【経営事項審査】W10(CPD、CCUS)の計算方法

令和3年4月の建設業法の改正により、以下の努力義務が規定されました。
建設業法 第25条の27第2項
建設工事に従事する者は、建設工事を適正に実施するために必要な知識及び技術又は技能の向上に努めなければならない。
この努力義務を経審で評価するものとして、「W10(知識および技術または技能の向上に関する取組の状況)」が加わりました。
目次
1.W10(知識および技術または技能の向上に関する取組の状況)の技術者と技能者とは
令和3年4月の建設業法の改正により、「W10(知識および技術または技能の向上に関する取組の状況)の技術者と技能者」が追加されました。
技術者とは?
計算式で定義されている技術者とは、次のように定義されています。
審査基準日における許可を受けた建設業に従事する職員のうち、監理技術者になる資格を有する者、主任技術者になる資格を有する者、1級技士補及び2級技士補で、審査基準日以前6か月を超える恒常的雇用関係及び常時雇用(法人の役員及び個人の事業主を含む)されている者
「技士補」とは、施工管理技士の学科試験において、「第一次検定」に合格するだけで与えられます。
「第二次検定」である実務検定に合格すれば、施工管理技士としての資格が正式に付与されます。
「第二次検定」に落ちても、「技士補」の資格が与えられることになります。
1級技士補、2級技士補の役割は、以下になります。
- 1級技士補:監理技術者の補佐として配置されることにより、監理技術者配置義務が緩和されます。
- 2級技士補:特にありません。
2級技士補は特に役割がありませんが、CPDで単位を取得することにより加点の対象となります。
経審の申請書で別紙2「技術職員名簿」に記載された方は、すべて技術者としてカウントされます。
経審を受けない業種の技術職員や、経審で加点対象となっていない2級技士補の方がいる場合は、様式第4号「CPD単位を取得した技術者名簿」に記載します。
技術者の申請書類と確認書類は、以下のとおりです。
- 資格証や合格証
- 審査基準日現在の常勤性、6カ月を超える恒常的雇用関係の資料
技能者とは?
計算式で定義されている技術者とは、次のように定義されています。
審査基準日以前三年間に、建設工事の施工に従事した者であって、作業員名簿を作成する場合に建設工事に従事する者として氏名が記載される者(ただし、建設工事の施工の管理のみに従事する者(監理技術者や主任技術者として管理に係る業務のみに従事する者)は除く)で、審査基準日以前6か月を超える恒常的雇用関係及び常時雇用(法人の役員及び個人の事業主を含む)されている者
審査基準日以前3年の間に、施工体制台帳の作成が義務付けられている工事にて、元請下請問わず「作業員名簿」に名前が載っている方が対象です。
施工管理のみの人は、対象外です。
施工体制台帳の作成を行わなければならない工事は、以下のとおりです。
- 発注者から直接、建設工事を請け負った特定建設業者が、当該工事に関して締結した下請金額の総額が4,000万円(建築一式工事6,000万円)以上となる場合
- 公共工事発注者から、平成27年4月1日以降に直接建設工事を請け負った建設業者が当該工事に関して下請契約を締結した場合
技能者の申請書類と確認書類は、以下のとおりです。
- 様式第5号「技能者名簿」
- 審査基準日現在の常勤性、6カ月を超える恒常的雇用関係の資料
- 審査基準日以前三年以内に行われた工事に関する施工体制台帳等のうち作業員名簿(建設工事従事者に関する事項)
※技能者の確認は、行政により考え方が異なります。

2.W10(知識および技術または技能の向上に関する取組の状況)の計算方法
「W10」の計算式は、以下のとおりです。
W10 = (技能者数 ÷ (技術者数 + 技能者数) × CPD単位取得数の合計 ÷ 技術者数) + (技能者数 ÷ (技術者数 + 技能者数) × 技能レベル向上者数 ÷ (技能者数 - 控除対象者数))
計算式は、「技術者のCPD単位取得数」と、「技能者の能力評価レベル向上」の2つの評価で構成されています。
技術者の計算方法
「CPD単位取得数の合計」とは、建設業者に所属している技術者が対象です。
審査基準日前1年間における技術者1人当たりが、取得したCPD単位数を計算し、表に当てはめて算出します。
CPD単位取得数 = 取得した認定単位数 / 告示別表第18の団体ごとの数値 × 30(固定の係数)
(例)
Aさんの場合
一般財団法人建設業振興基金:12
CPD取得単位:6単位
AさんのCPD単位取得数 = 6単位 / 12(告示別表第18の数値) × 30 = 15
技術者全員を同じく、計算していきます。
告示別表第18の数値については、以下のページに記載しています。
例えば、2人の技術者の取得単位数が以下の場合
Aさんの場合 ⇒ 15点
Bさんの場合 ⇒ 12点
CPD単位取得数:27(15 + 12) / 技術者数:2 = 13.5
13.5を得点表に当てはめると、「4点」になります。
CPD単位取得数/技術者数 | 点数 |
---|---|
3未満 | 0 |
3以上6未満 | 1 |
6以上9未満 | 2 |
9以上 12 未満 | 3 |
12 以上 15 未満 | 4 |
15 以上 18 未満 | 5 |
18 以上 21 未満 | 6 |
21 以上 24 未満 | 7 |
24 以上 27 未満 | 8 |
27 以上 30 未満 | 9 |
30 | 10 |
CPD取得数は、審査基準日以前1年以内に取得したものが対象です。
CPD認定団体から証明書を発行してもらう必要があります。
技能者の計算方法
「技能レベル向上者数」は、審査基準日以前3年の間に、建設キャリアアップ(CCUS)のレベルが向上していれば加点されます。
そして業種を問わず、能力評価基準のレベルが向上すればOKです。
能力評価基準のレベルについては、以下のページに記載しています。
(例)
Cさんの場合:3年前のレベル1から、レベル2にUP
Dさんの場合:3年前のレベル2のまま
Eさんの場合:3年前のレベル4のまま ⇒ レベル4は控除対象者
技能レベル向上者数(Cさん:1) / (技能者(C・D・Eさん:3) - 控除対象者数(Eさん:1))= 50%
50%を得点表に当てはめると、10点になります。
点数 | 技能レベル向上者数/(技能者数-控除対象者数) |
---|---|
0 | 1.5%未満 |
1 | 1.5%以上3%未満 |
2 | 3%以上 4.5%未満 |
3 | 4.5%以上6%未満 |
4 | 6%以上 7.5%未満 |
5 | 7.5%以上9%未満 |
6 | 9%以上 10.5%未満 |
7 | 10.5%以上 12%未満 |
8 | 12%以上 13.5%未満 |
9 | 13.5%以上 15%未満 |
10 | 15%以上 |
以上の例の結果を当てはめると。
W10 =
(技術者数(2名) / (技術者数(2名) + 技能者数(3名)) × 4点)
+
(技能者数(3名) / (技術者数(2名) + 技能者数(3名)) × 10点)
W10 = (2 / 5 × 4) + (3 / 5 × 10)
W10 = 1.6 + 6
W10 = 7.6点になります。
算出テーブルに当てはめると、 「7点」になります。
よって、W10は「7点」ということになりました。
W10算出値 | 評点 |
---|---|
10 | 10 |
9以上10未満 | 9 |
8以上9未満 | 8 |
7以上8未満 | 7 |
6以上7未満 | 6 |
5以上6未満 | 5 |
4以上5未満 | 4 |
3以上4未満 | 3 |
2以上3未満 | 2 |
1以上2未満 | 1 |
1未満0 | 0 |
3.まとめ

大まかに、まとめてみると。
- 計算式は、「技術者のCPD単位取得数」と、「技能者の能力評価レベル向上」の2つの評価で構成されている
- 技術者とは、監理技術者、主任技術者、1級技士補及び2級技士補で、審査基準日以前6か月を超える恒常的雇用関係及び常時雇用されている者である
- 技能者とは、審査基準日以前三年間に、作業員名簿を作成する場合に建設工事に従事する者として氏名が記載される者で、審査基準日以前6か月を超える恒常的雇用関係及び常時雇用されている者である
- 技能者は、施工管理のみをおこなうものは対象外である
- 技能者は、業種を問わず、能力評価基準のレベルが向上すれば対象である
CPD単位取得も、CCPDの能力評価レベル向上者も、経審のレベルUPを取り込みやすい項目ではあります。
複雑な確認と計算を要しますが、社内全体レベルでの評価向上に早めに取り込むと有利になりますよ。
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