建設業許可は誠実性が命!欠格要件に触れないための注意点を行政書士が指南

建設業許可の要件には、とても大切な「誠実性」という要素があります。

「誠実性って、具体的に何を指すんだろう?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんね。

今回は、建設業許可における「誠実性」について、そしてその「誠実性」が欠けることで生じる「欠格要件」に触れないための注意点を、皆さまに分かりやすく、そして優しく詳しくご説明させていただきます。

1.「誠実性」って何?建設業許可に欠かせない信頼の証

建設業許可における「誠実性」とは、簡単に言えば「法律を守り、まじめに事業を行う姿勢があること」を指します。

これは、許可を受ける会社やその役員、そして重要な立場にある人々が、社会的な信用を損なうような行動をしていないか、今後も行わないか、という点を確認するための要件です。

なぜ「誠実性」がこれほど重視されるのでしょうか?

建設工事は、皆さまの生活の基盤となる建物やインフラを造る、非常に公共性の高い事業です。
そのため、工事を発注する方々や、協力してくださる下請け業者さん、そして地域社会全体から「この会社なら安心して任せられる」という信頼が不可欠です。

もし、不誠実な行為を行う業者さんがいると、工事の品質問題やトラブル、契約違反などが発生し、結果として建設業界全体の信用が揺らぎかねません。

そこで、建設業許可制度では、この「誠実性」を重要な要件とすることで、健全な業界の発展と、皆さまが安心して利用できる建設サービスを確保することを目指しているのです。

2.「誠実性がない」と判断される主なケースと欠格要件

「誠実性がない」と判断され、欠格要件に該当してしまうケースには、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。特に注意したい代表的な事例をご紹介します。

  • 不正な行為の具体例
    • 詐欺的な契約締結
      • 実際には保有していない資格や実績を偽って、高額な工事契約を結ぶ。
      • 工事に必要な許可がないにもかかわらず、あると偽って契約を結ぶ。
    • 虚偽の見積もり
      • 契約金額を不当に吊り上げるために、実際よりも高額な材料費や人件費を記載した見積書を提出する。
    • 手抜き工事と隠蔽
      • 工事中に本来必要な工程を省いたり、粗悪な材料を使用したりして、後日発覚しないように隠蔽する。
    • 横領
      • 工事の前払い金や着手金を、個人的な用途に流用する。
  • 不誠実な行為の具体例
    • 契約違反
      • 正当な理由なく工事を中断し、発注者に損害を与える。
      • 契約で定められた工期を大幅に遅延させ、発注者の事業計画に支障をきたす。
      • 契約で定められた材料と異なる粗悪な材料を使用する。
    • 不適切な対応
      • 発注者からのクレームに対し、誠実な対応をせず、問題を放置する。
      • 契約内容に関する説明を十分にせず、発注者の誤解を招く。
    • 免許等の取消処分
      • 建築士法や宅地建物取引業法等の規定により、不正又は不誠実な行為を行ったことをもって免許等の取消処分を受け、その最終処分から5年を経過しない。
    • 暴力団との関係
      • 暴力団の構成員である、または暴力団による経営上の支配を受けている。
    • 過去の行政処分歴
      • 建設業法違反やその他の法令違反により、行政処分を受けたことがある場合、その内容や頻度によっては誠実性を欠くと判断されることがあります。
    • 社会保険未加入
      • 建設業者は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険へ加入する義務があります。未加入の場合、誠実性を疑われる可能性もあります。

誠実性の確認は、申請者からの申告だけでなく、行政庁による調査も行われます。

具体的には、以下の方法で確認されます。

  • 過去の行政処分歴の確認
  • 関係機関への照会
  • 必要に応じて、面談や現地調査

誠実性の欠格要件の対象者の範囲は、以下の者が対象となります。

  • 法人の場合
    • 法人自体
    • 役員等
      業務を執行する社員、取締役、執行役、組合等の理事、相談役、顧問その他名称を問わず、法人の業務を執行し、もしくは同等以上の支配力を有すると認められる者であり、非常勤である者も含みます。監査役は含みません。
    • 令3条の使用人(支店長、営業所長など)
    • 総株主の議決権の5%以上を有する個人株主
  • 個人事業主の場合
    • 個人事業主本人
    • 令3条の使用人(支配人)
  • 上記が未成年者の場合
    • その法定代理人

「誠実性」の要件をクリアし、建設業許可を維持していくためには、日頃から以下の点に注意し、会社全体で法令遵守(コンプライアンス)の意識を高めることが重要です。

「誠実性」という要件は、単に法律に詳しいだけでなく、日々の事業活動における倫理観や社会的な責任感が問われるものです。

建設業許可は、皆さまの会社が社会から信頼される企業として発展していくための大切なパスポートです。
この情報が、あなたの事業の発展に少しでも貢献できれば幸いです。