建設業許可の要件と維持管理

建設業許可の要件は、建設業法に基づいて定められており、建設業を営む上で満たすべき基準です。
これらの要件は、建設業者の信頼性を確保し、建設工事の適正な施工と発注者の保護を目的としています。

また建設業許可を取得した後も、許可の維持管理を行う必要があります。

この記事では建設業許可の基本である「建設業許可の要件と維持管理」を、建設業者様のために説明しています。

1.建設業許可の要件

建設業許可の要件は多岐にわたり、それぞれに重要なポイントがあります。
以下に、主要な要件とそのポイントを詳しく解説します。

経営業務の管理責任者

建設業の経営経験がある人が必要です。
法人の場合は常勤の役員、個人の場合は事業主自身が該当します。

建設業は受注生産で工事金額が大きく、完成後も責任が生じるなど他の産業とは異なる特性があるため、適正な経営が求められるのです。

役割として、資金調達、資材の購入、技術者や労働者の手配、下請の手配などを行います。

例として、以下の方が対象になります。

  • 建設業許可を持っている会社で、役員経験が5年以上ある
  • 建設業許可はないが、建設業を営んでいる会社で役員経験が5年以上ある
  • 自営業で建設業を5年以上営んでおり、毎年確定申告をしている
  • 権限の委任を受けて経営業務の管理責任者に準ずる地位として、5年以上の経験を有している
  • 経営業務の管理責任者に準ずる地位として、6年以上の建設業の経営業務管理責任者を補佐した経験

詳しくは、以下のページにてまとめています。

経営業務の管理責任者の役割や資格要件

建設業許可の要件の一つとして、営業所の本店に「常勤役員等(経営業務の管理責任者)」を置かなければなりません。 令和2年10月1日の建設業法改正にて、個人としてだけで…

営業所技術者

建設工事の品質を確保するために、専門的な知識や技術を持つ人が必要です。
該当する建設業の種類に応じた国家資格や、一定期間の実務経験が求められます。

この要件は、建設工事の安全性を確保し、技術的な問題を解決できる能力があるかを判断するために設けられています。

所属営業所で見積や契約、工事の施工を行い、発注者の期待に応える役割を担います。

例として、以下の方が対象になります。

  • 許可を受けようとする業種に適合した国家資格を持っている
  • 許可を受けようとする業種の現場経験を、10年(学歴によっては5年若しくは3年の場合もあり)を積んだ

詳しくは、以下のページにてまとめています。

営業所技術者等の役割や資格要件

建設業許可の要件の一つとして、営業所ごとに「営業所技術者等」を置かなければなりません。令和5年7月の建設業法改正前は、「専任技術者」とよばれていました。 一般建…

財産的基礎

建設業者が請負契約を履行できるだけの財産や信用力があるかを判断します。

一般建設業許可では、自己資本が500万円以上であることなどが求められます。
特定建設業許可では、資本金2000万円以上、自己資本4000万円以上などのより厳しい条件が設定されています。

この要件は、建設業者が倒産などによって発注者に損害を与えるリスクを軽減するために設けられています。

詳しくは、以下のページにてまとめています。

一般許可と特定許可の財産的基礎の確認方法

建設業許可の要件の一つとして、「財産的基礎等」という要件があります。 建設工事は公共性が高く、工期も長期化することが多いため、発注者保護の観点として設けらていま…

誠実性

建設業者が法令を遵守し、誠実に業務を行うかを判断します。

過去に不正な行為や不誠実な行為があった場合、許可が下りないことがあります。
この要件は、建設業者が発注者や関係者からの信頼を損なわないために設けられています。

詳しくは、以下のページにてまとめています。

建設業許可で「誠実性」を問われる理由

建設業法における「誠実性」とは、請負契約の締結や履行に関して、不正または不誠実な行為をするおそれがないことを指します。 これは、建設業者が健全な事業活動を行い、…

欠格要件

過去の犯罪歴や行政処分歴など、建設業を営む上で不適格な者を排除するための要件です。

過去に建設業法違反などで刑罰を受けた場合、許可が下りないことがあります。
この要件は、建設業全体の健全な発展を促すために設けられています。

詳しくは、以下のページにてまとめています。

建設業許可の「欠格要件」で許可が下りないケースとは

建設業許可の要件の一つとして、「欠格要件」に該当してはいけません。 建設業法では、建設業を営む上で不適格な者を排除するために、一定の要件に該当する者に対して許可…

社会保険への加入

建設業に従事する者の労働環境の改善と、適正な競争環境の整備を目的としています。

この要件は、建設業者が従業員を適切に保護し、法令を遵守する意思があるかを判断するために設けられています。

詳しくは、以下のページにてまとめています。

建設業で求められる「適切な社会保険」の加入義務

令和2年10月に施工された改正建設業法にて、「適切な社会保険」の加入が義務となりました。 労働者や若年層が安心して働ける環境を整備し、業界全体の健全化を図る狙い…

要件を満たしていることを証明する書類を準備し、都道府県知事または国土交通大臣に申請する必要があります。

2.建設業許可の維持管理

建設業許可を取得した後も、許可を維持し続けるためには、いくつかの重要な手続きと注意点があります。
以下に、建設業許可を維持管理するための主な方法を解説します。

許可の更新

  • 建設業許可には5年間の有効期限があります。
  • 有効期限満了日の30日前までに、更新申請を行う必要があります。
  • 更新時には、改めて許可の取得要件を満たしているか確認されます。

詳しくは、以下のページにてまとめています。

建設業許可の「更新」で気を付けるべきポイント

建設業許可の有効期間は、5年間となっています。建設業許可業者が継続して許可を受けるためには、5年毎に更新の申請をしなければなりません。 5年ごとに、必ず更新の手…

決算変更届の提出

  • 毎事業年度終了後4ヶ月以内に、決算変更届(事業年度終了報告書)を提出する必要があります。

詳しくは、以下のページにてまとめています。

「決算変更届」作成のポイントと重要性

建設業許可業者になると、毎年「決算変更届」を提出しなければなりません。決算変更届とは、正式には「決算終了に伴う変更届出書」といいます。 誰でも閲覧することができ…

変更届の提出

  • 変更事由により、事実発生後14日以内または30日以内に変更届を提出する必要があります。

詳しくは、以下のページにてまとめています。

建設業許可「変更届」の期限と注意点を解説

建設業許可業者は、建設業法に規定される変更事由に該当したときは、定められている期間内に変更届を提出しなければなりません。 変更届を提出していないと、建設業許可の…

その他の注意事項

  • 建設業許可票の掲示
    • 営業所と建設工事の現場に、建設業許可票を掲示することが義務付けられています。
    • 許可票には、許可を受けた建設業の種類や許可番号などの情報を記載する必要があります。
  • 帳簿の備え付けと保存
    • 営業に関する帳簿を備え付け、5年間保存する必要があります。
    • 元請として建設工事を施工した場合は、10年間保存する必要があります。
  • 経営業務の管理責任者と営業所技術者の維持
    • 経営業務の管理責任者と営業所技術者は、許可の要件であるため、常に維持する必要があります。
    • これらの者が退職などで不在となる場合は、速やかに後任者を選任する必要があります。
  • 欠格要件の確認
    • 許可取得後も、欠格要件に該当しないように注意する必要があります。
    • 役員などの変更があった場合は、欠格要件に該当しないか確認する必要があります。

建設業法や関連法令は改正されることがあります。
常に最新の情報を確認するように気を付けてくださいね。

ちょっと古い情報の動画ですが、参考としてYoutube動画をアップしています。