会社合併で経審はどうなる? 建設業者が知るべき「合併時経審」の基本ルール
建設業を営む皆さま、いつもお仕事お疲れ様です!
会社の経営戦略として「合併」を検討される際、様々なメリットとともに、手続きの複雑さや、それに伴う各種許認可の取り扱いについてご心配されることと思います。
特に建設業者様にとって、公共工事の受注に不可欠な経営事項審査が、合併によってどう影響するのかは、非常に重要な関心事ですよね。
「合併したら経審の点数はどうなるの?」
「今まで築き上げてきた点数がリセットされちゃうの?」
今回は、建設業者が合併を行う際に知っておくべき「合併時経審」の基本ルールについて、解説していきますね。
1.経営事項審査とは?なぜ合併時に重要?
まず、経審の基本を簡単におさらいしましょう。
経営事項審査(経審)とは、建設業者の経営状況や技術力などを客観的に評価し、点数化する制度です。
この経審の点数(総合評定値:P点)が、公共工事の入札に参加する際の資格審査に用いられます。
点数が高ければ高いほど、より大規模な工事の入札に参加できたり、有利な条件で受注できたりする可能性が高まります。
会社が合併すると、複数の会社が一つになるわけですから、それぞれの会社の経営状況や技術力が合算されたり、再評価されたりすることになります。
そのため、合併後の会社がこれまで通りの、あるいはそれ以上の経審の点数を維持できるかどうかが、今後の事業展開に大きく影響するのです。
2.合併時経審の基本ルール:原則は「承継」!
令和2年10月1日施行の改正建設業法により導入された「認可制度」は、合併による建設業許可の承継を円滑にしました。
これに伴い、経審の評価についても、合併の形態に応じて一定のルールが定められています。
基本ルールとしては、認可制度を利用して合併する場合、原則として合併前の会社の経審データ(営業実績、技術力など)は、合併後の会社に「承継」されることになります。
これは、合併によって事業の継続性が認められるため、これまでの会社の努力や実績が失われないようにするためです。

合併には主に以下の2種類があります。
- 吸収合併
吸収合併とは、一方の会社(存続会社)が、もう一方の会社(消滅会社)を吸収し、消滅会社が法人格を失う形です。
吸収する側の会社(存続会社)が、吸収される側の会社(消滅会社)の全ての権利義務を承継します。
建設業では、許認可や免許をそのまま引き継げるため、実務上多く利用されます。- 完成工事高:存続会社と消滅会社の完成工事高が合算されます。
- 技術職員数:それぞれの会社の技術職員が合算されます。
- 財務状況:それぞれの会社の貸借対照表や損益計算書が合算され、合併後の会社の財務状況として評価されます。
- 営業年数:存続会社の営業年数を基本とし、消滅会社の営業年数も考慮される形で評価が加味されます。ただし、単純に「合算」されるわけではなく、最も長い営業年数が引き継がれる、あるいはその営業年数に準じた評価がされることが多いです。この点は行政庁の判断基準によって詳細が異なるため、個別確認が重要です。
- その他の評価項目(W点):社会性に関する項目なども、基本的に合算・統合して評価されます。
- 新設合併
新設合併とは、複数の会社が全て消滅し、新しく会社を設立する形です。
ただし、登録免許税が高くなる、許認可を承継できない、資産の名義変更コストが高いなどの問題があるため、実務で利用されることは稀です。- 承継の原則:消滅する各社の経審データが、新設される会社に引き継がれ、合算して評価されます。
- 具体例:吸収合併と同様に、完成工事高、技術職員数、財務状況などが合算されて評価されます。営業年数についても、合併前の最も長い営業年数が引き継がれることが多いです。
3.合併したら経審の点数は上がる?下がる?
経審の点数が「上がる」ケース
合併によって経審の点数が上がるのは、主に「互いの会社の強みを持ち寄り、相乗効果を生み出すケース」です。
- ケーススタディ1:完成工事高を合算し、規模を拡大!
- 合併前の状況
A社:年間完成工事高3億円、経審の財務状況は良好。
B社:年間完成工事高2億円、経審の技術力は高評価。 - 合併後の状況
A社とB社が合併し、年間完成工事高が5億円に増加!
A社の財務の強みと、B社の技術の強みが統合される。 - 経審への影響
- 経審の完成工事高(X1)の評価が向上します。
- 財務(Y)の評価はA社の良い状況を維持しつつ、技術職員(Z)の人数も増えるため、総合的に点数がアップし、より大規模な工事の入札に参加できる可能性が高まります。
- 合併前の状況
- ケーススタディ2:技術者を統合し、専門分野を強化!
- 合併前の状況
A社:建築工事の技術者が豊富で、建築一式の経審点が高い。
B社:土木工事の技術者が豊富で、土木一式の経審点が高い。 - 合併後の状況
A社とB社が合併し、建築と土木の双方に強い会社が誕生! - 経審への影響
- それぞれの専門技術者が統合されることで、「技術職員数(Z)」が大幅に増加します。
- 特に、建築一式と土木一式の両方で高い経審点を持つことで、両分野の公共工事入札で有利に。それぞれの強みを活かした相乗効果が期待できます。
- 合併前の状況
経審の点数が「下がる」ケース
一方で、合併によって経審の点数が下がってしまうのは、「互いの弱点も合算してしまうケース」です。
- ケーススタディ3:財務状況の悪い会社を吸収合併
- 合併前の状況
A社:財務状況が非常に良好で、経審の財務評価(Y)は高得点。
B社:債務超過寸前で、経審の財務評価(Y)は大幅なマイナス評価。 - 合併後の状況
A社がB社を吸収合併。 - 経審への影響
- 合併により、B社の財務状況がそのままA社に引き継がれ、A社の自己資本や流動比率などが悪化します。
- その結果、A社単体では高かった財務評価(Y)が大幅に下がり、総合点が下落。場合によっては、公共工事の入札参加資格を失うリスクもあります。
- 合併前の状況
- ケーススタディ4:社会保険未加入の会社を吸収
- 合併前の状況
A社:全ての従業員の社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険)に加入済み。
B社:一部の従業員が社会保険に未加入。 - 合併後の状況
A社がB社を吸収合併。 - 経審への影響
- 合併後、B社から引き継いだ従業員の社会保険加入状況が経審の「社会性(W点)」で評価されます。
- 未加入の従業員がいる場合、社会保険の加入状況が「不適切」と判断され、減点対象となります。これにより、経審の総合点が下がり、公共工事の入札に不利になる可能性があります。
- 合併前の状況
合併で経審の点数を「上げる」ためのポイント
合併によって経審の点数を上げ、事業を成功させるためには、以下のポイントを事前にしっかり押さえておくことが重要です。
- 合併目的の明確化
- 単に規模を大きくするためではなく、「完成工事高を増やして入札規模を拡大する」「技術者を増やして専門性を高める」など、経審の点数アップに直結する明確な目的を持って合併を検討しましょう。
- 徹底的な「デューデリジェンス」(事前調査)
- 合併する相手先の財務状況、技術者、社会保険加入状況、過去の監督処分歴などを徹底的に調査しましょう。特に財務状況と社会保険は、経審の点数に直接影響するため、専門家を交えて入念に確認することが不可欠です。
- 専門家との連携
- 合併の手続きは、建設業許可の認可申請、会社法に基づく登記、税務処理、経審の申請など、非常に複雑です。行政書士、税理士、弁護士など、複数の専門家とチームを組んで進めることで、手続きをスムーズに進め、経審の点数を有利にするための最適な戦略を立てることができます。
会社合併は、会社の未来を大きく左右する重要な決断です。
特に建設業者様にとっては、経審の評価が事業の継続に直結します。
適切な知識と準備、そして専門家のサポートがあれば、この大きな節目を成功させることができます。
この情報が、あなたの事業の発展に少しでも貢献できれば幸いです。

