経営業務の管理責任者の役割や資格要件
建設業許可の要件の一つとして、営業所の本店に「常勤役員等(経営業務の管理責任者)」を置かなければなりません。
令和2年10月1日の建設業法改正にて、個人としてだけでなく組織として経営業務の管理責任者要件ができるように緩和されました。
この記事では建設業許可の基本である「常勤役員等(経営業務の管理責任者)」を、建設業者様のために説明しています。
1.常勤役員等(経営業務の管理責任者)の役割
常勤役員等(経営業務の管理責任者)は、建設業許可を取得する上で最も重要な要件の一つです。
適正な経営を確保するための「経営のプロ」といえます。
建設業は、工程管理や資金繰り、労務管理などの経営管理が重要です。
もし倒産をしてしまうと、施主に与える悪影響が計り知れません。
具体的には、以下の業務を行います。
- 経営方針の策定: 会社の経営に関する基本的な方針や目標を決定します。
- 事業計画の策定: 具体的な事業計画を立案し、実行を管理します。
- 組織体制の構築: 組織体制を整備し、各部門の役割と責任を明確にします。
- 資金調達: 事業に必要な資金を調達するための計画を立て、実行します。
- 契約管理: 契約に関する重要な事項を決定し、管理します。
- 法令遵守: 建設業に関する法令を遵守するための体制を構築し、管理します。
- 従業員の管理: 従業員の採用、教育、評価などを行います。
- 安全管理: 建設現場の安全管理体制を構築し、維持します。
- 品質管理: 施工品質を確保するための体制を構築し、維持します。

組織全体を指揮し、各部門を統括する能力が求められるんだね。
2.常勤役員等(経営業務の管理責任者)の資格要件
経営業務の管理責任者の要件は、建設業法施行規則第7条第1号イ、ロ、ハに規定されています。
建設業法施行規則第7条第1号イ
常勤役員等(法人は常勤の役員、個人は事業主または支配人)のうち1人が、次のいずれかに該当すれば要件を満たします。
- 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
以前は「申請する業種の経験なら5年、他業種の場合は6年」とされていた建設業の経験の経験に関して緩和され、業種は問わないことになりました。
(例)建設業の取締役や令3条使用人として5年以上の経験がある
- 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者
(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者
経管に準ずる地位は、一般的には執行役員を指しますが、主に大企業にあるパターンかと思います。
執行役員制度自体は法律で定められたものではなく、あくまで会社内の役職になります。
登記簿謄本のような誰が見ても分かる証拠はありません。
制定した規程や、執行役員に就任したことがわかる議事録等、建設業に関しての権限を持っていた経験期間の5年間の証拠として提示することになります。
各行政ごとでの対応になります。取締役会設置会社、取締役会の決議、取締役会や代表取締役から、建設業の業務執行に関して具体的な権限移譲。
(例)取締役会設置会社の建設業担当執行役員として5年以上の経験がある
- 建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者
個人事業主の「準ずる地位」に該当するのは、個人事業主の配偶者や子息にあたります。
事業主のもとで、経営を長年補佐してきた経験がある場合などです。
法人での「準ずる地位」に該当するのは、取締役会や経営会議に参加している副部長などです。
必要となる書類も多く、限定的な方法となります。
(例)個人事業主である父の経営業務全般について6年以上補助していた子
建設業法施行規則第7条第1号ロ
組織を経営業務の管理責任者とするための要件です。
個人の経営経験が不足する場合に、検討する感じになります。
まず前提として、常勤役員等のうち1人が、次のいずれかに該当する必要があります。
- 建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
(例)建設業者で財務部門担当の執行役員を2年経験したあと、取締役を3年経験した
- 5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有する者
(例)商社で取締役を3年経験したあと、建設業者で取締役を2年経験した
さらに、以下を有するものを置く必要があります。
- 申請を行う会社で、建設業の財務管理について役員等に次ぐ職制上の地位の経験を5年以上有する者
建設工事を施工するにあたって必要な資金の調達や施工中の資金繰りの管理、下請業者への代金の支払いなどに関する業務経験(役員としての経験を含む)
- 申請を行う会社で、建設業の労務管理について役員等に次ぐ職制上の地位の経験を5年以上有する者
社内や工事現場における勤怠の管理や社会保険関係の手続きに関する業務経験(役員としての経験を含む)
- 申請を行う会社で、建設業の業務運営について役員等に次ぐ職制上の地位の経験を5年以上有する者
会社の経営方針や運営方針の策定、実施に関する業務経験(役員としての経験を含む)
財務管理・労務管理・業務運営の補佐は、1人でも兼務OKです。
他社で経験を積んだ経験は、使えません。
そのため、現在の会社が設立から5年未満の会社は、このパターンは使えません。
また活用する場合は、組織図、業務分掌規程、過去の稟議書、人事発令書等の資料が必要になり、許可行政庁に事前相談をした方が良いでしょう。
建設業法施行規則第7条第1号ハ
国土交通大臣がイ又はロに掲げるものと同等以上の経営体制を有すると認定したもの。
具体的には、国土交通大臣が個別の申請に基づき、海外の建設業者での役員経験を使用するケースなどです。

色々なパターンがあり、ややこしい。
まとめてみると以下のようになるよね。
まとめてみると、以下の表になります。
1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | 6年 | |
---|---|---|---|---|---|---|
イー1 | 建設業に関し経営業務の管理責任者としての経験 | |||||
イー2 | 建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位(権限の委任を受けた者)としての経験 | |||||
イー3 | 建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位(イー2以外)として、経営業務の管理責任者を補佐した経験 | |||||
ロー1 | 建設業に関し2年以上役員等としての経験 | |||||
役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験 | ||||||
申請会社で5年以上の財務、労務、業務運営の経験がある者 | ||||||
ロー2 | 建設業に関し2年以上役員等としての経験 | |||||
他業種含み取締役経験が5年以上 | ||||||
申請会社で5年以上の財務、労務、業務運営の経験がある者 | ||||||
ハ | 国土交通大臣がイ又はロと同等以上の経営体制を有すると認定 |
ちょっと古い情報の動画ですが、参考としてYoutube動画をアップしています。