建設業で求められる「適切な社会保険」の加入義務
令和2年10月に施工された改正建設業法にて、「適切な社会保険」の加入が義務となりました。
労働者や若年層が安心して働ける環境を整備し、業界全体の健全化を図る狙いがあります。
また社会保険の未加入事業者は、保険料の負担がない分、不当に安価な価格で受注することが可能でした。
社会保険への加入を義務化することで、適正な価格での競争を促し、公正な競争環境を整備する狙いもあります。
この記事では「適切な社会保険」の加入義務について、建設業者様のために説明しています。
1.就労形態により「適切な社会保険」は異なる
「適切な社会保険」とは、法人や個人、常用の労働者数、就労形態により加入すべき社会保険が違います。
建設業許可で求められる社会保険とは、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の3つです。
加入義務があるのに、加入していない場合は、建設業許可の申請が通りません。
まずは、下表のとおりに就労形態により、加入すべき社会保険が異なります。
所属する事業所 | 雇用保険 | 健康保険 (いずれかに加入) | 年金保険 | ||
---|---|---|---|---|---|
形態 | 常用労働者 | 就労形態 | |||
法人 | 1人~ | 常用労働者 | 雇用保険 | ・協会けんぽ ・健康保険組合 ・適用除外承認を受けた国民健康保険組合(建設国保等) | 厚生年金 |
0人 | 役員等のみ | ー | |||
個人事業主 一人親方 | 5人~ | 常用労働者 | 雇用保険 | ・協会けんぽ ・健康保険組合 ・適用除外承認を受けた国民健康保険組合(建設国保等) | 厚生年金 |
1人~4人 | 常用労働者 | 雇用保険 | ・国民健康保険 ・国民健康保険組合(建設国保等) | 国民年金 | |
0人 | 個人事業主 一人親方 | ー | |||
※雇用保険は、週所定労働時間が20時間以上等の要件に該当する場合は、常用であるか否かは問わない。 | |||||
従業主に従業員を加入させる義務があるもの | |||||
個人の責任において加入するもの |
- 雇用保険
労働者が失業した場合や、育児・介護などで休業した場合に給付を行う保険です。
労働者を1人でも雇用していれば、原則として加入義務があります。
法人の役員や個人事業主、同居の親族のみで構成される事業所は原則適用除外です。
また労働者でも、週に20時間未満の勤務や日雇労働の場合は加入義務はありません。
- 健康保険
業務外の病気やけが、出産、死亡などに対して給付を行う保険です。
法人の場合は原則加入が義務付けられています。
個人事業主の場合は、従業員が5人以上いれば加入義務があります。
適用除外承認を受けた国民健康保険組合(国保組合)とは、健康保険の適用事業所となった事業所が、特定の条件を満たす場合に、健康保険の適用を除外され、引き続き国保組合に加入できる制度です。
建設関係の国民健康保険組合(建設国保)は、建設業に従事する方々が加入できる国民健康保険組合です。
主に、建設業に従事する個人事業主、一人親方、従業員5人未満の事業所の従業員などが対象です。
法人化した場合でも、一定の条件を満たせば、適用除外承認を受けることで継続して加入できる場合があります。
メリットとして、建設業特有の労働災害や疾病に対する保障が充実しています。
所得に関係なく年齢や家族構成などによって保険料が算出されるため、所得が多い方にとっては保険料が割安になる場合があります。
- 厚生年金保険
老後の生活保障や、障害を負った場合の保障、遺族への保障を行う保険です。
健康保険と同様に、法人は原則加入義務があり、個人事業主は従業員が5人以上いれば加入義務があります。

手続きの窓口は、次のとおりです。
雇用保険・・・ハローワーク
健康保険・厚生年金・・・年金事務所(協会けんぽ)
国民健康保険・国民年金・・・各市区町村
建設国保・・・全国建設工事業国民健康保険組合、都道府県建設国民健康保険組合など
2.建設業法における社会保険未加入に対する罰則
建設業法における社会保険未加入に対する罰則は、多岐にわたります。
主な罰則は以下の通りです。
- 建設業許可の取り消し・停止
- 建設業許可の更新が認められない、または既に交付された許可が取り消される可能性があります。
- 一定期間の業務停止命令が下されることもあります。
- 経営事項審査での減点
- 公共工事の入札参加に必要な経営事項審査において、社会保険未加入は大幅な減点対象となります。
- 公共工事からの排除
- 公共工事の入札参加資格を失う、または契約後であっても契約解除となる可能性があります。
- 国土交通省や地方自治体は、社会保険加入を徹底しており、未加入企業は排除される傾向にあります。
- 元請企業への罰則
- 元請企業は、下請企業の社会保険加入状況を確認し、指導する責任があります。
- 下請企業の未加入が発覚した場合、元請企業も罰則を受ける可能性があります。
具体的には、違約金の支払い、指名停止、工事成績評定の減点などが考えられます。
- 刑事罰
- 悪質なケースでは、刑事罰が科される可能性もあります。
例えば、虚偽の申請や、度重なる指導に従わない場合などが該当します。
- 悪質なケースでは、刑事罰が科される可能性もあります。
- その他の罰則
- 社会保険料の追徴金や延滞金が発生する可能性があります。
- 従業員やその家族から損害賠償を請求される可能性もあります。
- 企業の信用失墜による取引停止や、人材確保の困難化なども考えられます。

建設業者は、これらの罰則を十分に理解し、社会保険への加入を徹底することが重要です。
ちょっと古い情報の動画ですが、参考としてYoutube動画をアップしています。