経営事項審査「知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況」の計算方法
令和3年4月建設業法改正で、経営事項審査の「その他審査項目(社会性等)」に、新たに評価項目が追加されました。
この評価項目では、技術者の継続教育(CPD:Continuing Professional Development)の取得単位数と、技能者の建設キャリアアップシステムでのレベルアップを評価します。
この記事では『経営事項審査』を受けたい建設業者様のために、計算方法がややこしい「知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況」の計算方法を説明しています。
目次
1.「知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況」の算出方法
この評価項目は、取得単位などの合計数値の絶対数で評価されません。
在籍する技術者や技能者の、1人当たりに換算した比率で評価されます。
そのため、技術者や技能者が多い在籍する建設業者は、その在籍者数に見合った点数を取得しないと望むような評価を得ることはできません。
一部の技術者と技能者でなく、全社的な取り組みが必要となります。
計算式はとてもややこしいため、ステップごとに確認していきましょう。
ステップ1:技術者の「換算後の取得数」を求める
技術者とは、審査基準日以前6か月を超える恒常的雇用関係及び常時雇用(法人の役員及び個人の事業主を含む)されている者で、以下の者が対象となります。
- 監理技術者になる資格を有する者
- 主任技術者になる資格を有する者
- 1級技士補及び2級技士補(施工管理技士試験の一次検定合格者)
審査基準日前1年間に、上記技術者が取得したCPD単位を「告示別表第18」に当てはめて下記の計算式で「換算後の取得数」を求めます。
小数点以下は切り捨てにし、「換算後の取得数」の上限は30単位です。
(取得単位数)÷(告示別表第18の係数)×30=換算後の取得数
この「換算後の取得数」を、経営事項審査の申請書に記載します。
技術職員名簿記載の方は、「別紙2 技術職員名簿」に記載します。
技術職員名簿に記載されていない技術職員の方は、「様式第2号 CPD単位を取得した技術者名簿」に記載します。
告示別表第18
公益社団法人空気調和・衛生工学会 | 50 | 公益社団法人日本建築士会連合会 | 12 | |
一般財団法人建設業振興基金 | 12 | 公益社団法人日本造園学会 | 50 | |
一般社団法人建設コンサルタンツ協会 | 50 | 公益社団法人日本都市計画学会 | 50 | |
一般社団法人交通工学研究会 | 50 | 公益社団法人農業農村工学会 | 50 | |
公益社団法人地盤工学会 | 50 | 一般社団法人日本建築士事務所協会連合会 | 12 | |
公益社団法人森林・自然環境技術教育研究センター | 20 | 公益社団法人日本建築家協会 | 12 | |
公益社団法人全国上下水道コンサルタント協会 | 50 | 一般社団法人日本建設業連合会 | 12 | |
一般社団法人全国測量設計業協会連合会 | 20 | 一般社団法人日本建築学会 | 12 | |
一般社団法人全国土木施工管理技士会連合会 | 20 | 一般社団法人建築設備技術者協会 | 12 | |
一般社団法人全日本建設技術協会 | 25 | 一般社団法人電気設備学会 | 12 | |
土質・地質技術者生涯学習協議会 | 50 | 一般社団法人日本設備設計事務所協会連合会 | 12 | |
公益社団法人土木学会 | 50 | 公益財団法人建築技術教育普及センター | 12 | |
一般社団法人日本環境アセスメント協会 | 50 | 一般社団法人日本建築構造技術者協会 | 12 | |
公益社団法人日本技術士会 | 50 |
ステップ2:「技術者点」を求める
全技術者の「換算後の取得数」の合計を求め、「全技術者のCPD単位取得数」を求めます。
そして以下の計算式のとおり、審査基準日現在の在籍技術者数で割り、「技術者1人あたりのCPD取得単位数」を求めます。
その「技術者1人あたりのCPD取得単位数」を、技術者算出テーブルに当てはめ「技術者点」を求めます。
(全技術者のCPD単位取得数)÷(審査基準日現在の在籍技術者数)=技術者1人あたりのCPD取得単位数
技術者算出テーブル
技術者1人あたりの CPD取得単位数 | 技術者点 | 技術者1人あたりの CPD取得単位数 | 技術者点 | |
---|---|---|---|---|
30 | 10 | 12以上 15未満 | 4 | |
27以上 30未満 | 9 | 9以上 12未満 | 3 | |
24以上 27未満 | 8 | 6以上 9未満 | 2 | |
21以上 24未満 | 7 | 3以上 6未満 | 1 | |
18以上 21未満 | 6 | 3未満 | 0 | |
15以上 18未満 | 5 |
ステップ3:「レベルアップした技能者の比率」を求める
技能者とは、審査基準日以前6か月を超える恒常的雇用関係及び常時雇用(法人の役員及び個人の事業主を含む)されている者で、以下の者が対象となります。
- 審査基準日以前3年間に、建設工事の施工に従事した者であって、作業員名簿を作成する場合に建設工事に従事する者として氏名が記載される者
ただし、建設工事の施工の管理のみに従事する監理技術者や主任技術者は除く)
対象の技能者は、経営事項審査の申請書「様式第5号 技能者名簿」に記載します。
そして常勤性の確認書類と、以下の書類を提出します。
- 審査基準日以前三年以内に行われた工事に関する施工体制台帳等のうち作業員名簿(建設工事従事者に関する事項)の写し
- 能力評価(レベル判定)結果通知書、又は、基準適合事業主認定通知書の写し
審査基準日以前3年の間に、建設キャリアアップシステムの認定能力判定基準でレベルアップした技能者を全技能者で割り、100をかけてレベルアップした技能者の比率を求めます。
ただし審査基準日3年前時点でレベル4の技能者は、全技能者数から控除します。
計算式は以下のとおりです。
(審査基準日以前3年間に1以上レベルアップした技能者数)÷(審査基準日現在の在籍技能者数ー審査基準日3年前時点でレベル4の技能者)×100=レベルアップした技能者の比率
ステップ4:「技能者点」を求める
求めた「レベルアップした技能者の比率」を、技能者算出テーブルに当てはめ「技能者点」を求めます。
技能者算出テーブル
レベルアップした技能者の比率 | 技能者点 | レベルアップした技能者の比率 | 技能者点 | |
---|---|---|---|---|
15%以上 | 10 | 6%以上 7.5%未満 | 4 | |
13.5%以上 15%未満 | 9 | 4.5%以上 6%未満 | 3 | |
12%以上 13.5%未満 | 8 | 3%以上 4.5%未満 | 2 | |
10.5%以上 12%未満 | 7 | 1.5%以上 3%未満 | 1 | |
9%以上 10.5%未満 | 6 | 1.5%未満 | 0 | |
7.5%以上 9%未満 | 5 |
ステップ5:「技術者点」と「技能者点」を合算し評点を求める
今までで求められた「技術者点」と「技能者点」を、以下の計算式で合算し「合算数値」を求めます。
(技術者数÷(技術者数+技能者数))×技術者点+(技能者数÷(技術者数+技能者数))×技能者点=合算数値
求められた「合算数値」を、以下の最終の算出テーブルに当てはめて評点が求めることができます。
最終の算出テーブル
合算数値 | 評点 | 合算数値 | 評点 | |
---|---|---|---|---|
10 | 10 | 4以上 5未満 | 4 | |
9以上 10未満 | 9 | 3以上 4未満 | 3 | |
8以上 9未満 | 8 | 2以上 3未満 | 2 | |
7以上 8未満 | 7 | 1以上 2未満 | 1 | |
6以上 7未満 | 6 | 1未満 | 0 | |
5以上 6未満 | 5 |

ややこしいけど、なんとかついていくよ。
会社全体で、技術者と技能者へのサポートが必要なんだね。
2.計算のシミュレーション
技術者と技能者は、兼用することができます。
例えば、以下の条件で技術者と技能者がいる場合、計算をシミュレーションしてみましょう。
- 技術者と技能者を合わせて、AからGの7名の職員を雇用。
- A~Dの4名は、建設工事の施工管理のみ従事。
- F及びGの2名は、建設工事の施工に従事し、施工管理には従事しない。
- Eは建設工事の施工に従事するが、主任技術者となる資格を有する。

各技術者A~EのCPD単位は、以下のとおりとします。
氏名 | 認定CPD単位 | CPD認定団体 | 告示別表第18 | |
---|---|---|---|---|
A | 20 | 空気調和・衛生工学会 | 10 | |
B | 10 | 建設業振興基金 | 9 | |
C | 50 | 建設コンサルタンツ協会 | 8 | |
D | 31 | 交通工学研究会 | 7 | |
E | 80 | 地盤工学会 | 6 |
換算後の取得数を求めるため、以下のとおり計算します。
小数点以下は、切り捨てにします。
- A:20÷50×30=12
- B:10÷12×30=25
- C:50÷50×30=30
- D:31÷50×30=18
- E:80÷50×30=48
12+25+30+18+30=115
全技術者のCPD単位取得数を求めると、「115」になります。
全技術者のCPD単位取得数(115) ÷ 全技術者数(5) = 23
技術者1人あたりのCPD取得単位数は、「23」になります。
技術者算出テーブルに当てはめると、技術者点は「7」になります。
技術者算出テーブル
技術者1人あたりの CPD取得単位数 | 技術者点 | 技術者1人あたりの CPD取得単位数 | 技術者点 | |
---|---|---|---|---|
30 | 10 | 12以上 15未満 | 4 | |
27以上 30未満 | 9 | 9以上 12未満 | 3 | |
24以上 27未満 | 8 | 6以上 9未満 | 2 | |
21以上 24未満 | 7 | 3以上 6未満 | 1 | |
18以上 21未満 | 6 | 3未満 | 0 | |
15以上 18未満 | 5 |
次に技能者E~Gのレベル向上は、以下のとおりだとします。
氏名 | 3年前のレベル | 審査基準日時点のレベル | |
---|---|---|---|
E | レベル2 | → | レベル2 |
F | レベル4 | → | レベル4 |
G | レベル1 | → | レベル2 |
Eは、レベルが変わらないため、「レベル向上なし」になります。
Fは、3年前からレベル4のため、「控除対象」になります。
Gは、今回レベルが上がっているため、「レベル向上あり」になります。
技能レベル向上者数(1) ÷ 技術者数(3) - 控除対象者数(1) = 50%
レベルアップした技能者の比率は、50%になります。
技能者算出テーブルに当てはめると、技術者点は「10」になります。
技術者算出テーブル
技術者1人あたりの CPD取得単位数 | 技術者点 | 技術者1人あたりの CPD取得単位数 | 技術者点 | |
---|---|---|---|---|
30 | 10 | 12以上 15未満 | 4 | |
27以上 30未満 | 9 | 9以上 12未満 | 3 | |
24以上 27未満 | 8 | 6以上 9未満 | 2 | |
21以上 24未満 | 7 | 3以上 6未満 | 1 | |
18以上 21未満 | 6 | 3未満 | 0 | |
15以上 18未満 | 5 |
「技術者点」と「技能者点」を合算し、「合算数値」を求めます。
(技術者数(5)÷(技術者数+技能者数(8))×技術者点(7))+(技能者数(3)÷(技術者数+技能者数(8))×技能者点(10)= 8.125
求められた「合算数値」を、最終の算出テーブルに当てはめると評点は「8」になります。
最終の算出テーブル
合算数値 | 評点 | 合算数値 | 評点 | |
---|---|---|---|---|
10 | 10 | 4以上 5未満 | 4 | |
9以上 10未満 | 9 | 3以上 4未満 | 3 | |
8以上 9未満 | 8 | 2以上 3未満 | 2 | |
7以上 8未満 | 7 | 1以上 2未満 | 1 | |
6以上 7未満 | 6 | 1未満 | 0 | |
5以上 6未満 | 5 |

とても複雑な計算をすることになるけど、ひとつひとつ確認しながら計算すればできたよ。
比較的取組みやすい評価項目だと思うよ。