建設業許可の「決算変更届」とは?

Youtube動画でも、軽く内容をアップしています。

こんにちは。
大阪府の行政書士いわた事務所です。

毎年提出する義務のある決算変更届は、誰でも閲覧することができます。
適当に作成してしまうと、企業のイメージダウンに繋がります。

この記事では、決算変更届を提出したい方に向けて説明しています。

1.「決算変更届」って何?

「決算変更届」とは、建設業許可を取得した建設業者が、毎事業年度終了後4か月以内に許可行政庁に提出しなければならない書類です。

法人の場合は、通常は決算日から2か月以内に定時総会を経て、決算が確定します。
個人の場合は、3月15日の確定申告期限に合わせて、2か月前後で決算が決まります。

そこから2か月ほどで、「決算変更届」を作成しなければなりません。
そのため税理士作成の決算書が、なかなか出来上がってこない場合だと、手続きを先に進めることができません。

決算書は、所得税や法人税などの税金が計算されます。
決算書を見ると、企業の規模や稼ぐ力などが見えます。


その決算書を、建設業簿記に置き換えて「決算変更届」を作成します。
決算変更届の目的は、発注者に自社の最新情報を公開して、広く一般に知らしめるためにあります。
経営情報と技術情報を、第三者に閲覧できるための制度です。

この決算変更届によって、自社の実績や能力を広告することができます。
また得意とする工法や工事規模等を、発注者に対しアピールできる機会になります。

そのため決算変更届は、誰でも閲覧することができるようになっています。

2.「決算変更届」の必要書類は?

決算変更届に必要な書類は、下記になります。

  1. 変更届出書
  2. 工事経歴書
  3. 直前3年の各事業年度における工事施工金額
  4. 貸借対照表(財務諸表)
    個人と法人では様式が違います
  5. 損益計算書(財務諸表)
    個人と法人では様式が違います
  6. 完成工事原価報告書(財務諸表)
    法人のみ
  7. 株主資本等変動計算書(財務諸表)
    法人のみ
  8. 兼業事業売上原価報告書
    兼業がある場合
  9. 注記表(財務諸表)
    法人のみ
  10. 附属明細書(財務諸表)
    株式会社で、資本金の額が1億円超であるもの又は直前決算の貸借対照表の負債の合計額が200億円以上である場合
  11. 事業報告書
    株式会社のみ
  12. 事業税の納税証明書
  13. 使用人数
    変更があった場合のみ必要
  14. 健康保険等の加入状況
    従業員数のみの変更があった場合。それ以外は変更届。
  15. 令3条に規定する使用人の一覧表
    変更があった場合のみ必要
  16. 定款の写し
    変更があった場合のみ必要

3.「決算変更届」作成時の注意事項

決算変更届作成時の、注意事項を説明します。

「工事経歴書」作成時の注意事項

  1. 許可を受けた業種ごとに作成すること
  2. 完成工事高の実績がない業種でも、「実績なし」として作成すること
  3. 経営事項審査を受ける方は、“消費税別”で作成すること(免税事業者は税込みで作成)
  4. 個人情報保護の観点から、発注者欄や工事名欄の個人名は特定されないように作成すること
  5. 合計額と「直前3年の各事業年度における工事施工金額」における工事施工金額が一致すること
  6. 配置技術者は、工事期間を重複して工事現場を兼任することは出来ないので注意
  7. 経営事項審査を受ける場合は、経審ルールで作成すること
    金額の大きい順に元請の工事のみを完成工事高の7割を超えるまで記載し、それでも7割に満たない場合は、金額の大きい順に下請の完成工事等を記載していきます。軽微な工事10件でも終了。
  8. 金額を記載する際は、千円未満を切り捨てる等の方法で端数処理を行い、千円単位で記載すること
    会社法上の大会社は百万円単位で記載します。

「財務諸表」作成時の注意事項

  1. 経営事項審査を受ける方は、“消費税別”で作成すること(免税事業者は税込みで作成)
  2. 金額を記載する際は、千円未満を切り捨てる等の方法で端数処理を行い、千円単位で記載すること
    会社法上の大会社は百万円単位で記載します。
  3. 一般的な経理を下記の様に、建設業の勘定科目に書き換えること
    売掛金 → 完成工事未収金
    仕掛品 → 未成工事支出金
    買掛金 → 工事未払金
    前受金 → 未成工事受入金
    売上高 → 完成工事高
    売上原価 → 完成工事原価
    売上総利益 → 完成工事総利益
  4. 各財務諸表で、金額が一致していること
    貸借対照表「資産合計」と、貸借対照表「負債純資産合計」
    貸借対照表「純資産の部」の各金額と、株主資本等変動計算書「当期末残高」の各金額
    損益計算書「当期純利益」と、株主資本等変動計算書「当期純利益」
    損益計算書「完成工事原価」と、完成工事原価報告書「完成工事原価」
    損益計算書「兼業事業売上原価」と、兼業事業売上原価報告書「兼業事業売上原価」
    損益計算書「完成工事高」と、直前三年の各事業年度における工事施工金額「合計額」
  5. 建設工事に該当しない業務の売上は、完成工事高の金額には計上せずに、兼業売上高として計上すること
    「除雪、除草、草刈、剪定、点検」などは、兼業として分ける必要があります。
  6. 完成工事原価報告書は、完成した工事の金額を材料費、労務費、外注費、経費に振り分けること

納税証明書の注意事項

納税証明書は、法人か個人事業主か、許可を受けた行政庁によって提出する納税証明書が異なります。

都道府県知事許可の場合
都府県税事務所に発行してもらいます。

  • 個人事業主 → 個人事業税の納税証明書が必要となります。
  • 法人 → 法人事業税の納税証明書が必要となります。

大臣許可の場合
税務署に発行してもらいます。

  1. 個人事業主 → 申告所得税(その1)の納税証明書が必要となります。
  2. 法人 → 法人税(その1)の納税証明書が必要となります。

財務諸表作成順位の注意事項

財務諸表作成の順序として、以下の順序で作成します。

  1. 「貸借対照表」は、「完成工事原価報告書」「兼業事業売上原価報告書」に関係ないため先に作ります。
  2. 工事に関わる「完成工事原価報告書」「兼業事業売上原価報告書(兼業があれば)」を作ります。
  3. 損益計算書、株主資本変動計算書、注記表と作っていきます。

4.決算変更届を提出しない5つのデメリット!

決算変更届を未提出だと、5つのデメリットがあります。

  1. 建設業の更新手続きや業種追加をすることができない
    5年毎にある建設業許可の更新は、5年分の決算変更届を提出する必要があります。
    更新手続きが出来ないと、建設業許可が期限切れで取り消されます。
    また、業種追加や般特新規申請も受けることができません。
  2. 経営事項審査を受審することができない
    決算変更届が提出されていなければ、経営事項審査を受けることができません。
    その結果、入札参加資格申請も行うことができず、入札は諦めざるを得なくなります。
    また経営事項審査を受ける場合は、決算変更届の作成は特殊ルールで作成しなければなりません。
  3. 建設業法による罰則が科されるかもしれない
    決算変更届を期限までに提出しない場合、監督処分や罰則を受けることがあります。
    建設業法50条には、6カ月以下の懲役又は100万円以下の罰金またはその併科と記載されています。
  4. 取引先や金融機関から信用を失うかもしれない
    決算変更届は、発注者保護の観点という制度から、誰でも閲覧することができます。
    新たに取引を始める場合、相手先が閲覧資料を確認することは十分に考えられます。
    決算変更届が提出されていなかったり、内容がずさんだったら、取引や融資の見直しを検討されることになるかもしれません。
  5. 自社の工事実績を証明できない
    経営業務の管理責任者や専任技術者が退職で不在となった場合、決算変更届を提出していれば、工事実績を持った技術者を証明できます。
    工事経歴書で工事実績を認めてもらえるため、変更届の手続きをするだけで後継者を証明できます。
    決算変更届の提出がないと工事の確認ができないため、建設業許可を失う可能性があります。

5.気を付けるべき点

決算変更届を適当に作成すると、行政庁から建設業法違反を疑われてしまう場合があります。
配置技術者には、専任技術者や兼任ができないルールがあったりします。

また財務諸表も、単に決算書を転記するだけのものではありません。
建設業簿記への組み換え、消費税の切り替えなど、面倒な作業をしなければなりません。

決算変更届をきちんと作成して提出すれば、自社の実績や能力を発注者に対しアピールすることができます。