決算変更届の注記表のつくり方

建設業法には毎年提出が義務づけられている、『決算変更届』と呼ばれる書類があります。

その中に『注記表』と呼ばれる書類がありますが、税理士が作成した決算書では『個別注記表』として記載されていたりします。

会社法では作成義務はありますが、税法上の作成義務がないため作成していない場合もあります。

この記事では、『注記表』の作成ポイントをまとめています。

1.注記表(様式第17号の2)の記載項目

『注記表』とは、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書を正確に判断するために、必要な会計方針などの情報を記載した書類になります。

中小企業の決算書において、『個別注記表』をきちんと作成されているとは限りません。
税務署への提出義務がないため、作成していないのです。

建設業財務諸表では、最低限記載すべき項目が決まっています。
確認として、会社が株式譲渡制限会社であるか否かを確認する必要があります。

株式譲渡制限会社とは、株主が株式を他人に譲るときに会社の許可が必要な会社のことだよ。

株式譲渡制限会社か否かの確認方法は、定款でも確認できますが、登記簿謄本に「株式の譲渡制限に関する規定」という項目があれば株式譲渡制限会社になります。
項目がなければ公開会社(譲渡制限会社ではない)ということになります。

この株式譲渡制限会社か否かで、「注記表」に記載する項目が変わってきます。
記載事項については、会計計算規則第98条から第106条を根拠にしています。

下表にて、「〇」は記載が必要。「✕」は記載は不要ということになっています。

株式会社持分会社
会計監査人
設置会社
会計監査人なし
 公開会社 株式譲渡
制限会社
1継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況×××
2重要な会計方針
3会計方針の変更
4表示方法の変更
4-2会計上の見積り×××
5会計上の見積りの変更×××
6(びゆう)の訂正
7貸借対照表関係××
8損益計算書関係××
9株主資本等変動計算書関係×
10税効果会計××
11リースにより使用する固定資産××
12金融商品関係××
13賃貸等不動産関係××
14関連当事者との取引××
15一株当たり情報××
16重要な後発事象××
17連結配当規制適用の有無×××
17-2収益認識関係×××
18その他

2.株式譲渡制限会社の記載事項

株式会社のほとんどは、非上場会社になります。
その非上場会社の多くは、株式譲渡制限会社になります。

そのため株式譲渡制限会社では、6項目を記載すればよくなります。

『注記表』の書き方例は、以下のようになります。
赤〇が、株式譲渡制限会社の必須記載事項です。

注記表の記載例
  • 2(1)資産の評価基準及び評価方法
    有価証券や棚卸資産(商品、製品、原材料、貯蔵品、未成工事支出金など)の評価方法を記載します。

    有価証券を保有していない場合は、「該当なし」となります。
    税務署に「有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出」を提出している場合は、「移動平均法」と「総平均法」を選ぶことが可能になります。

    棚卸資産の評価方法は、何かしらの評価方法が入ります。
    税務署に「棚卸資産の評価方法の届出」を税務署に提出していれば記載の評価方法になります。
    提出していなければ「最終仕入原価法」になります。
  • 2(2)資産の評価基準及び評価方法
    固定資産を保有していない場合は、「該当なし」となります。
    「減価償却資産の償却方法の届出」をしている場合は、記載の償却方法です。
    確定申告書の別表16で確認し、別表16(1)に記載されている固定資産は「定額法」、別表16(2)に記載されている固定資産は「定率法」になります。
  • 2(3)引当金の計上基準
    引当金がない場合は、「該当なし」となります。
    決算日時点で何らかの引当金がある場合に、その基準を記載します。
  • 2(4)収益及び費用の計上基準
    損益計算書の収益と費用の計上は、どういう基準かを問われています。
    一般的には、「収益:実現主義 費用:発生主義」になります。
  • 2(5)消費税などに相当する額の会計処理の方法
    決算変更届の消費税についての記載項目です。
    「消費税抜き」または「消費税込み」または「免税のため消費税込み」になります。
  • 2(6)その他貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、注記表作成のための基本となる重要な事項
    決算書に何も書かれていない場合は、「該当なし」となります。
  • 3 会計方針の変更
    中小企業のほとんどが「該当なし」になります。
    会計方針を変更した場合に、その内容と影響を明記します。
  • 4 表示方法の変更
    中小企業のほとんどが「該当なし」になります。
  • 6 誤(ごびょう)の訂正
    中小企業のほとんどが「該当なし」になります。
  • 9(1)事業年度末日における発行済株式の種類及び数
    履歴事項全部証明書で、「発行済株式の総数並びに種類及び数」を確認して記載します。
  • 9(2)事業年度末日における自己株式の種類及び数
    自己株式を保有していない場合は、「該当なし」と記載します。
    貸借対照表の「純資産の部」にある「自己株式」にて判断ができます。
    確定申告書の別表2の1欄「期末現在の発行済株式の総数又は出資の総額」の内書きに自己株式の数が記載されています。
  • 9(3)剰余金の配当
    事業年度中に配当を行った場合、および事業年度末日後に配当を行うときの配当基準日が、当事業年度内のものがある場合に記載します。
  • 9(4)新株予約権の目的となる株式の種類及び数
    新株予約権がない場合は、「該当なし」となります。
  • 18 その他
    特段記載すべき事項がなければ、「特にありません」となります。

※ 経営事項審査を受ける場合には、以下の項目も記載します。

  • 7(2)保証債務、手形遡求債務 、重要な係争事件に係る損害賠償義務等の内容及び金額
    法人税確定申告書の別表11(1の2)の一括評価金銭債権の明細欄や、貸借対照表の欄外の記載で、「割引手形」「裏書手形」について確認します。

    貸借対照表の流動負債に「割引手形」「裏書手形」が記載されているときは注意が必要で、流動資産の「受取手形」を相殺して残額を「受取手形」に記載します。
    「割引手形」「裏書手形」の額は、注記表7(2)に記載します。

    経営事項審査の経営状況分析機関では、財務状況や信用力、そして経営の健全性を総合的に評価するため、「割引手形」「裏書手形」の記載を注記表に必要となります。

「割引手形」とは、約束手形を支払期日前に金融機関に売却し、額面から割引手数料を差し引かれた金額を現金として受け取る取引です。
「裏書手形」は、約束手形の裏面に譲渡人の署名と捺印を行い、別の者に譲渡する手形のことです。