建設業許可の「主任技術者・監理技術者」とは?

軽く、Youtubeでも動画をアップしています。

こんにちは。
大阪府吹田市の行政書士いわた事務所です。

建設業許可を取得すると、各工事現場に「主任技術者」または「監理技術者」を配置する必要があります。
「主任技術者」と「監理技術者」とはどういう役割があるのでしょうか?

この記事では、建設業許可を受けたい方に向けて説明しています。

1.「主任技術者」と「監理技術者」の役割

主任技術者と監理技術者の業務内容は、大体同じですが以下の違いがあります。

元請の主任技術者
及び監理技術者
下請の主任技術者
役割○請け負った建設工事全体の統括的施工管理○請け負った範囲の建設工事の施工管理
施工計画の作成○請け負った建設工事全体の施工計画書等の作成
○下請の作成した施工要領書等の確認
○設計変更等に応じた施工計画書等の修正
○元請が作成した施工計画書等に基づき、請け負った範囲の建設工事に関する施工要領書等の作成
○元請等からの指示に応じた施工要領書等の修正
工程管理○請け負った建設工事全体の進捗確認
○下請間の工程調整
○工程会議等の開催、参加、巡回
○請け負った範囲の建設工事の進捗確認
○工程会議等への参加
品質管理○請け負った建設工事全体に関する下請からの施工報告の確認、必要に応じた立ち会い確認、事後確認等の実地の確認○請け負った範囲の建設工事に関する立ち会い確認(原則)
○元請(上位下請)への施工報告
技術的指導○請け負った建設工事全体における主任技術者の配置等法令遵守や職務遂行の確認
○現場作業に係る実地の総括的技術指導
○請け負った範囲の建設工事に関する作業員の配置等法令遵守の確認
○現場作業に係る実地の技術指導

以上の職務は、業務内容及び業務環境に応じて、テレワークにより行う場合も含まれます。

許可業者は、各工事現場に必ず「主任技術者・監理技術者」を配置しなければなりません。
軽微な工事であっても、許可業者には配置義務があります。

ただし許可業者でも、許可を持っていない業種を軽微な工事として請負う場合は、無許可業者扱いになります。
そのため、配置義務も不要になります。

監理技術者の配置は、特定建設業者の場合に求められます。
特定建設業者が元請として税込4,500万円(建築一式は7,000万円)以上の工事を下請けさせる場合には、「監理技術者」を配置しなければなりません。

出典:中部地方整備局「建設業法に基づく適正な施工の確保に向けて」

元請からは「監理技術者」を、下請からは「主任技術者」を配置する必要があります。
元請業者は監理技術者を配置しているため、主任技術者の配置は不要です。

「主任技術者・監理技術者」は、工事を請負った企業と直接的かつ恒常的な雇用関係が必要とされています。
要するに、自社の正社員じゃないとダメということです。

また公共工事に配置出来る技術者については、入札の申込みから3ヵ月以前から雇用している者を配置する必要があるので注意が必要です。
なお民間工事についても、同様の規定を設けている場合がありますので気を付けてください。

2.「主任技術者」と「監理技術者」の要件

「主任技術者・監理技術者」になるためには、下記の要件を満たす必要があります。

主任技術者の要件

「主任技術者」の要件は、一般建設業の専任技術者の要件と同じです。

  1. 一定の国家資格者等(1級または2級)
    ※工事を行う業種と、関わりがある資格が必要
  2. 大学、短期大学、高等専門学校などの指定学科卒業 + 実務経験3年以上
  3. 高校、専門学校、中等教育学校の指定学科卒業 + 実務経験5年以上
  4. 10年以上の実務経験者
  5. 国土交通大臣による認定
  6. 1級施工管理技士の一次試験合格を合格 + 実務経験3年以上(令和5年7月1日の要件緩和)
  7. 2級施工管理技士の一次試験合格を合格 + 実務経験5年以上(令和5年7月1日の要件緩和)

監理技術者の要件

「監理技術者」になるためには、特定建設業の専任技術者になれる要件と同じです。

  1. 一定の国家資格者等(1級のみ)
    ※工事を行う業種と、関わりがある資格が必要
  2. 一般建設業許可の専任技術者の要件に該当し、4,500万円以上の元請工事に関して2年以上の指導監督的実務経験がある者
    ※土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の7業種の特定建設業許可については、一級の国家資格者又は国土交通大臣特別認定者であることが必要です。
  3. 国土交通大臣による認定

3.「主任技術者・監理技術者」の、複数現場の兼務は可能?

「主任技術者」と「監理技術者」は、基本的に担当する建設工事に専任する必要があります。
専任とは、その現場の職務のみを常時継続的に行うことです。

ただし公共性のある施設もしくは多数の者が利用する施設の工事の場合、主任技術者を配置するにあたっては「専任」か「非専任」かの区別があります。
「専任」での配置を求められるかは、工事請負金額により定められています。

  1. 現場に専任すべき工事・・・工事の請負金額が4,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)以上の工事
  2. 非専任でも可能な工事・・・工事の請負金額が4,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)未満の工事

令和5年1月1日から主任技術者又は監理技術者の専任を要する請負代金額の下限について、3500万円(建築一式工事の場合は7000万円)から4000万円(建築一式工事の場合は8000万円)に引き上げ。

4.監理技術者の資格者証と講習について

監理技術者は、監理技術者資格者証の交付、かつ監理技術者講習を終了していることが必要です。
監理技術者証は、現場での携帯が義務付けられており、発注者の要求があれば提示しなければなりません。

管理技術者資格者証の交付申請と管理技術者講習の受講申込は、どちらを先に手続きを進めても問題はありません。
監理技術者資格者証の交付は、管理技術者講習修了の有無にかかわらず可能です。

監理技術者証の交付は、「一般社団法人建設業技術者センター」で実施しています。

https://www.cezaidan.or.jp/

監理技術者講習は、「国土交通省 監理技術者講習実施機関一覧」で実施しています。

https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000094.html

監理技術者は、5年以内に監理技術者講習を修了していなければなりませんでした。
令和3年1月1日施工の改正建設業法では、監理技術者講習の有効期限を「受講した日の翌年1月1日から5年間」に伸長されました。
受講した日から6年目の12月31日までです。

また令和4年8月15日施工で、経営事項審査の改正があります。
こちらも専任の監理技術者と整合性を合わせるため、講習を受講した日の属する年の翌年から起算して5年を経過しないものを評価することになりました。

技術職員名簿の講習受講の有効期限が、改正に合わせて伸長することになりました。

5.「主任技術者・監理技術者」は、専任技術者と兼務できる?

専任技術者は、「主任技術者」や「監理技術者」を兼務することは原則できません。
専任技術者の役割は、請負契約を結ぶ技術的なサポートを行う必要があるため、常に営業所に勤務しなければなりません。

そうなると一人親方など、専任技術者要件を満たした人が1名しかいない場合は困ります。
そのため専任技術者と兼務することができる、例外のケースが以下のように設けられています。

  1. 専任技術者が勤務する営業所で、締結された工事であること
  2. 営業所と現場の距離が近いこと
  3. 「専任である事が求められる工事」以外の工事であること

6.2020年10月の改正建設業法で変わったこと

2020年10月の改正建設業法により、以下の緩和措置が設けられました。

下請業者の主任技術者を配置免除

下請業者の主任技術者を、配置免除という制度が設けられました。

主任技術者の配置は、原則全ての工事現場に義務付けられています。
負担が大きいため、以下の条件を全て満たした場合には、下請業者は主任技術者の配置が免除されます。

  1. 「鉄筋工事」又は「型枠工事」であること
  2. 下請代金の合計が、4,000万円未満であること
    ※令和5年1月1日から、3500万円から4000万円に引き上げ
  3. 元請が配置する主任技術者が、1年以上の指導監督的実務経験があり、当該現場に専任すること
  4. 配置しない下請は、再下請の禁止
  5. 配置免除について、注文者・元請・下請で書面の承諾
出典:中部地方整備局「建設業法に基づく適正な施工の確保に向けて」

元請の監理技術者のルールの合理化

現場に監理技術者補佐を専任で置いた場合、監理技術者が他の現場を兼務できます。

補佐を置くことで、複数の現場兼務する監理技術者を「特例監理技術者」といいます。
監理技術者補佐は、特例監理技術者が兼務する現場ごとに専任で配置する必要があります。
特例監理技術者が兼務できる現場は、2つまでです。

出典:四国地方整備局「監理技術者の専任緩和(建設業法第26条)」

監理技術者補佐の条件は、以下のどちらかです。

  1. 監理技術者の要件を満たす者
  2. 主任技術者の要件を満たす者のうち、一級の技術検定の第一次検定に合格した者