経営事項審査 工事経歴書の書き方

工事経歴書は、事業年度の許可業種ごとに工事実績を記載する書類です。
経営事項審査を受けない場合と違い、経営事項審査を受ける場合では特殊なルールがあります。

この記事では、経営事項審査を受けたい方に向けて説明しています。

1.工事経歴書の記載事項

まずは工事経歴書の記載事項と注意点は次のとおりになります。

工事経歴書の例
  • 建設工事の種類
    許可を受けた業種ごとに作成し、完成工事高の無い業種についても作成する必要があります。
  • 税込、税抜
    税理士作成の財務諸表に合わせるのが原則。
    ただし経営事項審査を受ける場合は、免税事業者を除いて、必ず税抜で作成します。
  • 注文者
    自社から見た直接の注文者を記載します。
    下請の場合は、直接注文した建設業者を記載します。
    なお注文者の個人名が、特定されないように留意しましょう。
  • 元請又は下請の別
    自社が施主から直接受注した場合は、「元請」。
    それ以外は「下請」を記載します。
  • JVの別
    JV(共同企業体)として施工した場合のみ、「JV」と記載します。
  • 工事名
    契約書や注文書どおりに記載します。
    自社の工事内容が判別できないときは、自社が行った工事内容を付記します。
    なお注文者の個人名が、特定されないように留意しましょう。
  • 工事現場のある都道府県および市区町村名
    最小行政区画まで記載します。
    詳細な番地名は不要です。
  • 配置技術者
    現場に配置した主任技術者または監理技術者の氏名を記載します。
    原則として、営業所技術者等(専任技術者)は記載できません。
    また専任を要する工事(請負代金4,000万円以上の工事など)の技術者が、同時期に複数現場を担当することはできません。
  • 請負代金の額
    千円単位で記載します。
    経営事項審査を受ける場合は、免税事業者を除いて必ず「税抜」で作成しなければなりません。

    工事進行基準を採用している場合は、以下のようにカッコ書きをします。
    ○○,○○○千円 ←全期分
    (○○,○○○千円) ←今期分
    工事進行基準とは、長期間かかる工事で、工事の進み具合によって少しずつお金をもらう方法です。
  • 工期
    工事全体の工期ではなく、自社が施工に従事した工期を記載します。
  • 小計、合計
    小計は当該ページの合計件数と、請負金額の合計を記載します。
    うち元請工事の請負金額の合計も記載します。
    合計は業種ごとの全合計件数と、全請負金額の合計を記載します。
    うち元請工事の請負金額の全合計も記載します。

2.経営事項審査での記載ルール

経営事項審査を受ける場合、特殊なルールに基づいて工事経歴書を作成する必要があります。

経営事項審査の工事経歴書記載フロー
大阪府の経営事項審査の手引きを引用

軽微な工事とは

  • 建築一式工事の場合
    工事1件の請負金額が1,500万円未満の工事、又は延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅工事
  • 建築一式工事以外の場合
    工事1件の請負額が500万円未満の工事

経営事項審査を受けない場合は、以下の手順で記載するのみです。

  1. 元請、下請関係なく、請負代金の額の大きい順に10件ほど記載します。
  2. それに続けて、未成工事の請負代金の額の大きい順に記載します。

経営事項審査を受ける場合は、以下の手順で記載しなければなりません。
請負代金の額は税抜きで、免税事業者は税込みで記載します。

  1. 元請工事から請負代金の額の大きい順に、元請工事全体の7割に達するまで記載します。
  2. それに続けて、元請・下請に関係なく、請負代金の額の大きい順に完成工事高の7割に達するまで記載します。
    ※ただし軽微な工事が10件達すれば、7割を満たす前に終了ができます。(元請工事含む)

沢山の工事がある場合、7割に到達するまで工事経歴書の作成をするとなると、工事経歴書が何枚あっても足りません。そのため軽微な工事が、10件達すれば打ち切れるというルールがあります。

そこで経営事項審査の工事経歴書での記載例を紹介します。

記載例1(全ての完成工事高の合計額が7割を超えた場合)

全ての完成工事高の合計額が7割を超えた場合

元請合計額の233,000千円の7割は、163,100千円です。
3件目までの元請合計額が163,200千円のため、ここで元請の7割を超えます。
元請下請合わせての合計額の270,000千円の7割は、189,000千円です。
7件目の合計額が190,100千円のため、全体の7割を超えます。

記載例2(工事経歴書に元請しかなく、全ての完成工事高の合計額が7割を超えた場合)

全ての完成工事高の合計額が7割を超えた場合

元請下請合わせての合計額の233,000千円の7割は、163,100千円です。
3件目までで全体合計額が163,200千円のため、ここで全体の7割を超えます。
元請の合計額の180,000千円の7割は、126,000千円です。
元請しか記載がないため、元請の計算をしなくても当然に7割を超えていることになります。

記載例3(全体で軽微な工事が10件に達した場合)

全体で軽微な工事が10件に達した場合

元請合計額の233,000千円の7割は、163,100千円です。
3件目までの元請合計額が163,200千円のため、ここで元請の7割を超えます。
元請下請合わせての合計額の270,000千円の7割は、189,000千円です。
11件目の合計額が177,540千円のため、全体の7割を超えません。
しかし軽微な工事が、元請下請合わせて10件を超えるため終了することになります。
ちなみに4件目の4,600千円は、税込みで考えると500万円を超えるため、軽微な工事にはなりません。

記載例4(元請のみで軽微な工事が10件に達した場合)

元請のみで軽微な工事が10件に達した場合

元請合計額の233,000千円の7割は、163,100千円です。
元請の7割を超えるのは、ほど遠いです。
しかし軽微な工事が、元請10件を超えるため終了することになります。
下請はありませんが、元請のみで問題ありません。(大阪府の場合)

まずは7割の原則パターンを理解したうえで、工事実績をたくさん書かないといけないなぁ~と思ったら、軽微な工事10件で終了できるパターンを確認してください。