JVって何? 建設業者が知っておくべき共同企業体の超基本

建設業を営む皆さま、いつもお仕事お疲れ様です!

大きな公共工事や特殊な工事の入札情報を見ていると、「JV」という言葉をよく目にしますよね。

「JVって結局何?」

「うちの会社も参加できるんやろか?」と、

疑問に思っていませんか?

今回は、この「この共同企業体(JV:ジョイントベンチャー)について、わかりやすく解説させていただきますね。

JVの基本を知ることは、会社のビジネスチャンスを広げる第一歩ですよ!💪

1.JVって何? 共同企業体の基本中の基本

JV(ジョイントベンチャー:Joint Venture)とは、複数の建設業者が、一つの特定の工事を共同で請け負うために、一時的に結成する事業組織のことです。

簡単に言えば、「大きな工事を成功させるための一時的なチーム」ですね。

なぜJVを組む必要があるんですか?

主に、以下のような目的でJVは結成されます。

  1. 工事の確実な施工:大規模な工事や高度な技術が必要な工事など、一社だけでは負担やリスクが大きすぎる場合に、技術力や資金力を分担するため。
  2. 受注機会の拡大:JVを組むことで、単独では参加できなかった大規模な入札に参加できるようになります。
  3. 技術力の補完:異なる得意分野を持つ会社が集まることで、より高度で複雑な工事に対応できるようになります。

【期間と目的別】JVの主な3つのタイプ

JVは、その結成目的存続期間によって、主に以下の3つのタイプに分けられます。

① 特定建設工事共同企業体(特定JV)

  • 期間:原則として、その工事が完了するまでの一時的な組織です。
  • 特徴:工事完了後は解散することが前提です。高度な技術を結集するため、行政が入札参加の条件として指定することが多い形態です。

② 経常建設共同企業体(経常JV)

  • 目的中・小規模工事の安定的受注や、構成員の技術力・経営力の強化・育成を目的として、継続的に維持されます。
  • 期間:通常、数年間(例:3~5年)の有効期間を定めて結成され、期間中は複数の工事を受注できます。
  • 特徴:特定の工事のためではなく、継続的な経営基盤の強化を目的としており、主に中小企業が協力して技術や信用力を高めるために利用されます。

③ 地域維持型建設共同企業体(地域維持型JV)

  • 目的:主に積雪地帯や災害リスクのある地域において、道路の除雪河川の維持管理緊急時の災害対応など、地域のインフラを維持管理する特定の工事を継続的に行うことを目的とします。
  • 期間:経常JVと同様に、一定期間の有効期間を定めて結成されます。
  • 特徴:地域内の複数企業が協力し、緊急時にも迅速に対応できる体制を確保するためのもので、地域への貢献という側面が強いのが特徴です。

2.JVの施工方法と主任技術者・監理技術者の設置ルール

上記のどの目的のJVであっても、主に以下の2つの施工方式があります。

またJVを組む際に、多くのご相談を受けるのが、この技術者配置のルールです。

JVにおいては、単独で工事を請け負う場合とルールが異なりますので、特に注意が必要です。

① 共同施工方式(甲型JV)

最も一般的なJVの形式です。

  • 特徴:構成員(参加会社)全員が、発注者に対して連帯して責任を負う形式です。工事の実施から完成まで、全員が平等に責任を持ちます。
  • 運営:通常、JVの中に「代表者」を決めますが、各構成員の出資比率に応じて、利益や損失、経費などを分担します。
  • 主任技術者と配置技術者の設置
    • 下請代金の総額が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)未満の場合
      1. 全ての構成員が主任技術者を設置します。
      2. 設置された技術者は、代表する主任技術者を明確にし、情報集約するとともに職務分担を明確にしておく必要があります。
      3. 発注者からの請け負った建設工事の請負代金の額が4,500万円(建築一式:9,000万円)以上の場合は、設置された主任技術者の全員が、当該工事に専任する必要があります。
        甲型JVの設置で、下請代金の総額が5000万円(建築一式工事は8000万円)未満の場合
    • 下請代金の総額が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上の場合
      1. 構成員のうち1社(通常は代表者)が監理技術者を、他の構成員が主任技術者を配置します。
      2. 設置された技術者は、代表する監理技術者等を明確にし、情報集約するとともに職務分担を明確にしておく必要があります。
      3. 発注者からの請け負った建設工事の請負代金の額が4,500万円(建築一式:9,000万円)以上の場合は、設置された主任技術者の全員が、当該工事に専任する必要があります。
        甲型JVの設置で、下請代金の総額が5000万円(建築一式工事は8000万円)以上の場合

② 分割施工方式(乙型JV)

  • 特徴:各構成員が、担当する施工範囲をあらかじめ明確に分け自分の担当部分についてのみ責任を負う形式です。他のメンバーの担当部分については責任を負いません。
  • 用途:主に、土地の区画整理事業や団地造成など、工事の区域や工種を明確に分けやすい場合に採用されます。
  • 主任技術者と配置技術者の設置
    • 下請代金の総額が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)未満の場合
      1. 全ての構成員が主任技術者を設置します。
      2. 発注者からの請け負った建設工事の請負代金の額が4,500万円(建築一式:9,000万円)以上の場合は、設置された主任技術者は当該工事に専任する必要があります。
        乙型JVの設置で、下請代金の総額が5000万円(建築一式工事は8000万円)未満の場合
    • 下請代金の総額が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上の場合
      1. 代表者及び構成員であっても分担工事に係る下請代金が5,000万円(建築一式:8,000万円)以上となった建設業者は監理技術者を、他の構成員は主任技術者を配置します。
      2. 発注者からの請け負った建設工事の請負代金の額が4,500万円(建築一式:9,000万円)以上の場合は、設置された監理技術者・主任技術者の全員が、当該工事に専任する必要があります。
        乙型JVの設置で、下請代金の総額が5000万円(建築一式工事は8000万円)以上の場合

【乙型JVの特に重要な注意点】

乙型JVの場合、技術者配置の基準はJV全体の総額ではなく、各構成員が担当する工事部分の請負金額で判断されます。

  • 担当部分が特定額未満の場合:その構成員は主任技術者を配置します。
  • 担当部分が特定額以上になる場合:その構成員は監理技術者を配置しなければなりません。

つまり、JV全体の請負金額が8,000万円を超えていても、各社の担当部分がすべて3,000万円ずつであれば、各社とも主任技術者の配置で良い、ということになります。

3.出資比率って何? JVにおける3つの大切な役割

JVにおける出資比率とは、単に「お金をどれだけ出すか」を決めるものではありません。

主に以下の3つの大切な役割を持っています。

  1. 損益の分担割合
    工事で得られた利益や、万が一発生した損失(赤字)を、各構成員(参加会社)がどれくらいの割合で分け合うか(または負担するか)を定めます。
  2. 経費の負担割合
    JVの運営にかかる共通経費(事務員の給料、共通仮設費など)を、各構成員がどれくらいの割合で負担するかを定めます。
  3. 責任と権限の割合
    特に「甲型JV(共同施工)」において、各構成員が工事の実施に対してどれくらいの責任権限を持つかを示す目安になります。

適正な比率を決める3つの視点

では、具体的にどのような視点から出資比率を決めていけばよいのでしょうか?

  • 視点①:実績(完成工事高)に基づく比率
    最も客観的な根拠となるのが、過去の完成工事高(売上高)や経審の点数です。
    • 考え方:「これまでの会社の体力や実績」に合わせて比率を決定します。
    • :A社(過去3年平均売上5億円)、B社(同3億円)、C社(同2億円)の3社でJVを組む場合、合計10億円のうち、A社50%、B社30%、C社20%といった形で比率を割り振ります。
  • 視点②:工事の分担に基づく比率(※乙型JVで特に重要)
    乙型JVのように、工事の担当範囲や工種が明確に分かれている場合は、「工事原価の分担」「担当する工事の金額」に応じて比率を決定します。
    • 考え方:「実際にJV工事にどれくらいの費用や労力を投入するか」に合わせて比率を決定します。
  • 視点③:リスクと責任のバランス
    JVの代表者は、他の構成員より大きな責任や事務的な負担を負うことが多いため、代表者には比率を優遇するという考え方もあります。
    • 特定の会社に比率を集中させすぎると、他の構成員の関与意識が薄れ、工事が滞るリスクがあります。各社が責任感を持ち、実務に貢献できるバランスを見つけることが成功の鍵です。

出資比率を決めたら必ず「JV協定書」に残す!

出資比率を決めた後、最も大切な作業が「JV協定書」の作成です。

出資比率が決定しても、協定書に明記されていなければ、それは口約束と同じです。

必ず以下の内容を明確にし、すべての構成員が署名捺印した協定書を作成しましょう。

  • 出資比率(数字だけでなく、その比率の根拠も残しておくとベター)
  • 代表者の選定と権限
  • 損益経費の負担・分担方法
  • 工事の担当範囲技術者配置の責任

このように、JVの技術者配置ルールは複雑で、一つ間違えると建設業法違反になりかねません。

特に、専任義務の有無適切な資格要件の判断は専門知識が必要です。

この情報が、あなたの事業の発展に少しでも貢献できれば幸いです。