現場の信頼を勝ち取る第一歩!建設業許可の要「欠格要件」完全ガイド
「よし、これから元請としての仕事も増えるし、建設業許可を取るぞ!」
そう意気込んで準備を始めた社長様。
実は、経営能力や技術力、お金の証明をする前に、絶対に避けては通れない「門番」のような審査項目があるのをご存知でしょうか。
それが「欠格要件(けっかくようけん)」です。
先日ご相談いただいた業者様も、「うちは真面目にやってきたから大丈夫だ」と仰っていました。
しかし、お話を伺うと「数年前、役員がプライベートでトラブルを起こして罰金を払ったことがあるかも……」という事実が判明。
危うく申請そのものが水の泡になるところでした。
建設業許可は、一度申請して「不許可」の結果が出ると、支払った手数料(大阪府知事許可なら9万円)は戻ってきません。
それどころか、虚偽の申請をしたとみなされれば、さらに厳しい処分が待っています。
今回は、この「知らなかったでは済まされない」欠格要件について徹底解説します。
※「経営業務の管理責任者」や「営業所専任技術者」など、他の柱についてはまた別の記事で詳しくお伝えします。
1.「欠格要件」とは何を審査されるのか?
簡単に言えば、「建設業という責任ある仕事を任せるのに、ふさわしくない事情がないか」というチェックです。
建設工事は人命に関わり、多額の資金が動きます。
そのため、法律(建設業法)では「こういった過去や事情がある人には、許可を出せません」という項目が厳格に定められています。
大阪府の審査では、申請書に記載された役員全員の「賞罰」や「前歴」が、公的機関(警察庁など)への照会を通じて、丸裸にされます。
2.「一発アウト」となる欠格要件の具体例
建設業法第17条および第15条等に基づき、以下の大阪府の手引き項目(ア~セ)のいずれかに該当すると、許可は下りません。
- 破産して「復権」していない者(ア)
破産手続開始の決定を受けても、免責許可が確定するなどして「復権」していれば大丈夫ですが、現在進行形で破産手続中の場合は許可が受けられません。
- 過去に「許可取り消し」処分を受けた(イ・ウ・エ)
過去5年以内に建設業許可を取り消されたことがある場合、または取り消し処分を免れるために自ら廃業届けを出した場合、その日から5年間は再申請できません。
これは法人の役員や一定の使用人も対象となります。
- 営業停止期間中の者(オ・カ)
現在、他業種などで営業停止処分や禁止処分を受けている場合、その期間が終わるまで許可は受けられません。
- 禁錮以上の刑に処せられた(キ)
「禁錮」または「懲役」の刑を受け、その執行が終わってから(または受けなくなってから)5年を経過していない場合です。
※ここで非常に重要なのが「執行猶予」です。執行猶予期間中もこの要件に該当しますが、猶予期間が無事に満了すれば、直ちに欠格要件から外れます。
- 特定の法律に違反して「罰金刑」を受けた(ク)
これが最も見落としがちなポイントです。
プライベートでの「暴行(喧嘩)」や、現場での「背任(不当な利益供与)」などで罰金刑を受けていると、5年間は許可が取れません。
すべての罰金がNGではありませんが、以下の法律で罰金刑を受け、5年経っていない場合はアウトです。- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に違反した場合。
- 刑法の特定の罪:傷害罪、現場助勢罪、暴行罪、凶器準備集合罪、脅迫罪、背任罪。
- 暴力行為等処罰に関する法律に違反した場合。
- 建築基準法、都市計画法、労働基準法、職業安定法など、建設・労働に関連する法律の重要規定に違反した場合。
- 暴力団員、または暴力団員でなくなって5年以内の者(ケ・セ)
暴力団員本人はもちろん、暴力団員が実質的に事業を支配している場合も、当然ながら許可は下りません。
- 心身の故障により適正な経営ができない者(コ)
精神的な病気などで建設業を適正に営む能力がないと判断される場合です。
3.「誰」がチェックされるのか?(対象者の範囲)
ここが法人の社長様にとって最大の注意点です。
欠格要件は、社長一人の問題ではありません。
- 役員等:取締役(非常勤含む)、執行役、持ち分会社の社員など。
- 一定の使用人:支配人や支店長、営業所長など、契約を締結する権限を持つ人。
- 個人事業主:事業主本人。
もし、名前だけ貸している「非常勤取締役」に、5年以内の傷害罪での罰金歴があったとしたら……。
その一人だけの事情で、会社全体の許可申請が「不許可」になってしまうのです。
4.証明のために必要な書類と方法
「私たちは欠格要件に該当しません」と口で言うだけでは、役所は納得しません。
大阪府の申請では、以下の「証明書」を提出する必要があります。
役員等全員分の「身分証明書」
本籍地の市区町村が発行する公的な書類です(運転免許証ではありません)。
「破産者でないこと」「後見の登記がないこと」などが記載されます。
役員等全員分の「登記されてないことの証明書」
法務局が発行する、「成年被後見人・被保佐人として登記されていない」ことを証明する書類です。
欠格要件に該当しない旨の「誓約書」
法第5条第1項各号に掲げる事項のいずれにも該当しないことを、会社として誓約します。
ここに虚偽があると、後の調査で判明した際、非常に重い罰則(許可取り消しや数年間の申請禁止)が科せられます。
5.社長、申請前にこれだけは確認を!
申請を依頼される際、私が必ず社長様に問いかける「三つの質問」があります。
- 「役員の中に、過去5年以内に交通違反以外のトラブルで罰金を払った人は本当にいませんか?」
スピード違反の罰金(反則金)なら問題ありませんが、飲酒運転や事故による「罰金(刑事罰)」や、喧嘩による罰金などは、許可に直結します。
- 「名前を貸しているだけの役員の方の経歴、把握されていますか?」
親戚や知人を役員に入れている場合、その方の過去の「前歴」まで確認することが不可欠です。
- 「書類に嘘はありませんか?」
「バレなきゃ大丈夫」という考えは捨ててください。
役所の照会能力を甘く見てはいけません。
まとめ:欠格要件は「許可という看板」を支える土台
「欠格要件」という言葉は少し冷たく聞こえるかもしれません。
しかし、これは裏を返せば、「許可業者であることは、社会的に高い信頼がある証である」ということでもあります。
この土台がしっかりしているからこそ、お客様は安心して皆様に工事を任せることができるのです。
もし、「うちの役員は大丈夫かな?」と少しでも不安に思われたら、まずは本人に過去5年の経歴を率直に確認してみてください。
この一歩が、遠回りのようでいて、最短で「許可証」という黄金の看板を手に入れるための確実な道になります。
次に行うべきこと: まずは、自社の「全部事項証明書(登記簿謄本)」を開いてください。
そこに記載されている役員全員の名前をリストアップし、それぞれの本籍地を確認しましょう。
「身分証明書」と「登記されてないことの証明書」を取り寄せる準備をすることが、欠格要件をクリアするための最初の実務です。

