取得した者もしくは新たに技術職員として追加した者にあっては、当該資格等を証する書類
国土交通省は令和2年4月1日から、建設業法に基づく許可申請の書類や手続きを簡素化しました。
そのため「国家資格者等・監理技術者一覧表」(様式第11号の2)について提出を不要とすることになりました。
代わりに資格者証等の提出が必要となります。
- 実務経験に該当する技術職員を記載した場合に、技術職員ごとに実務経験申立書
有資格区分コード「002」(10年間の実務経験)、「099」(実務経験要件の緩和)に該当する技術職員を記載した場合に、技術職員ごとに当該書類を作成します。
一度提出した技術職員実務経験申立書に記載した期間や、業種の変更は認められません。
「099」(実務経験要件の緩和)とは、令和5年7月1日に施行された建設業法施行規則の改正によるものです。
1級施工管理技士試験合格者:大学卒業者と同等の3年の実務経験
2級施工管理技士試験合格者:高校卒業者と同等の5年の実務経験
- 営業所技術者等として、実務経験の証明を受けている技術者については、建設業許可申請書または変更届に添付された実務経験証明書(規則様式9号)の写し
※実務経験が必要な資格を有する者や指定学科卒業者については、資格取得日や卒業日から審査基準日までの間に、所定の期間の実務経験が必要です。
※解体に関する免状は必ず添付が必要です。
※建設技能者は、建設キャリアアップシステムのカードのみならず能力評価結果通知書が必要です。
※監理技術者補佐として認められる業種は、主任技術者の資格を有する業種に限られます。
審査基準日以前6か月を超える恒常的雇用関係、及び常時雇用確認できる証明確認(大阪府の場合)
大阪府の手引きでは、以下の表のように技術職員の立場によって必要書類が異なります。
A | B | C | D | E | F | G | H | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
法人 | 代表者 | ー | △ | ー | △ | △ | 〇 | 〇 | ー |
役員 | ー | △ | ー | △ | △ | 〇 | 〇 | ー | |
従業員 | ー | △ | ー | △ | △ | 〇 | 〇 | ー | |
船員保険適用者 | ー | ー | △ | △ | △ | 〇 | 〇 | ー | |
個人 | 事業主 | 〇 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | 〇 |
専従者 | ー | ー | ー | ー | ー | 〇 | ー | 〇 | |
従業員 | ー | △ | ー | △ | △ | 〇 | ー | 〇 | |
船員保険適用者 | ー | ー | △ | △ | △ | 〇 | ー | 〇 |
- 事業主の直近の住民税課税証明書(発行日から3か月以内)
必要なのは、最新年度(直近年度)の分です。
ただし前年度分が取得できるのは、毎年6月1日~となっています。
他に就労所得がないことを確認し、常時勤務を確認されます。
- 健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書
※協会けんぽ以外の健康保険に加入している場合は、当該健康保険組合の標準報酬決定通知書
健康保険と厚生年金保険の保険料を計算するための基準となる「標準報酬月額」が決定されたことを通知する書類です。
年金事務所から事業主宛てに発行されます。
標準報酬月額は、3つのタイミングで決定されます。
- 被保険者縦覧照会回答票
船員保険の報酬月額は、変更時しか発行されないため、年金事務所の被保険者縦覧照会回答票が必要となります。
いつからいつまでどこに勤務していたかを確認し、常時勤務を確認されます。
- 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(本人交付分)
雇用保険に加入していることを労働者本人と事業主が把握するため、ハローワークにて発行されます。
「事業主通知用」ではなく、「被保険者通知用」を必要とします。
被保険者種類の1は一般労働者、4は高齢者継続被保険者以外は常時雇用と認められません。
資格取得日から、審査基準日までの期間が6ヶ月超でなければなりません。
- 住民税特別徴収税額通知書(特別徴収義務者用及び納税義務者用)
従業員の住民税額を勤務先の会社が、毎月の給与から天引き(特別徴収)するために、市区町村から会社に通知される書類です。
特別徴収は、給与所得者である会社員に適用される納付方法です。
前年1年間の収入をもとに、毎年5~6月頃に住民税の納付書と合わせて算出した住民税額を知らせる書類です。
- 所得税源泉徴収簿等
源泉徴収簿は、事業者が内部で使用する帳簿です。
源泉徴収簿を基に、源泉徴収票が作成されます。
源泉徴収簿の作成は法律で定められていないため、賃金台帳でも構いません。
審査基準日以前6か月超える給与金額が、きちんと支払われていることを確認されます。
- 法人税確定申告書のうち「役員給与等の内訳書」及び決算報告書のうち「一般管理費」及び「工事等原価報告書」
「役員給与等の内訳書」で、役員に支払った給与の内訳を確認できます。
「一般管理費」で、役員報酬と従業員の給与を確認できます。
「工事等原価報告書」で、工事に従事した作業員の賃金を確認できます。
- 所得税確定申告書のうち収支内訳書と第二表又は青色申告決算書
個人事業主が、収支内訳書は白色申告、青色申告決算書は青色申告で確定申告を行います。
従業員や専従者等の年給を確認できます。
損益計算書から、販売費及び一般管理費も確認できます。
その他、一定の条件のある技術職員は、以下の書類で対応します。
- 健康保険法、厚生年金保険法及び雇用保険法の対象外で住民税の特別徴収ができない者の場合、次の書類の組み合わせのどちらか
- 所得税源泉徴収簿等+直近の住民税課税証明書
※発行日から3か月以内 - 所得税源泉徴収簿等+70歳以上被用者標準報酬月額相当額決定のお知らせ又は標準報酬月額相当額改定のお知らせ
※後期高齢者医療制度の対象者のみ
- 所得税源泉徴収簿等+直近の住民税課税証明書
- 役員報酬額が一定の目安額(月額10万円)より低額の場合
- 直近の住民税課税証明書
※発行日から3か月以内
- 直近の住民税課税証明書
- 出向社員の場合
- 出向協定書、出向辞令等
- 高年齢者雇用安定法の継続雇用制度対象者(65歳以下の者に限る)
- 継続雇用制度の適用を受けている技術職員名簿(国交省通知様式第3 号)
- 常時10人以上の労働者を使用する企業の場合は、併せて継続雇用制度について定めた労働基準監督署の受付印のある就業規則
- 二以上勤務の場合
- 全事業所分の「二以上事業所勤務被保険者決定及び標準報酬決定通知書」
- 全事業所分の「法人税の確定申告書別表1」
- 全事業所分の「役員給与等の内訳書」
審査基準日による必要な「標準報酬決定通知書」
「健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書」は審査基準日により、必要な時点の通知書を求められます。
まず標準報酬決定通知書は、以下の3つのタイミングで発行されます。
- 健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書(定時決定)
- 4月から6月までの給与の平均額に基づいて標準報酬月額が決定されます。
定時決定(毎年9月)の際に発行されます。
定時決定後の標準報酬月額の適用期間は、その年の9月から翌年の8月まで適用されます。
- 4月から6月までの給与の平均額に基づいて標準報酬月額が決定されます。
- 健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬改定通知書(随時改定)
昇給や降給などにより給与額が大幅に変動した場合に、標準報酬月額が改定されます。
随時決定後の標準報酬月額の適用期間は、以下の期間適用されます。
改定月が1月から6月の場合:その年の8月まで
改定月が7月から12月の場合:翌年の8月まで
随時改定の適用期間を定時決定の時期と合わせることで、社会保険料の計算を円滑に行うようになっています。
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得確認および標準報酬決定通知書(取得時改定)
従業員が新しく入社した場合に発行されます。
入社時の給与額に基づいて、標準報酬月額が決定されます。
取得時改定後の標準報酬月額の適用期間は、以下の期間適用されます。
取得月が1月から5月の場合:その年の8月まで
取得月が6月から12月の場合:翌年の8月まで
標準報酬月額は、毎年9月に行われる定時決定や、給与額が大きく変動した場合の随時改定によって見直されます。
審査基準日によって、必要な標準報酬決定通知書の年度が異なります。
審査基準日が9月の場合は、2期分必要となります。

審査基準日による必要な「住民税特別徴収税額通知書」
「住民税特別徴収税額通知書」は審査基準日により、必要な時点の通知書を求められます。
大阪府の手引きでは、「住民税特別徴収税額通知書(特別徴収義務者用)の発行日又は住民税徴収開始月の早い方から、恒常的雇用関係及び常時雇用の確認ができるもの」と書かれています。
住民税の特別徴収が、前年の所得に基づいて計算された税額を、翌年の6月から1年間かけて毎月の給与から天引きする仕組みになっています。
よって住民税特別徴収税額通知書の適用期間は、毎年6月から翌年の5月になります。
審査基準日が6月~11月の場合は、2期分必要となります。


技術職員は6カ月+1日以上、会社に常勤している必要があります。
1日でも足りなかったら、技術職員として認められませんよ。
2.技術力(Z)の点数アップ方法
技術力(Z点)は、高い資格を持った技術職員を増やし、元請の完成工事高の増加をあげることで評点アップします。
技術力(Z)を評点アップするには、2つがポイントがあります。
- 技術職員に資格を取得させる
技術職員に資格手当の支給を整備し、より高い資格を持つ方を増やします。
一級技術者は講習を受講し、1点でも高い点数を取得します。
- 元請工事の受注を増やす
公共工事か民間工事の別は問わないため、地道に元請工事を請負うことで実績を積んでいく。
どの技術者が何の資格を持っていて、どの業種で加点対象になるか検討することは大事な戦略です。
資格を持っていなくても、10年以上の実務経験があったり、指定学科を卒業後、規定の実務経験がある方も技術職員の加点対象となります。

技術職員を新しく雇用するなら、34歳以下だとW点の若年技術職員に点数アップできる可能性があるよ。