1年間の「お財布」をのぞき見!損益計算書(P/L)で稼ぐ力を診る方法

今回は、「損益計算書」について深掘りしていきます!

貸借対照表が「今の筋肉量」なら、損益計算書は「この1年間、どう動いて、どれだけエネルギーを燃やしたか」という「活動の記録」です。

「一生懸命働いたけど、結局いくら手元に残ったの?」
その答えが、この書類の中にすべて隠されています。

1.損益計算書って、どんな「会社の成績表」?

損益計算書は、1年間という期間で区切った、会社の「経営成績」を示す書類です。
英語では「Profit and Loss Statement(プロフィット・アンド・ロス・ステートメント)」、略して「P/L(ピーエル)」と呼ばれます。

この書類の役割は、たった3つの要素をハッキリさせることです。

  • 売上: 会社が外から稼いできた「収益」です。
  • 費用: 会社が売上を作るために使った「コスト」です。
  • 利益: 売上から費用を差し引いた、本当の「儲け」です。

この成績表を診れば、「現場で儲かっているのか?」「事務手続きにお金を使いすぎていないか?」が丸わかりになります。

銀行が「この会社にお金を貸しても大丈夫かな?」と判断する際や、公共工事のランク付けである経営事項審査でも、最も注目される書類の一つです。

2.【売上】会社が「稼いだお金」のすべて

損益計算書の一番上にドーンと構えるのが「売上」です。
ここが会社のすべての活動の源になります。

  • 完成工事高:
    建設業では、工事が完成してお客さんに「はい、どうぞ」と引き渡した瞬間に、この売上が計上されます。
    まだ工事が終わっていないのに、お金だけ先にもらっても、ここには載りません。
    あくまで「仕事が完了した分」の合計額です。

ここが大きければ大きいほど、社会から必要とされている、馬力のある会社だと言えます。

3.【費用】会社が「使ったお金」のすべて

売上を作るためには、必ず「出し分」が必要になります。
費用は、その性質によって3つのチームに分かれます。

① 完成工事原価(売上を上げるために直接かかった費用)

いわば、工事の「仕入れ値」です。現場を回すために直接消えていったお金です。

  • 材料費: 木材、鉄骨、コンクリートなど、建物の一部になった資材の代金です。
  • 労務費: 現場で汗を流してくれた自社職人さんの給料や手当、社会保険料です。
  • 外注費: 電気屋さんや水道屋さんなど、他の専門業者さんに「丸投げ」や「請負」で頼んだ費用です。
  • 経費(間接工事費): 現場監督の給料、現場事務所の家賃、重機の燃料代やリース料などです。

② 販売費及び一般管理費(会社の運営にかかる費用)

「販管費(はんかんひ)」と略されます。
現場には直接行かないけれど、会社を維持するために必要な「固定費」です。

  • 役員報酬: 社長や役員の給料です。
  • 事務員の給料: 本社で書類を作ってくれるスタッフの給料です。
  • 地代家賃: 本社ビルの家賃や駐車場の代金です。
  • 通信費・消耗品費: 本社の電話代やコピー用紙、文房具の代金です。

③ 営業外費用(本業以外で発生する費用)

建設工事そのものとは関係ないところで、こっそり出ていくお金です。

  • 支払利息: 銀行から借りたお金に対して払う「レンタル料」のようなものです。
  • 手形売却損: お客さんからもらった手形を、期日より前に現金化するときに引かれる手数料のことです。

4.【利益】会社が「儲けたお金」のすべて

売上から、どの費用を引いたかによって、儲けの名前が「3段階」に変わります。

① 売上総利益(粗利):工事そのものの儲け

  • 計算式: 完成工事高 - 完成工事原価
  • 意味: 「現場そのもの」でいくら出たか、という利益です。
    ここがしっかり残っていないと、現場をこなせばこなすほど会社は苦しくなります。

② 営業利益:本業の儲け

  • 計算式: 売上総利益 - 販売費及び一般管理費
  • 意味: 本社の経費を払った後、本業の「建設業」でいくら残ったかという数字です。
    ここがプラスなら、会社として「稼ぐ仕組み」が正しく動いている証拠です。

③ 経常利益:会社全体のいつもの儲け

  • 計算式: 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用
  • 意味: 銀行への利息払いなども含めた、会社の「地力(じりき)」です。
    毎年安定してこの利益が出ている会社は、銀行からの評価が非常に高くなります。

5.損益計算書から見えてくる「未来への戦略」

成績表を見て「あぁ、良かった」で終わらせてはいけません。
ここから、会社を強くするヒントを掴み取りましょう!

戦略1:見積もりの精度を上げる(粗利の分析)

売上総利益が低い場合、見積もりの段階で「安請け合い」をしているか、現場で無駄なコストが発生しています。

過去の現場の数字を振り返り、「いくらで受ければ利益が出るのか」を正確に計算する癖をつけましょう。

戦略2:会社のムダ肉をそぎ落とす(販管費の分析)

本社の経費が膨らんでいませんか?
ペーパーレス化で消耗品費を減らしたり、業務のIT化で残業代を減らしたりすることで、営業利益を大きく増やすことができます。

戦略3:借金の「質」を見直す(経常利益の分析)

支払利息があまりに多い場合は、借入金の金利を見直したり、返済計画を組み替えたりすることを検討しましょう。
財務のコストを減らすことも、立派な経営戦略です。

6.建設業専用の「成績表」へ書き換える方法

税理士さんの作る決算書を、そのまま許可用(建設業財務諸表)に使うことはできません。
「建設業者さん専用の成績表」に書き換える作業が必要です。

なぜなら、建設業は「どんな費用に、いくら使ったか」を詳しく報告する義務があるからです。

  • ステップ1: 税務署用の決算書を用意します。
  • ステップ2: 「売上原価」を、材料費・労務費・外注費・経費の4つに細かく分解します。
  • ステップ3: 社会保険料(法定福利費)を正しく抜き出します。これは経審の加点に関わるので、絶対に漏らしてはいけません。
  • ステップ4: 本社の経費(販管費)と、現場の経費を混同しないように仕分け直します。

7.【保存版】詳しい診断項目(勘定科目)リスト

書類を作成するとき、迷ったらここを確認してください!

【売上の部】

  • 完成工事高: 今期に引き渡した工事の合計。
  • 兼業事業売上高: 建設業以外の売上。

【費用の部(完成工事原価)】

  • 材料費: 建物になった資材。
  • 労務費: 自社職人さんの給料。
  • 外注費: 他の会社への請負代金。
  • 経費: 現場監督の給料、現場の重機代など。

【費用の部(一般管理費)】

  • 役員報酬: 社長の給料。
  • 従業員給料: 事務員さん、営業さんの給料。
  • 退職金: 社員の退職準備金。
  • 法定福利費: 社会保険料の会社負担分。
  • 地代家賃: 本社の家賃。
  • 租税公課: 印紙代や固定資産税などの税金のことです。
  • 雑費: どこにも当てはまらない、少額の経費です。

8.ルール「10%の壁」を知っていますか?

書類を書くとき、最後に気をつけたいのが「10%ルール」です。

「『雑費』や『その他』の金額が、そのチームの合計額の10%を超えるなら、名前をつけて個別に書きなさい」

例えば、一般管理費が1000万円の会社で、雑費が150万円あったとします。
15%も占めているので、「雑費」でひとまとめにしてはいけません。
その中身が「支払手数料」なら、ちゃんと「支払手数料:150万円」と独立させて書く必要があります。

お役所は「何に大きなお金を使ったか」を、隠さずオープンにすることを求めているのです。

まとめ:損益計算書は、会社を強くする「改善シート」

損益計算書という「家計簿」の解説はいかがでしたか?

ただの数字の羅列に見えていたこの書類は、あなたと従業員さんが1年間、現場で必死に戦ってきた「努力の記録」です。

  • 売上は、あなたが社会から必要とされた証拠です。
  • 費用は、良いものを造るために投じたエネルギーです。
  • 利益は、次の一歩を踏み出すための勇気です。

この書類をしっかり見つめることで、どこに無駄があり、どこを伸ばせばいいかがハッキリわかります。
数字という「事実」を知ることは、会社を、そして大切な人を守ることにつながります。

これからも誇りを持って、素晴らしい現場を造り続けてください。
あなたの会社の「お財布」が、喜びの数字で溢れることを心から応援しています!

頭で理解したら、最後は実際の書類をイメージしてみるのが一番の近道です。
建設業ならではの科目がどこに並ぶのか、こちらの「書き方例」で確認してください。

『損益計算書』の書き方例

『損益計算書』の書き方例は、以下のようになります。
青字の項目は、大阪府の様式にはない項目で追加しています。

損益計算書
  1. 売上高
    • 完成工事高
      工事完成基準で、当期に完成した工事を計上します。
      工事進行基準で当期中の出来高相当額として進捗割合をかけて計上します。
      「直前3年の各事業年度における工事施工金額」の該当年度の合計額と一致します。
    • 兼業事業売上高
      建設業以外の事業による売上高を記載します。
  2. 売上原価
    • 完成工事原価
      「完成工事高」として計上した売上に対する工事原価を記載します。
      工事原価とは、建設工事を行う上でかかった全ての費用を指します。
      工事原価を構成する4要素は、材料費、労務費、経費、外注費です。
      『完成工事原価報告書』の「完成工事原価」と一致します。
    • 兼業事業売上原価
      「兼業事業売上高」として計上した売上に対する兼業事業の原価を記載します。
      『兼業事業売上原価報告書』の「兼業事業売上原価」と一致します。
    • 売上総利益(売上総損失)
      完成工事総利益と兼業事業総利益に分けて記載します。
      各売上高から売上原価を引いて計算します。
  3. 販売費及び一般管理費
    • 役員報酬 → 取締役、執行役、会計参与または監査役に対する報酬を記載します。経営業務の管理責任者は常勤の役員として勤務していると考えられるため、役員報酬がゼロというのは、経営業務の管理責任者がいないと疑われる可能性があります。
      (決算書の表示例=役員報酬、役員賞与、役員賞与引当金)
    • 従業員給料手当 → 管理部門、間接部門の業務に従事する従業員などにたいする給料、手当、賞与を記載します。工事に関わらず、現場にでない人が対象です。
      (決算書の表示例=給料手当、賞与、賞与引当金繰入)
    • 退職金 → 役員および従業員にたいする退職金、退職給与引当金および退職年金掛金を記載します。
      (決算書の表示例=退職金、退職引当金繰入額、建退共証紙購入費)
    • 法定福利費 → 役員および管理部門、間接部門の業務に従事する従業員に対する健康保険、厚生年金保険、雇用保険および労災保険などの保険料の事業主負担額を記載します。
      (決算書の表示例=法定福利費)
    • 福利厚生費 → 慰安娯楽、貸与被服、医療、慶弔見舞等の福利厚生に要する費用を記載します。
      (決算書の表示例=福利厚生費)
    • 修繕維持費 → 建物、車両、機械や装置などの修繕維持費を記載します。
      (決算書の表示例=修繕費、修繕維持費)
    • 事務用品費 → 事務用消耗品費、固定資産に計上しない事務用備品費、新聞、参考図書などの購入費を記載します。
      (決算書の表示例=事務用品費、新聞図書費)
    • 通信交通費 → 通信費、旅費交通費を記載します。
      (決算書の表示例=通信費、交通費)
    • 動力用水光熱費 → 電気、ガス、水道料金の費用を記載します。
      (決算書の表示例=水道代、電気代、ガス代)
    • 調査研究費 → 技術研究、技術開発などの費用を記載します。
      (決算書の表示例=調査研究費)
    • 広告宣伝費 → 広告や宣伝の費用を記載します。
      (決算書の表示例=広告宣伝費)
    • 貸倒引当金繰入額 → 営業取引に基づいて発生した受取手形、完成工事未収入金などの債権に対する貸倒引当金繰入額を記載します。企業が将来発生する可能性のある貸倒損失に備えるために、事前に費用として計上します。
      (決算書の表示例=貸倒引当金繰入額)
    • 貸倒損失 → 営業取引に基づいて発生した受取手形、完成工事未収金などの債権にたいする貸倒損失を記載します。
      (決算書の表示例=貸倒損失)
    • 交際費 → 得意先や士業などの接待費、慶弔費およびお中元やお歳暮の贈答品代を記載します。
      (決算書の表示例=接待交際費、慶弔費)
    • 寄付金 → 国、地方公共団体、社会福祉法人や公益社団法人などへの寄付を記載します。
      (決算書の表示例=寄付金)
    • 地代家賃 → 事務所、寮、社宅などの地代および借地料を記載します。
      (決算書の表示例=地代、家賃、賃借料)
    • 減価償却費 → 管理部門、間接部門に属する固定資産についての減価償却実施額を記載します。工事で使用される機械や車両は、工事原価の経費に記載します。
      (決算書の表示例=減価償却費)
    • 開発費償却 → 貸借対照表の「繰延資産」計上した「開発費」の償却額を記載します。
      (決算書の表示例=開発償却費)
    • 租税公課 → 事務所税、消費税、不動産取得税、固定資産税、自動車税、収入印紙代などの租税および道路占用料などの公課を記載します。
      (決算書の表示例=租税公課、消費税)
    • 保険料 → 傷害保険、火災保険、第三者賠償保険や盗難保険などの損害保険料を記載します。
      (決算書の表示例=支払保険料、損害保険料)
    • 雑 費 → 車内外の打ち合わせや会議の費用、組合などの諸団体会費、荷造運賃など、他の販売費及び一般管理費の科目に属さない費用を記載します。
      (決算書の表示例=支払手数料、諸会費、消耗品費、リース料、顧問料、車両費、雑費)
  4. 営業外収益
    • 受取利息配当金 → 金融機関の預金利息および貸付金などに対する受取利息と、公社債などの有価証券利息と、保有している株式の配当金を記載します。
      (決算書の表示例=受取利息、受取配当金、有価証券利息)
    • その他 → 売買目的株式や公社債等の売却による有価証券売却益や本業以外で家賃収入がある場合の受取家賃など、「受取利息配当金」以外の営業外収益を記載します。
      (決算書の表示例=有価証券売却益、受取家賃、雑収入)
  5. 営業外費用
    • 支払利息 → 金融機関などからの借入金に対する利息のほか、社債および新株予約権付社債の支払利息を記載します。
      (決算書の表示例=支払利息、社債利息)
    • 貸倒引当金繰入額 → 営業取引以外の取引に基づいて発生した貸付金などの債権に対する貸倒引当金繰入額を記載します。営業取引に基づくものは販売費及び一般管理費に含めます。
      (決算書の表示例=貸倒引当金繰入額)
    • 貸倒損失 → 営業取引以外の取引に基づいて発生した貸付金などの債権に対する貸倒損失を記載します。営業取引に基づくものは販売費及び一般管理費に含めます。
      (決算書の表示例=貸倒損失)
    • その他 → 支払利息、貸倒引当金繰入額および貸倒損失以外の営業費用で、開発費以外の繰延資産の償却額や売買目的の株式、公社債等の売却により損失のほか、手形売却損や雑損失を記載します。
      (決算書の表示例=開業費償却、社債発行費償却、有価証券売却損、雑損失)
  6. 特別利益
    • 前期損益修正益 → 前期以前に計上された損益の修正による利益を記載します。
      (決算書の表示例=前期損失修正益)
    • その他 → 固定資産売却益、当期有価証券売却益、財産受増益など、特別な要因で臨時に発生した利益を記載します。
      (決算書の表示例=固定資産売却益、資産受贈益、貸倒引当金戻入)
  7. 特別損失
    • 前期損益修正損 → 前期以前に計上された損益の修正による損失を記載します。
      (決算書の表示例=前期損益修正損)
    • 固定資産売却損→会社が所有する固定資産(土地、建物、機械など)を売却した際に、売却価格が帳簿上の価格(帳簿価額)を下回った場合に発生する損失のことです。
      (決算書の表示例=固定資産売却損)
    • その他 → 固定資産売却損、除却損、当期有価証券売却損、災害損失など、特別な要因で臨時に発生した損失を記載します。
      (決算書の表示例=固定資産売却損・除却損、損害賠償金)
      • 法人税、住民税及び事業税 → 当該事業年度の税引前当期純利益に対する法人税などの額を記載します。
        (決算書の表示例=法人税・住民税、事業税、追徴税額、還付金)
      • 法人税等調整額 → 税効果会計の適用により税法上の課税所得から計算される法人税等の額と、会計上の利益から計算される法人税等の額との間に生じた期間的な差異を調整した額を記載します。
        (決算書の表示例=法人税等調整額)