主任技術者・監理技術者の配置義務、違反するとどうなる?行政書士が解説する罰則

建設工事を進める上で、主任技術者監理技術者という言葉を耳にされるかと思います。

これらの技術者は、工事の品質や安全を確保するために、法律で配置が義務付けられている、とても大切な存在なんです。

「でも、具体的にどんな役割で、もし配置しなかったらどうなるんだろう?」

この記事では、そんな疑問をお持ちの建設業の皆様のために、優しい言葉で詳しく解説させていただきますね。

1.「主任技術者・監理技術者って何?なぜ必要なの?」〜それぞれの役割と義務の目的〜

まず、主任技術者と監理技術者が、それぞれどのような役割を担っているのかをご説明しますね。

【主任技術者とは?】

主任技術者は、元請・下請にかかわらず、すべての建設工事現場に必ず配置しなければならない技術者です。

主な役割は、その工事が適切に進められているか、品質は確保されているか、安全に作業が行われているかなどを、技術的な側面から管理・監督することです。

言わば、現場の技術的なリーダーのような存在ですね。

【監理技術者とは?】

監理技術者は、発注者から直接請け負った建設工事のうち、下請契約の合計額が5,000万円以上(建築一式工事の場合は8,000万円以上)になるような大規模な工事に配置が義務付けられる技術者です。

令和7年(2025年)2月1日から、特定建設業の許可基準に合わせて、監理技術者の配置が必要となる下請契約の合計額が引き上げられました。

主任技術者の役割に加えて、下請負人が適切に工事を行っているかどうかの総合的なマネジメントも行います。

大規模工事の「司令塔」として、全体の調整役も担う、より責任の重い役割と言えるでしょう。

監理技術者の配置義務

【なぜ必要なの?〜義務の目的〜】

これらの技術者の配置が義務付けられているのは、一言で言えば「建設工事の品質・安全性を確保するため」です。

専門的な知識と経験を持った技術者が現場を管理することで、手抜き工事を防ぎ、事故を未然に防ぎ、そして最終的には、依頼主様にご満足いただける高品質な建物を完成させることを目指しています。

法律で厳しく定められているのは、それだけこれらの役割が重要視されているからなんですね。

2.「配置義務を怠るとどうなるの?」〜知っておくべきペナルティ〜

もし、法律で定められた主任技術者や監理技術者の配置義務を守らなかった場合、どのようなことになるのでしょうか。

優しい言葉でご説明しますが、決して軽視できない罰則がありますので、しっかりとご理解くださいね。

【建設業法上の罰則】

  • 営業停止処分や許可の取り消し: 最も重い罰則として、建設業の許可を取り消されたり、一定期間の営業停止処分を受けたりする可能性があります。これは、建設業を続ける上で非常に大きな痛手となります。
  • 指示処分・業務改善命令: まずは、行政庁から「配置義務を守りなさい」といった指示が出され、それでも改善が見られない場合には、業務改善命令が出されることがあります。
  • 罰金刑: 建設業法には、主任技術者・監理技術者の不適切な配置に対して、「100万円以下の罰金」といった罰則規定が設けられています。

【工事請負契約上の問題】

  • 契約解除のリスク: 発注者(工事を依頼した方)から、配置義務違反を理由に工事請負契約を解除されてしまう可能性があります。
  • 損害賠償請求: 配置義務違反によって工事に問題が生じたり、工期が遅れたりした場合、発注者から損害賠償を請求されることも考えられます。

【社会的な信用失墜】

  • 企業のイメージダウン: 法令違反は、企業の信用を大きく損ないます。これは、今後の受注や人材確保にも悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 指名停止措置: 公共工事の入札に参加されている場合、配置義務違反が発覚すると、一定期間の指名停止措置を受けることがあります。

これらのペナルティは、単にお金の問題だけでなく、事業の継続そのものに影響を及ぼす可能性があります。

だからこそ、配置義務は「知らなかった」では済まされない、大切なルールなのです。

3.「違反しないために、どうすればいいの?」〜適切な配置のためのポイント〜

では、このような厳しいペナルティを受けないために、私たちはどうすれば良いのでしょうか。いくつかポイントをお伝えしますね。

【工事の種類と規模に応じた技術者の選定】

  • 適切な資格保有者の確認: 主任技術者・監理技術者となるためには、それぞれの工事に応じた一定の実務経験や国家資格が必要です。工事に着手する前に、必ず適切な資格を持っている技術者を配置できるか確認しましょう。
  • 専任性の確認: 原則として、主任技術者・監理技術者は、その工事に「専任」でなければなりません。つまり、他の工事と掛け持ちすることはできないということです。ただし、一定の条件を満たせば兼任が認められるケースもありますので、事前に確認が必要です。
  • 主任技術者の兼任緩和の特例: 令和6年4月1日より、一定の条件(監理技術者が監理技術者補佐を配置する等)を満たすことで、監理技術者が主任技術者を兼任できる特例が適用されています。これは、技術者不足の解消に資する措置ですが、適用条件をしっかり確認することが重要です。

【配置計画の事前確認と書類整備】

  • 工事契約前の計画: 工事契約を結ぶ前に、どのような技術者を、いつからいつまで配置するのか、具体的な計画を立てましょう。
  • 施工体制台帳の作成: 建設業法に基づき、主任技術者や監理技術者の情報を含む「施工体制台帳」を適切に作成し、現場に備え付けておく必要があります。
  • 変更時の速やかな手続き: 配置する技術者に変更があった場合は、速やかに必要な手続きを行い、関係各所に報告しましょう。

4.主任技術者・監理技術者の「兼任」が認められるケース

建設工事の現場を適切に管理するため、主任技術者や監理技術者は原則として「専任」、つまりその工事に専属で従事することが求められます。

令和6年4月1日、そして令和7年2月1日に施行される建設業法の改正によって、技術者不足への対応として、兼任が認められる範囲が広がったり、明確化されたりしています。

一定の条件を満たす場合には、複数の工事を兼任することが認められています。

主な兼任が認められるケースは以下の通りです。

(1)工事の規模が小さい場合(専任義務が生じない工事の兼任)

主任技術者や監理技術者が専任でなければならない工事の規模には基準があり、その基準を下回る工事であれば、兼任が可能です。

  • 主任技術者の場合
    • 工事一件の請負金額が4,500万円未満(建築一式工事の場合は9,000万円未満)の工事は、原則として専任義務がありません。
      この場合、主任技術者は複数の工事を兼任できます。
      ただし、「適正な施工管理ができる範囲」という条件があり、一般的には3件まで、かつ地理的に近接している(例えば、直線距離で20km以内など)ことが求められます。
  • 監理技術者の場合
    • 発注者から直接請け負った工事で、下請契約の合計額が5,000万円未満(建築一式工事の場合は8,000万円未満)であれば、監理技術者の配置義務そのものがなく、主任技術者の配置となります。
      監理技術者が配置される工事は、そもそも専任義務のある大規模な工事であることが多いため、この「規模が小さい」という理由での兼任はあまり該当しません。

(2)情報通信技術(ICT)などを活用した遠隔施工管理を行う場合(専任特例1号)

これは、比較的新しい制度で、専任が求められる工事であっても、特定の条件を満たせば兼任が認められるようになりました。

  • 対象となる工事
    • 工事一件の請負金額が1億円未満(建築一式工事の場合は2億円未満)の工事。
  • 兼任の要件
    • 情報通信技術(ICT)を活用し、現場の状況をリアルタイムで確認できる体制が整っていること(例えば、WEBカメラや遠隔会議システムなど)。
    • 現場に主任技術者または監理技術者との連絡調整を行う「補助者」(実務経験1年以上)を配置すること。
    • 兼任する工事現場の数が2つまでであること。
    • 主任技術者・監理技術者が、各現場を適切に巡回できる範囲であること。災害時など緊急時には速やかに現場に駆けつけられる体制が求められます。

この特例は、離れた現場でも技術者が効率的に管理できるようになり、建設業界の人手不足解消にも貢献すると期待されています。

(3)監理技術者補佐を配置する場合(専任特例2号)

監理技術者が、複数の工事を兼任する場合に利用できる特例です。

  • 要件
    • 監理技術者が管理するそれぞれの工事現場に、「監理技術者補佐」を専任で配置すること。
    • 監理技術者補佐は、監理技術者の指導のもと、技術上の管理業務を適切に行える能力があることが求められます。
    • この場合、監理技術者は2件まで工事を兼任できます。

この特例は、特に規模の大きな工事で、監理技術者の負担を軽減しつつ、工事全体の品質を保つために設けられています。

(4)営業所の営業所技術者が現場の技術者を兼任する場合

これまで、営業所に配置される専任技術者(「営業所技術者等」に名称変更)は、原則として現場の主任技術者・監理技術者を兼務することは認められていませんでした。

しかし、令和6年12月13日以降は、一定の要件を満たせば兼務が可能となります。

  • 要件
    • 上記「専任特例1号」の要件と同様に、情報通信技術(ICT)の活用や補助者の配置など、適切な施工管理ができる体制が整っていること。

(5)現場代理人との兼任

主任技術者や監理技術者は、現場代理人を兼任することができます。

ただし、その場合でも、それぞれの職務を適切に果たせる範囲内であることが前提となります。

また、兼任することで、上記(1)~(4)の兼任可能な工事数の上限に影響する場合もありますので注意が必要です。

5.下請業者の主任技術者の配置免除(特定専門工事の場合)

建設業法では、原則としてすべての建設工事に主任技術者の配置が義務付けられていますが、特定の条件を満たす場合には、下請業者の主任技術者の配置が免除される特例があります。

これは「特定専門工事」に関する規定です。

「特定専門工事」とは、専門工事業者が行う特定の工事で、一定の条件を満たす場合に、元請業者の主任技術者または監理技術者が、その専門工事について技術上の管理を行うことで、下請業者の主任技術者の配置が不要となる制度です。

  • 対象となる工事と条件
    • 対象工事の種類
      • 型枠工事
      • 鉄筋工事
    • 下請契約の金額
      • 元請業者がその特定専門工事について締結した下請契約の請負代金の額(下請契約が2以上あるときはその合計額)が4,500万円未満であること。
        ※注意点: 以前は4,000万円未満でしたが、令和7年(2025年)2月1日から4,500万円未満に引き上げられました。
    • 元請業者の要件
      • 元請業者が、当該特定専門工事について、国土交通大臣が定めた基準に従い、技術上の管理を行うこと。
      • 具体的には、元請業者の主任技術者または監理技術者が、その専門工事の施工について十分な知識・経験を有し、かつ適切に指導・管理できる体制が整っている必要があります。

この制度は、専門工事の分野において、元請業者の管理能力が十分であれば、下請業者にも主任技術者を重複して配置する負担を軽減し、工事全体の効率化を図ることを目的としています。

特に、専門性の高い型枠工事や鉄筋工事において、元請がしっかりと管理することで、下請の負担を減らしつつ、品質や安全を確保しようという考え方です。

この免除を受けるためには、元請業者が上記の条件を満たしていることを確認し、適切な体制を整える必要があります。

具体的な手続きや書類については、管轄の行政庁(都道府県庁の建設業担当部署など)に確認することが重要です。

これらのルールは、工事の種類、規模、技術者の資格、そして会社の状況によって適用可否が異なります。

特に法改正後は、新しいルールを正しく理解し、適用することが重要です。

この情報が、あなたの事業の発展に少しでも貢献できれば幸いです。