【経営事項審査】経営状況(Y)の評点UP

経営状況分析

経営事項審査の指標のひとつに、「経営状況(Y)」があります。

「経営事項審査の評点をUPさせたいけど、どうすればいいのか」

などと、思ってはおられませんか?

経営状況(Y)は、任意の登録経営状況分析機関にて、経営状況評点(Y)を求めます。
分析結果の「経営状況分析結果通知書」は、経営事項審査で必要となります。

1.経営状況(Y)の算出方法

建設業者の経営状況を計るのに、「経営状況(Y)」が使われます。

経営事項審査の指標をアルファベットで表します。
(Y)とは、以下のように「経営状況」を表しています。

  • 経営規模の認定(X)
  • 技術力の評価(Z)
  • 社会性等の確認(W)
  • 経営状況の分析(Y)

経営状況(Y)は、総合評定値(P点)のウエイトで20%あります。
総合評定値(P点)とは経営事項審査の結果で、総合的に評価された点数のことです。
総合評定値(P点)は、申請業種ごとに算出されます。

経営状況(Y)の評点幅は、最高1,595点~最低0点になります。
経営状況(Y)の算出は、業種によって変わることはなく共通です。

算出方法は、「負債抵抗力」「収益性・効率性」「財務健全性」「絶対的力量」から算出します。

経営状況の評価指標は、以下の4つの属性で分かれます。
そして1つの属性に、それぞれ2指標ずつ、合計8指標から算出します。

(1)負債抵抗力
借入金やそれに伴う支払利息が、多すぎないかを判断する項目です。

(x1) 純支払利息比率 (単位:%)
売上高に対して、実質的な支払利息がどの程度あるかを表します。
この数値が小さいほど、評点がアップします。

(支払利息-受取利息配当金)÷ 売上高 × 100
※売上高は、審査対象事業年度の完成工事高と兼業事業売上高の合計額です。

(x2) 負債回転期間 (単位:ヶ月)
負債が多すぎて、経営活動を圧迫していないかどうかをみます。
負債合計額が平均月商の何カ月分になっているかを見て、資金繰りの健全性を判断します。
月商倍率が低いと資金繰りが健全で、高いと不健全であることになります。
この数値が小さいほど、評点がアップします。

(流動負債 + 固定負債) ÷ (売上高 ÷ 12)
負債は金融機関からの借金だけでなく、未払金なども含まれます。

(2)収益性・効率性
利益率の高い工事をしているかを判断する項目です。

(x3) 総資本売上総利益率 (単位:%)
売上総利益(粗利益)が、2期平均の総資本額に対して、いくら得られているかをみます。
この数値が高いほど、評点がアップします。

売上総利益÷ 総資本(2期平均) × 100
※総資本が3,000万円未満の場合は、3,000万円として算出します。

(x4) 売上高経常利益率 (単位:%)
企業の収益性を表します。
数値が高いほど、収益性の良い工事を受注していることになります。
この数値が高いほど、評点がアップします。

経常利益 ÷ 売上高 ×100
※経常利益は、売上総利益から経費や利息など引いたあと手元に残る利益です。

(3)財務健全性
自己資本の範囲内で固定資産を取得し、総資本に占める自己資本の割合を判断する項目です。

(x5) 自己資本対固定資産比率 (単位:%)
企業の財政状態の健全性を表します。
自己資本が固定資産の額を超えているほど、健全性が高くなります。
この数値が高いほど、評点がアップします。

自己資本(純資産)÷ 固定資産 × 100
※自己資本が多いほど、健全な財務体制と言えます。

(x6) 自己資本比率 (単位:%)
企業の財政状態の健全性を表します。
総資本に占める自己資本の割合が高いほど、企業の財政状態は健全ということになります。
この数値が高いほど、評点がアップします。

自己資本(純資産)÷ 総資本 × 100
※総資本は、「負債」と「純資産」の合計です。

(4)絶対的力量
短期的な現金創出能力と、長期的な利益剰余金(蓄積利益)を判断する項目です。
比率ではなく、1億円に対する絶対額で評価します。

(x7) 営業キャッシュ・フロー (単位:億円)
企業の資金収支が、健全であるかを判断します。
営業活動によって実際に手元に得られた現金の事で、売上額と必ずしもイコールにはなりません。
この数値が高いほど、評点がアップします。

営業キャッシュ・フロー(2期平均) ÷ 1億
※営業キャッシュ・フロー=経常利益+減価償却実施額±引当金増減額-法人税住民税及び事業税±売掛債権増減額±仕入債務増減額±棚卸資産増減額±受入金増減額

(x8) 利益剰余金 (単位:億円)
創業以来蓄積してきた、内部留保金のことです。
利益剰余金が多いほど評点が高くなります。
この数値が高いほど、評点がアップします。

利益余剰金 ÷ 1億
利益余剰金は、純利益から税金や配当金を差引き、後に残った現在の内部留保金です。

次の2つの計算式を当てはめて計算します。
各指標の評点への影響度は、指標ごとに差があります。

経営状況点数(A)=-0.4650 × (x1) - 0.0508 × (x2) + 0.0264 × (x3) + 0.0277 × (x4) + 0.0011 × (x5) + 0.0089 × (x6) + 0.0818 × (x7) + 0.0172 × (x8) + 0.1906

※小数点以下3位未満の端数は、四捨五入する。

経営状況評点(Y)=167.3 × 経営状況点数(A) + 583

※小数点以下の端数は、四捨五入する。

2.経営状況(Y)を評点アップする

経営状況(Y)は、支払利息を圧縮し売上総利益(粗利益)を上昇させて、評点アップする項目です。
8つの指標を理解し、自社で可能なものから実行していくのがポイントです。

(x1) 純支払利息比率

  • 借入金を返済し、支払利息を減らす。

(x2) 負債回転期間

  • 定期預金や積立がある場合は解約して、流動負債を返済する。
  • 過剰在庫を減らし、資金に転換する。
  • 可能なら増資をし、得られた資金を借入金の返済に充当する。

(x3) 総資本売上総利益率

  • 総資本を減少させる。(固定預金を解約し借入金に充当、赤字にならない程度に減価償却を実施)
  • 売上総利益(粗利益)を増加させる。(完成工事原価を減らす)

(x4) 売上高経常利益率

  • 質の良い売上高を多くする。
  • 売上原価の割合を低く抑える。
  • 販売費一般管理費を削減する。
  • 支払利息など営業外費用を少なくする。

(x5) 自己資本対固定資産比率

  • 増資をする。
  • 毎年利益を出し、利益剰余金を積み増していく。
  • 経営活動に不要な遊休資産を処分し、財務体質をスリム化する。

(x6) 自己資本比率

  • 自己資本を増やす。(増資をする・赤字決算を避ける)
  • 総資本を減らす。(借入金の返済・役員や従業員への貸付金の回収・仮勘定の清算)

(x7) 営業キャッシュ・フロー

  • 経常利益 ⇒ 多い方が良い
  • 減価償却 ⇒ 多い方が良い
  • 引当金 ⇒ 増加している方が良い
  • 法人税、住民税および事業税 ⇒ 還付税額がある方が良い
  • 売掛債権増減額 ⇒ 減少している方が良い
  • 仕入債務増減額 ⇒ 増加している方が良い
  • 棚卸資産増減額 ⇒ 減少している方が良い
  • 受入金増減額 ⇒ 増加している方が良い

(x8) 利益剰余金

  • 毎年欠かさず利益を計上し、利益を蓄積する。
  • 予算管理をし、合理的な経営をめざす。
なるほど

3.まとめ

大まかに、まとめてみると。

  • 経営状況の評価指標は、4つの属性から8つの指標に分かれる。
  • 金利を意識して支払利息を下げ、受取利息は正確に計上しましょう。
  • 借入金を返済し、負債を減らしましょう。
  • 削減できる経費はないか、利益を追及しましょう。
  • 建設機械を購入せずにリースを活用したり、固定資産を減らしましょう。
  • 増資を検討し、資本金を増やしましょう。

経営状況(Y)の評点UPは、毎期欠かさず利益を計上し蓄積することです。
成行き経営を脱して、合理的な経営を行う必要があります。

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