建設業許可の財産的要件とは?

軽く、Youtubeでも動画をアップしています。

こんにちは。
大阪府吹田市の行政書士いわた事務所です。

建設業許可取得の要件のひとつに、「財産的要件」があります。

建設工事は公共性が高く、工期も長期化することが多く、発注者保護の観点としても要件として設けています。

この記事では、建設業許可を受けたい方に向けて説明しています。

1.一般建設業の財産的要件

財産的要件は「一般建設業許可」を取得する時と、「特定建設業許可」を取得する時とでは異なります。
まずは、一般建設業許可の財産的要件は、以下のいずれかに該当する必要があります。

  • 直前の決算において「自己資本」の額が、500万円以上あること
    個人事業主:自己資本=「期首資本金」+「事業主借」+「事業主利益」-「事業主貸」
    法人:自己資本=「資産合計」 - 「負債合計」
    新設法人は、「資本金」と同じになります。
    最初の決算期をまだ迎えていない会社であれば、「開始貸借対照表」を作成します。

    貸借対照表でいえば、自己資本とは「純資産合計」です。
  • 金融機関の預金残高証明書で、「500万円以上の資金を調達する能力」があること
    残高証明書の発行日ではなく、証明日が4週間以内でということなので気を付けましょう。
    残高証明書とは、預金通帳のコピーではないので注意してください。
  • 過去5年間許可を継続して営業した実績があること
    一般建設業の更新では、5年間倒産することなく営業出来たので、財産的要件を満たしているとみなされます。
    新規許可を取得する場合は、資金調達力の証明が必要です。
    また許可を取得してから、更新を1度もしたことが無く業種追加をする場合も、資金調達力を証明する必要があります。

2.特定建設業の財産的要件

特定建設業者では、一般建設業に比べて大規模な工事を請負うことになります。
そのため発注者や下請業者を保護し連鎖倒産を防ぐために、財産要件は厳しいものになります。

特定建設業許可の財産的要件は、以下の全てに該当する必要があります。

  • 「欠損の額」が、資本金の額の20%を超えていないこと
    「欠損の額」とは、赤字が出て資本金の一部を減らしている状態です。
    資本金が2,000万円だと、20%の400万円までの赤字ならクリアできます。
    個人事業主:欠損比率 = 事業主損失 - (事業主借勘定 - 事業主貸勘定 + 利益留保性引当金 + 準備金)÷ 期首資本金額 × 100%
    法人:欠損比率 = 繰越利益剰余金額 - (資本剰余金+利益準備金+繰越利益剰余金を除いたその他利益剰余金) ÷ 資本金 × 100%

    法人で以下のケースに該当するときは、欠損額が発生しないので、欠損比率を求める必要はありません。
    (1) 繰越利益剰余金がマイナスではない
    (2) 繰越利益剰余金がマイナスでも、(資本剰余金+利益準備金+繰越利益剰余金を除いたその他利益剰余金)の合計額が上回る
  • 「流動比率」が75%以上であること
    流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100%
    この計算式によって求められた流動比率が、申請直前の決算において75%以上であることが必要です。
貸借対照表
貸借対照表
  • 「資本金」の額が2,000万円以上あること
    株式会社 ⇒ 払込資本金
    特例有限会社 ⇒ 資本の総額
    合資会社、合名会社 ⇒ 出資金額
    個人事業主 ⇒ 期首資本金

    申請直前の決算の貸借対照表で、2,000万円以上を満たしていなくても、申請時までに増資することにより資本金額の要件を満たせばOKです。
    商業登記簿謄本に、資本金2,000万円以上の登記が必要です。
貸借対照表
貸借対照表
  • 「自己資本」の額が4,000万円以上あること
    個人事業主:自己資本額 = (期首資本金 + 事業主借勘定 + 事業主利益)- 事業主貸勘定 +(利益留保性の引当金 + 準備金)
    法人:自己資本額 = 純資産の合計額

設立後、1度も決算期をむかえていないときは、開始貸借対照表の資本金が2,000万円以上あり、資本準備金とあわせた合計自己資本額が4,000万円以上あれば、特定建設業許可の財産的基礎の要件を満たしたことになります。

自己資本額が、申請直前の決算において4,000万円以上であることが必要です。

貸借対照表
貸借対照表

3.気を付けるべき点

特定建設業許可の財産的基礎の要件は、5年に1度の更新申請で毎回審査されます。
更新時に要件が欠けてしまうと、特定建設業の許可更新ができず、一般建設業の許可を新規で取り直すことになります。

特定建設業の更新申請では、決算内容が悪くても更新申請までに回復していれば取消しになることはありません。
もし特定建設業の更新申請時に、決算内容を回復できないのであれば、般特新規申請で一般建設業許可に切り替えておきましょう。