財産的基礎って何?建設業許可の要件を行政書士が解説
建設業許可を取得する際に、「財産的基礎」という言葉を耳にされた方もいらっしゃるかと思います。
「これって一体何のこと?」と疑問に思われるのも当然ですよね。
この記事では、「財産的基礎」という要件について、皆さまに分かりやすく、そして優しく詳しくご説明させていただきます。
1.「財産的基礎」って、つまりどういうこと?建設業許可に大切な理由
建設業許可の要件の一つである「財産的基礎」とは、簡単に言うと「工事をきちんと完成させるだけの、そして万が一何かあった時にも対応できるだけの、しっかりとしたお金の基盤があること」を指します。
なぜこのような要件があるかというと、建設工事は、時に数千万円、数億円といった大きな金額が動くプロジェクトです。
もし、建設業者さんの財政状況が不安定で、工事の途中で資金繰りに行き詰まってしまったらどうなるでしょう?
- 工事が中断してしまい、発注者様にご迷惑がかかります。
- 材料費や下請けさんへの支払いが滞り、多くの方に影響が出てしまいます。
このような事態を防ぎ、発注者様や下請け業者さん、そしてひいては社会全体の信頼を守るために、この「財産的基礎」という要件が設けられているのです。
2.「一般」と「特定」でこんなに違う!それぞれの「財産的基礎」の要件
建設業許可には「一般建設業許可」と「特定建設業許可」の2種類があり、それぞれの許可で求められる「財産的基礎」の基準が大きく異なります。
ご自身の取得したい許可に合わせてご確認くださいね。
- 一般建設業許可の「財産的基礎」
一般建設業許可の場合、財産的基礎の要件は比較的緩やかです。
以下のいずれかの条件を満たせばOKです。
新規で一般建設業許可を取得される方の多くは、最初の自己資本500万円以上、または500万円の資金調達能力のどちらかで要件を満たすことになります。
- 自己資本(純資産)が500万円以上あること
- 会社の貸借対照表(バランスシート)の「純資産の部」の合計額が500万円以上であることを指します。
- または、500万円以上の資金調達能力があること
- 例えば、金融機関から発行される「預金残高証明書」で500万円以上の残高が確認できる場合などが該当します。この残高は、申請時点だけでなく、許可取得後も一定期間維持できる見込みがあることが重要です。
- または、過去5年間、継続して建設業許可を受けて営業した実績があること
- すでに許可をお持ちで、更新される方や、業種追加をされる方で、この条件を満たす場合も大丈夫です。
- すでに許可をお持ちで、更新される方や、業種追加をされる方で、この条件を満たす場合も大丈夫です。
- 自己資本(純資産)が500万円以上あること
- 特定建設業許可の「財産的基礎」
特定建設業許可は、元請けとして大規模な工事を下請けに出す場合に必要となる許可です。
そのため、下請け業者さんを確実に保護できるよう、一般建設業許可よりもはるかに厳しい財産的基礎の要件が定められています。
以下の数字は、確定申告書に添付されている「貸借対照表」や「損益計算書」などの財務諸表で確認されます。特に特定建設業許可を目指される場合は、日頃から財務状況を健全に保つことが非常に重要になりますね。- 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
- 繰越利益剰余金がマイナス(欠損)の場合に、その額が資本金の20%を超えていないかを確認します。
- 流動比率が75%以上であること
- 「流動資産」を「流動負債」で割ったものが75%以上であること。
短期的な支払い能力があるかを見る指標です。
- 「流動資産」を「流動負債」で割ったものが75%以上であること。
- 資本金の額が2,000万円以上であること
- 会社の登記上の資本金の額が2,000万円以上であることを指します。
- 自己資本(純資産合計)の額が4,000万円以上であること
- 会社の貸借対照表(バランスシート)の「純資産の部」の合計額が4,000万円以上であることを指します。
- 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
3.「財産的基礎」のクリアは、信頼の証!ご準備のポイント
「財産的基礎」の要件をクリアすることは、皆さまの会社が経済的に安定しており、建設工事を責任を持って遂行できる能力があることの証明になります。
- 新規で許可を検討される方へ
まずはご自身の会社の現在の財務状況を確認し、どの許可を目指すのか、そのためにはどのような準備が必要かを確認しましょう。
預金残高を証明書として提出する場合は、申請前に慌てて入金するのではなく、計画的に資金を準備し、一定期間その残高が維持されている状態が望ましいです。
- 決算期の見直しも大切
特定建設業許可を目指す場合、決算期の財務状況が直接要件に影響します。
もし要件を満たせない決算期を迎えてしまった場合、その決算期では許可申請が難しくなりますので、日頃からの資金管理と合わせて、決算月の検討も一つのポイントになります。
財産的基礎の要件は、建設業を営む上で大変重要な基盤となります。
許可取得はゴールではなく、新たなスタートラインです。
この情報が、あなたの事業の発展に少しでも貢献できれば幸いです。

