「決算変更届」作成のポイントと重要性

建設業許可業者になると、毎年「決算変更届」を提出しなければなりません。
決算変更届とは、正式には「決算終了に伴う変更届出書」といいます。

誰でも閲覧することができるので、適当に作成してしまうと、企業のイメージダウンに繋がります。

この記事では「決算変更届」の提出期限や重要性について、建設業者様のために説明しています。

1.「決算変更届」の提出時期

「決算変更届」とは、建設業許可を取得した建設業者が、毎事業年度終了後4か月以内に許可行政庁に提出しなければならない書類です。

「事業年度終了報告」「決算報告」などと言ったりしますが、決算の変更届という書類であるため「決算変更届」と言われます。

法人の場合は、通常は決算日から2か月以内に定時総会を経て、決算が確定します。
個人の場合は、3月15日の確定申告期限に合わせて、2か月前後で決算が決まります。

そこから2か月ほどで、「決算変更届」を作成しなければなりません。
そのため税理士作成の決算書が、なかなか出来上がってこない場合だと、手続きを先に進めることができません。

決算書は、所得税や法人税などの税金が計算されます。
決算書を見ると、企業の規模や稼ぐ力などが見えます。

その決算書を、建設業簿記に置き換えて「決算変更届」を作成します。
決算変更届の目的は、発注者に自社の最新情報を公開して、広く一般に知らしめるためにあります。
経営情報と技術情報を、第三者に閲覧できるための制度です。

決算変更届によって、自社の実績や能力を広告することができます。
また得意とする工法や工事規模等を、発注者に対しアピールできる機会になります。

2.「決算変更届」の提出書類

決算変更届に必要な書類は、下記になります。

法人個人様式番号書類名称備考
府規則様式第3号変更届出書行政庁により若干様式が異なる。
省令様式第2号工事経歴書当該年度に施工した工事の実績を許可業種ごとに記載。
省令様式第3号直前3年の各事業年度における工事施工金額直前3年の事業年度ごとに、許可業種ごとに工事施工金額を記載。元請(公共)、元請(民間)、下請に分ける。
省令様式第15号貸借対照表(法人用)
省令様式第16号損益計算書、完成工事原価報告書(法人用)
省令様式第18号貸借対照表(個人用)
省令様式第19号損益計算書(個人用)
省令様式第17号株主資本等変動計算書
省令様式第17号の2注記表
省令様式第17号の3附属明細表株式会社で、資本金の額が1億円超であるもの又は直前決算の貸借対照表の負債の合計額が200億円以上である場合に提出。
任意様式事業報告書株式会社のみ必要。
納税証明書大臣許可:法人税
知事許可:事業税
省令様式第4号使用人数変更があった場合に提出。
省令様式第11号建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表変更があった場合に提出。
任意様式定款の写し変更があった場合に提出。
省令様式7号の3健康保険等の加入状況人数のみの変更は、決算変更届と合わせて提出。保険者や新規適用などは変更後2週間以内に変更届を提出。

「建設業法用財務諸表」は、税理士が作成した税務申告用の決算書を、建設業法用に書き換えて作成します。
税理士が作成した財務諸表をそのまま使用することはできません。

詳しくは、以下のページにてまとめています。

建設業財務諸表の仕組み

建設業許可の一部申請書類は、建設業法第13条により閲覧に供されることにされています。閲覧制度は、発注者が安心して建設業者を選定することができるようにとの趣旨で設…

また経営事項審査を受ける場合の工事経歴書の書き方は、以下のページにてまとめています。

経営事項審査 工事経歴書の書き方

工事経歴書は、事業年度の許可業種ごとに工事実績を記載する書類です。経営事項審査を受けない場合と違い、経営事項審査を受ける場合では特殊なルールがあります。 この記…

「納税証明書」は、当該事業年度の納税証明書を添付する必要があります。
法人か個人事業主か、許可を受けた行政庁によって提出する納税証明書が異なります。

都道府県知事許可の場合は、都府県税事務所に発行してもらいます。

  • 個人事業主 → 個人事業税の納税証明書
  • 法人 → 法人事業税の納税証明書

大臣許可の場合は、税務署に発行してもらいます。

  • 個人事業主 → 申告所得税(その1)の納税証明書
  • 法人 → 法人税(その1)の納税証明書

「工事経歴書」作成時の注意事項

  • 許可を受けた業種ごとに作成しているか
  • 完成工事高の実績がない業種でも、「実績なし」として作成しているか
  • 経営事項審査を受ける方は、課税事業者は“消費税別”で作成しているか
  • 個人情報保護の観点から、発注者欄や工事名欄の個人名は特定されないように作成しているか
  • 合計額と「直前3年の各事業年度における工事施工金額」における工事施工金額が一致しているか
  • 配置技術者は、工事期間を重複して工事現場を兼任していないか
  • 経営事項審査を受ける場合は、経審ルールで作成しているか
  • 千円未満を切り捨てる等の方法で端数処理を行い、千円単位で記載しているか
    (会社法上の大会社は百万円単位で記載)

「財務諸表」作成時の注意事項

  • 経営事項審査を受ける方は、課税事業者は“消費税別”で作成しているか
  • 千円未満を切り捨てる等の方法で端数処理を行い、千円単位で記載しているか
    (会社法上の大会社は百万円単位で記載)
  • 一般的な経理を、建設業の勘定科目に書き換えているか
  • 各財務諸表で、金額が一致しているか
    • 貸借対照表「資産合計」と、貸借対照表「負債純資産合計」
    • 貸借対照表「純資産の部」の各金額と、株主資本等変動計算書「当期末残高」の各金額
    • 損益計算書「当期純利益」と、株主資本等変動計算書「当期純利益」
    • 損益計算書「完成工事原価」と、完成工事原価報告書「完成工事原価」
    • 損益計算書「兼業事業売上原価」と、兼業事業売上原価報告書「兼業事業売上原価」
    • 損益計算書「完成工事高」と、直前三年の各事業年度における工事施工金額「合計額」
  • 建設工事に該当しない売上は、建設工事ではなく、兼業売上高として計上しているか
  • 完成工事原価報告書は、完成工事の金額を材料費、労務費、外注費、経費に振り分けているか

財務諸表の作成順位

  1. 「貸借対照表」は、「完成工事原価報告書」「兼業事業売上原価報告書」に関係ないため先に作成する。
  2. 工事に関わる「完成工事原価報告書」「兼業事業売上原価報告書(兼業があれば)」を作成する。
  3. 損益計算書、株主資本変動計算書、注記表と作成する。

3.「決算変更届」が未提出時のデメリット

決算変更届を未提出だと、以下のデメリットがあります。

  1. 建設業の更新手続きや業種追加をすることができない
    5年毎にある建設業許可の更新は、5年分の決算変更届を提出する必要があります。
    更新手続きが出来ないと、建設業許可が期限切れで取り消されます。
    また、業種追加や般特新規申請も受けることができません。
  2. 経営事項審査を受審することができない
    決算変更届が提出されていなければ、経営事項審査を受けることができません。
    その結果、入札参加資格申請も行うことができず、入札は諦めざるを得なくなります。
    また経営事項審査を受ける場合は、決算変更届の作成は特殊なルールで作成しなければなりません。
  3. 建設業法による罰則が科されるかもしれない
    決算変更届を期限までに提出しない場合、監督処分や罰則を受けることがあります。
    建設業法50条には、6カ月以下の懲役又は100万円以下の罰金またはその併科と記載されています。
  4. 取引先や金融機関から信用を失うかもしれない
    決算変更届は、発注者保護の観点という制度から、誰でも閲覧することができます。
    決算変更届が提出されていなかったり、内容がずさんだったら、取引や融資の見直しを検討されることになるかもしれません。
  5. 自社の工事実績を証明できない
    経営業務の管理責任者や専任技術者が退職で不在となった場合、決算変更届を提出していれば、工事実績を持った技術者を証明できます。
    工事経歴書で工事実績を認めてもらえるため、変更届の手続きをするだけで後継者を証明できます。
    決算変更届の提出がないと工事の確認ができないため、建設業許可を失う可能性があります。

許可行政庁に提出した申請書の副本は、絶対に無くさないようにファイルで綴じて保管してくださいね。

ちょっと古い情報の動画ですが、参考としてYoutube動画をアップしています。