大きな工事への第一歩!「特定建設業」の専任技術者ルールをやさしく解説

今回は、大きな仕事を狙うなら避けて通れない「特定建設業」のお話です。
特に、その要件となる「専任技術者(営業所にずっといて、技術の責任を持つ人)」について解説します。

「特定」の許可は、普通の許可よりもハードルがぐっと上がります。
初心者でも「なるほど!」と思える言葉で、一歩ずつ丁寧に解説します。

1.特定建設業って、どんなときに必要なの?

まず、なぜ「特定」という特別な許可があるのかをお話しします。
それは、大きな工事を「元請(お客さまから直接仕事を請ける人)」として受けるためです。

具体的には、下請けに出す代金の合計が「5,000万円以上」になるときに必要になります。
(建築一式工事の場合は、8,000万円以上です。)
これほど大きなお金を動かす工事では、もし会社が倒産したら大変です。
たくさんの下請け業者が巻き込まれて、連鎖倒産が起きるかもしれません。

そんな悲劇を防ぐために、国は「元請には高い技術力と、たっぷりのお金が必要だ」と決めました。
その技術力の証明こそが、今回お話しする「特定建設業の専任技術者」なのです。

2.特定の「専任技術者」になれるのはどんな人?

特定の許可を取るためには、各営業所に「すごい技術者」を置かなければなりません。
建設業法第15条第2号では、次の3つのうちどれかに当てはまる人と決まっています。

  • イ:国家資格を持っている人
    1級施工管理技士(工事の指揮ができる一番上の資格)などの合格者です。
  • ロ:すごい経験(指導監督的な実務経験)がある人
    資格がなくても、大きな現場でリーダーとして2年以上働いた経験がある人です。
  • ハ:国が認めた特別な能力がある人
    大臣が「イやロの人と同じくらいすごい!」と認めてくれた人です。

ただし、ここで一つ大きな注意点があります。
それは「指定建設業」というルールです。

指定建設業の7業種は「資格」が絶対!
次の7つの業種で特定の許可を取りたいときは、上記「ロ」の経験だけでは認められません。
必ず「1級の国家資格」などを持つ人を置く必要があります。

  1. 土木工事業
  2. 建築工事業
  3. 電気工事業
  4. 管工事業
  5. 鋼構造物工事業
  6. 舗装工事業
  7. 造園工事業

これらの業種は、社会への影響がとても大きいため、より厳しいルールになっているのです。

3.「指導監督的な実務経験」って何のこと?

先ほどの「ロ」に出てきた「指導監督的な実務経験」について深掘りしましょう。
これは、ただ現場で働いていただけでは認められません。
以下の条件をすべて満たす、ハイレベルな経験のことです。

  • 発注者から直接請け負った工事であること
    下請けとしての経験は、残念ながらカウントされません。
  • 1件の請負代金が4,500万円以上であること
    (※昔の工事の場合は、1,500万円や3,000万円といった基準もあります。)
  • 現場監督のような立場で、技術面を総合的に指導した経験であること
    設計から施工まで、全体を「教えながら見守る」役割だったかどうかが問われます。
  • その経験が合計で「2年以上」あること

この証明をするためには、当時の契約書や注文書をしっかり残しておく必要があります。

4.経営者が知っておくべき「技術者不足」の落とし穴

「今は技術者がいるから大丈夫だ」と思っていても、油断は禁物です。
建設業法第3条第6項(許可の効力についての決まり)に関連する、怖いお話をします。

例えば、大阪の本店で「特定」の許可、京都の支店で「一般」の許可を持っていたとします。
もし、大阪本店のすごい技術者が急に辞めてしまい、代わりの人が見つからなかったらどうなるでしょうか。

「本店だけ一般に下げればいいや」と安易に考えてはいけません。
許可を「特定」から「一般」に切り替える(許可換え新規申請)と、その手続きの間、支店の許可もすべてストップしてしまう可能性があるのです。
そうなると、支店では「軽微な工事(500万円未満の小さな工事)」すらできなくなります。

本店の「特定」の要件が崩れて、一般に下げなければならなくなったとします。
このとき、「大阪本店だけ書類を書き換えれば終わり」とはいかないのです。

法律上、一度「許可のセット」をすべて解体して、新しく作り直す手続きが必要になります。
これを「許可換え新規」と呼ぶのです。

ここが一番のポイントです。
新しく「知事許可」などを取り直す際、手続きには一定の時間がかかります。

この「空白期間」は、法律上は「無許可」の状態です。
たとえ今までバリバリ仕事をしていた支店であっても、この期間は「建設業者」として名乗ることができなくなります。

「許可がなくても、500万円未満の軽い工事ならやっていいはずでは?」と思われますよね。
確かに、もともと許可を持っていない「未登録の業者さん」なら、小さな工事は自由にできます。

しかし、「一度許可を持っていたのに、要件を欠いて許可がなくなった会社」は話が別です。
ルールを守れずに許可を失った(または取り下げた)状態のまま、こっそり営業を続けることは非常に厳しくチェックされます。

特に、公共工事(国や市役所の仕事)に入っている場合や、大きな元請会社と契約している場合は深刻です。
「今、うちは許可の切り替え中なので無許可です」という状態では、たとえ10万円の修理工事であっても、コンプライアンス(法令遵守)の面から、相手先が契約を結んでくれない可能性が非常に高いのです。

大きな仕事はある日突然やってきます。
逆に、大切な技術者もある日突然いなくなるかもしれません。
常に「次のリーダー」を育てておくことが、会社を守る一番の秘訣です。

5.注意!「名義貸し」は絶対にダメです

「技術者が足りないから、名前だけ借りよう」 そんな誘惑があるかもしれませんが、これは絶対に、絶対にやってはいけません。

過去の裁判(東京地裁 平成29年9月13日判決)でも、厳しい判断が出ています。
名義を貸した人が「給料を払え」と訴えた事件がありましたが、裁判所はこう言いました。
「名義貸しは建設業法をすり抜ける行為であり、言語道断だ」

たとえ報酬を払う約束をしていても、そんな契約は「公序良俗(社会のまともなルール)」に反して無効になります。
お金のトラブルになるだけでなく、会社も重い処分を受けてしまいます。

6.実際にあった「失敗」の事例から学びましょう

ルールを守らなかったために、役所から「指示処分(改善しなさいという命令)」を受けた事例をご紹介します。

事例1:技術者が不在なのに放置した
技術者が辞めてしまったのに、2週間以内に届け出を出さず、そのまま仕事を続けていたケースです。 (建設業法第11条第5項違反)
「代わりの人が見つかってから報告すればいいや」は通用しません。

事例2:技術者が遠くの現場に行きっぱなし
「営業所の専任技術者」は、文字通りその営業所に「専任(もっぱらその仕事に集中すること)」していなければなりません。
遠くの現場にずっと泊まり込みで作業をしていた場合、「営業所にいないじゃないか」と判断されて処分を受けました。

7.まとめ:強い会社を作るために

特定建設業の専任技術者のルールをまとめます。

  • 特定は「下請けに5,000万円以上払う」大きな工事に必要です。
  • 指定7業種は、必ず「1級の国家資格者」などが必要です。
  • 経験で証明する場合は、元請としての「指導監督的な経験」が2年以上必要です。
  • 技術者が1日でも欠けると、許可の条件を満たさなくなります。
  • 名義貸しは、会社を滅ぼす「公序良俗違反」です。

技術者の確保は、一朝一夕(短い時間)にはできません。
売上を伸ばす計画と同じくらい、技術者を育てる計画も大切にしてください。
「うちの技術者で特定の許可は取れるかな?」と、一度社内の戦力を分析してみることをおすすめします。

みなさまの会社が、大きなチャンスを逃さず、さらなる高みへ羽躍(勢いよく飛び上がること)することを心から願っております。

📚 参考になる条文・書類

  • 建設業法 第15条 第2号(専任技術者の要件)
  • 建設業法施行令 第5条の2(指定建設業の定義)
  • 建設業法施行令 第2条(建築一式の金額ルール)
  • 実務経験証明書(様式第9号)
  • 専任技術者証明書(様式第8号)

もしお手元に今の許可書類があれば、ぜひ有効期限や技術者の名前を確認してみてください。
これからも、経営者のみなさまに寄り添った、わかりやすい情報をお届けしていきます。