建設業財務諸表の仕組み
建設業許可の一部申請書類は、建設業法第13条により閲覧に供されることにされています。
閲覧制度は、発注者が安心して建設業者を選定することができるようにとの趣旨で設けられました。
建設業財務諸表も閲覧することができ、毎年提出が義務づけられている『決算変更届』でも活用されます。
建設業財務諸表をなんとなくで済ませて、提出をされていませんか?
この記事では、『建設業財務諸表』の作成ポイントをまとめています。
1.建設業財務諸表の仕組み
建設業財務諸表は、次の書類から成り立っています。
法人の場合
- 貸借対照表(様式第15号)
- 損益計算書及び完成工事原価報告書(様式第16号)
- 兼業事業売上原価報告書(様式第25号の12)
- 株主資本等変動計算書(様式第17号)
- 注記表(様式第17号の2)
- 附属明細書(様式第17号の3)
※ 株式会社で資本金の額が1億円超であるもの又は直前決算の貸借対照表の負債の合計額が200億円以上である場合に必要) - 事業報告書(任意書式)
※ 株式会社のみ
個人の場合
- 貸借対照表(様式第18号)
- 損益計算書(様式第19号)
建設業財務諸表でメインの書類は、「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」の3つの様式です。
「完成工事原価報告書」「兼業資本等変動原価報告書」は、損益計算書から抜き出して詳細に説明している様式になります。
「注記表」は会計ルールについての補足説明、「附属明細表」は規模の大きな企業の資産や負債などの補足資料、「事業報告書」は事業活動の総括になります。


建設業財務諸表の全体像を理解することは、企業の数字を把握する第一歩だね。
2.貸借対照表(B/S)の仕組み
「貸借対照表」は、年度末時点での会社の財政状況を示す書類です。

貸借対照表の左側は、調達してきたお金をどのように運用しているのかを記載します。
短期で利益回収につながる「流動資産」と、長期で利益回収につながる「固定資産」から成り立ちます。
貸借対照表の右側の上に「負債」を記載します。
「負債」は他人から集めたお金であり、返さなければならないお金です。
短期で返済する「流動負債」と長期で返済する「固定負債」から成り立ちます。
貸借対照表の右側の下に「純資産」を記載します。
「純資産」は自分で集めたお金であり、返す必要がないお金です。(自己資本)
自分で出資し、または集めた「資本金」と、今までの利益の積み重ね「利益剰余金」で成り立ちます。

貸借対照表は、どのようにお金を調達し、お金を運用しているかをまとめたものなんだね。
『貸借対照表』のつくり方は、以下のページにてまとめています。
3.損益計算書(P/L)の仕組み
「損益計算書」は、会社の経営成績を示す書類です。
お金を調達、運用、収益、費用を要し、結果として利益がいくら残るのかを表しています。

「売上高」から「売上原価」を差し引いたものが「売上総利益」になります。
「売上原価」は、売上高の直接対応する費用です。
「売上総利益」は一般的には「粗利」と呼ばれています。
ここが赤字だと、ビジネスが成り立っていないことを意味します。
「売上総利益」から「販売費及び一般管理費」を差し引いたものが「営業利益」です。
「販売費及び一般管理費」は、通常の営業活動にかかった費用で、一般的に「販管費」と略されます。
「営業利益」は、通常の営業活動で自社がどれだけ儲かったのかを表す利益です。
ここが赤字だと、広告宣伝費などの経費の見直しが必要となります。
「営業利益」から「営業外収益」をプラスし、「営業外費用」をマイナスしたものが「経常利益」です。
本業の事業活動に不随して、経常的に生ずる収益と費用を加味して、事業全体の儲かり具合を表します。
ここが赤字だと、本業以外の事業がうまくいっていない可能性があります。
「経常利益」から特別な要因で発生した収益と費用を加味したものが、「税引前当期純利益」です。
税金を引く前の利益で、法人税、住民税及び事業税の計算のもとになる利益です。
「税引前当期純利益」から、税金を差し引いたものが「当期純利益」です。
当期純利益は、配当等で外部に出なければ、次期の「繰越利益剰余金」になります。

損益計算書をブロック図で理解することで、理解が早まるよ。
『損益計算書』のつくり方は、以下のページにてまとめています。
4.B/SとP/L以外の仕組み
『株主資本等変動計算書』は、貸借対照表と損益計算書の2つを結び付けています。
期首(前期末)の純資産が、当期の事業活動を経てどのように増減したか、株主の配当金等の資本流出の有無を計算し、最終的に当期末の純資産の残高がいくらになったのかを表します。
『株主資本等変動計算書』のつくり方は、以下のページにてまとめています。
『完成工事原価報告書』は、事業年度中に完成した工事の原価である材料費、労務費、外注費、経費の内訳を明らかにする書類です。
損益計算書の完成工事原価の内訳を報告するものです。
『完成工事原価報告書』のつくり方は、以下のページにてまとめています。
『注記表』は、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書を正確に判断するために、必要な会計方針などの情報を記載した書類です。
『注記表』のつくり方は、以下のページにてまとめています。
『附属明細表』は特例有限会社を除く株式会社で、資本金の額が1億円超であるもの又は直前決算の貸借対照表の負債の合計額が200億円以上である場合に提出が必要です。
かなり大きな会社のみが提出する書類になり、ほとんど建設業者は提出義務はありません。
相手先や金額などを網羅する書類になります。
網羅するのはかなり大変な作業となるため、有価証券報告書を代用できるかどうか、許可行政庁に確認するのがよいでしょう。
『事業報告書』は特例有限会社を除く株式会社のみ作成が必要です。
様式は任意となっており、その期における事業の概況、会社の概況、決算期後に生じた会社の状況について詳細を記載します。
大阪府ではサンプルの様式をダウンロードできるため、それを活用してもよいでしょう。