決算変更届の株主資本変動等計算書のつくり方

建設業法には毎年提出が義務づけられている、『決算変更届』と呼ばれる書類があります。

その中に『株主資本等変動計算書』と呼ばれる書類がありますが、税理士が作成した決算書でも記載されています。

もし添付されていない場合でも、手順に従い確認していけば作成することができます。

この記事では、『株主資本等変動計算書』の作成ポイントをまとめています。

1.株主資本等変動計算書(様式第17号)の記載項目

『株主資本等変動計算書』は、『貸借対照表』と『損益計算書』の2つを結び付けている書類です。
会社が当期の事業活動で、どのように資金を調達し、どのように使ったのかを説明するための書類です。

『貸借対照表』の前期末の「純資産の部」が、『株主資本等変動計算書』の「当期首残高」と一致します。
会社の経営活動は『損益計算書』で収益と費用が計算され、その結果が『株主資本等変動計算書』に反映されます。
最終的に『株主資本等変動計算書』の「当期末残高」が、『貸借対照表』の今期末の「純資産の部」と一致します。

つまり3つの決算書の関係は、互いに関連し合い、企業の財務状況を多角的に分析するために不可欠な要素です。

  • 株主資本等変動計算書
    今期の株主資本の増減の原因を、明らかにするのが目的です。
    株主資本は、利益の蓄積や新株発行などによって増え、配当や損失によって減ります。
    そうした増減の動きを詳細に追跡し、株主に分かりやすく説明します。
  • 損益計算書
    今期の経営成績を明らかにするのが目的です。
    売上高から売上原価や販売費及び一般管理費などを差し引いて、当期純利益を算出します。
  • 貸借対照表
    特定時点における、会社の資産、負債、純資産の状況を明らかにするのが目的です。
    会社が所有する資産と負債のバランスを示し、純資産の額を算出します。

3つの書類を総合的に分析することで、企業の過去、現在、未来の財務状況を深く理解することができるんだね。

『株主資本等変動計算書』の書き方例は、以下のようになります。

株主資本等変動計算書の記載例
  1. 株主資本
    • 資本金 → 会社設立時に発行された株式の額です。
    • 新株式申込証拠金 → 新しい株式を発行する際に、その株式を申し込む人が、あらかじめ支払うお金のことです。払込期日を迎えていないため、資本金とは区別します。
    • 資本剰余金
      • 資本準備金 → 会社が将来に備えるために積み立てる資金です。資本金の2分の1を超えない額まで計上することができます。
      • その他資本剰余金 → その他の要因による資本剰余金(例えば、評価差額など)です。
    • 利益剰余金
      • 利益準備金 → 会社が得た利益の一部を、将来に備えて積み立てておくための資金のことです。
        会社法により、配当により減少する剰余金の額10%を資本準備金または利益準備金として計上することを義務付けされています。
      • その他利益剰余金
        • ××積立金 → 株主総会や取締役会の決議により、会社が任意に設定する準備や積立金です。
        • 繰越利益剰余金 → 企業が過去に得た利益のうち、配当やその他の目的で支出されずに残っているお金のことです。
    • 自己株式 → 会社が保有する自社の発行済み株式です。
  2. 評価・換算差額等
    • その他有価証券評価差額金 → 「売買目的有価証券」「満期保有目的の債券」「子会社株式及び関連会社株式」のいずれににも分類されない「その他有価証券」について、時価により評価替えすることにより生じた評価損益から税効果相当額を控除した残額です。
    • 繰延ヘッジ損益 → デリバティブ取引など、取得価額と時価評価の差額を翌期以降に繰り延べるときに記載します。
      ※デリバティブ取引とは、株式や為替、商品など、原資産と呼ばれるものの価格変動に連動して、その価値が変動する金融派生商品を売買する取引のことです。
    • 土地再評価差額金 → 企業が所有する土地の時価が、帳簿に記載されている取得時の価格と大きく乖離している場合に、その差額を計上するためのものです。
  3. 新株予約権 → 企業が発行する一種の権利証で、将来に企業の株式を一定の価格で買う権利のことです。株式を購入するための「予約券」のようなものです。

2.株主資本等変動計算書の記載手順

『株主資本等変動計算書』は決算書に添付されており、それを転記します。
もし添付されていない場合は、以下の手順にて作成することができます。

  1. 前期の決算書または建設業財務諸表を参照し、各項目を当期首残高に記載します。
  2. 当期の貸借対照表から、当期末残高を記載します。
  3. 当期首残高と当期末残高の差額を、当期変動額合計の行に記載します。
    評価・換算差額等と新株予約権の部分は、株主資本以外の項目の当期変動額の行に記載します。
    株主資本の部分は、損益計算書から「当期純利益」の行に記載します。
  4. まだ差額がある場合は、増資や配当や積立金などの振替があるので、各項目を確認して変動している項目を埋めていきます。
  5. 最後に各合計欄を計算して、埋めていきます。

『株主資本等変動計算書』から、企業のお金の流れがどのように増えたり減ったりしているのか分かるんだね。