主任技術者・監理技術者の役割

建設業許可を取得すると、各工事現場に「主任技術者」または「監理技術者」を配置する義務があります。

簡単に言うと、主任技術者はすべての工事現場に必要な技術者であり、監理技術者はより大規模な工事で、下請業者を指導・監督する立場の技術者です。

この記事では建設業許可の「主任技術者」と「監理技術者」を、建設業者様のために説明しています。

1.「主任技術者」と「監理技術者」の役割

建設業者は、建設業の許可を受けた建設業者が建設工事を請け負った場合、その工事現場ごとに、工事の適正な施工に必要な技術上の管理を行う「主任技術者」を配置しなければなりません。

これは、請負金額の大小や、元請・下請の立場に関わらず原則として適用されます。

たとえ500万円未満の軽微な工事であっても、建設業の許可を受けている業者が施工する場合は主任技術者の配置が必要です。

元請の特定建設業者が、下請契約の請負代金総額が一定金額以上(建築一式工事の場合は8,000万円以上、その他工事は5,000万円以上)になる工事を施工する際には、主任技術者に代えて配置技術者を置かなければなりません。

監理技術者の配置義務

主任技術者と監理技術者の役割を比較すると、以下の表になります。

区分下請の主任技術者元請の主任技術者及び監理技術者
主な役割工事の適正な施工に必要な技術上の管理を行う工事の適正な施工に必要な技術上の管理に加え、下請負人を適切に指導・監督し、より総合的な管理を行う
施工計画の作成元請が作成した施工計画書等に基づき、請け負った範囲の建設工事に関する施工要領書等の作成

元請等からの指示に応じた施工要領書等の修正
請け負った建設工事全体の施工計画書等の作成

下請の作成した施工要領書等の確認

設計変更等に応じた施工計画書等の修正
工程管理請け負った範囲の建設工事の進捗確認

工程会議等への参加
請け負った建設工事全体の進捗確認

下請間の工程調整

工程会議等の開催、参加、巡回
品質管理請け負った範囲の建設工事に関する立ち会い確認(原則)

元請(上位下請)への施工報告
請け負った建設工事全体に関する下請からの施工報告の確認

必要に応じた立ち会い確認

事後確認等の実地の確認
技術的指導請け負った範囲の建設工事に関する作業員の配置等法令遵守の確認

現場作業に係る実地の技術指導
請け負った建設工事全体における主任技術者の配置等法令遵守や職務遂行の確認

現場作業に係る実地の総括的技術指導

主任技術者は、個々の工事現場における技術管理の要であり、監理技術者は、より大規模な工事において、元請の立場で全体を統括し、下請業者を指導・監督する、より責任の重い役割を担っています。

許可業者は、軽微な工事であっても、許可業者には配置義務があります。
ただし許可業者でも、許可を持っていない業種を軽微な工事として請負う場合は、無許可業者扱いになります。そのため、配置義務も不要になります。

2.「主任技術者」と「監理技術者」の要件

「主任技術者・監理技術者」の要件は、営業所技術者等と同じです。

  • 主任技術者=営業所技術者
  • 監理技術者=特定営業所技術者

要件の詳細は、以下のページにてまとめているので参考にしてください。

営業所技術者等の役割や資格要件

建設業許可の要件の一つとして、営業所ごとに「営業所技術者等」を置かなければなりません。令和5年7月の建設業法改正前は、「専任技術者」とよばれていました。 一般建…

監理技術者となるための、監理技術者資格者証と管理技術者講習

監理技術者となるためには、上記に記述したとおり、監理技術者(=特定営業所技術者)の要件を満たし、監理技術者資格者証の交付を受ける必要があります。
さらに、監理技術者資格者証の交付を受けた後、監理技術者講習を受講していることが必要です。

監理技術者証は、現場での携帯が義務付けられており、発注者の要求があれば提示しなければなりません。

管理技術者資格者証の交付申請と管理技術者講習の受講申込は、どちらを先に手続きを進めても問題はありません。
監理技術者資格者証の交付は、管理技術者講習修了の有無にかかわらず可能です。

監理技術者証の交付は、「一般社団法人建設業技術者センター」で実施しています。

https://www.cezaidan.or.jp/

監理技術者講習は、「国土交通省 監理技術者講習実施機関一覧」で実施しています。

https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000094.html

監理技術者は、5年以内に監理技術者講習を修了していなければなりませんでした。
令和3年1月1日施工の改正建設業法では、監理技術者講習の有効期限を「受講した日の翌年1月1日から5年間」に伸長されました。
受講した日から6年目の12月31日までです。

また令和4年8月15日施工で、経営事項審査の改正がありました。
こちらも専任の監理技術者と整合性を合わせるため、講習を受講した日の属する年の翌年から起算して5年を経過しないものを評価することになりました。

資格者証と講習の有効期間はそれぞれ異なるため、両方の有効期限を管理し、必要に応じて更新・再受講を行う必要があります。

3.「主任技術者」と「営業所技術者」の兼務

原則として、主任技術者と営業所技術者は、その配置場所と求められる職務内容が異なるため、兼務は認められません。

営業所技術者は営業所に常勤して許可要件を満たす役割を担い、主任技術者は工事現場で施工管理を行う役割を担うため、両方の職務を同時に適切に行うことは難しいと考えられるためです。

ただし、以下の一定の条件をすべて満たす場合に限り、例外的に営業所技術者が主任技術者を兼務することが認められています。

  1. 当該営業所で契約締結した建設工事であること
  2. 工事現場が、当該営業所が職務を適正に遂行できる程度に近接しており、かつ当該営業所との間で常時連絡を取りうる体制にあること
  3. 当該工事が、主任技術者の現場への専任が必要となる工事(請負金額4,500万円以上、建築一式工事は9,000万円以上)でないこと
    ※令和7年2月の建設業法施行令改正により、従前の「4,000万円(8,000万円)以上」から引き上げされました。

また令和7年2月の建設業法施行令改正により、以下の条件を全て満たせば、専任工事でも営業所技術者等と配置技術者の兼務が認められるようになりました。

  1. 工事契約:当該営業所において締結された工事であること
  2. 請負金額:1億円(建築一式工事は2億円)未満
  3. 兼任現場数:1現場
  4. 営業所と工事現場の距離:1日で巡回可能かつ移動時間が概ね2時間以内
  5. 下請次数:3次まで
  6. 連絡員の配置:監理技術者等との連絡を行う者を配置
  7. 施工体制を確認する情報通信技術の措置:遠隔から現場作業員の入退場が確認できるシステム導入
  8. 人員の配置を示す計画書の作成、保存等:国交省HPに参考様式あり
  9. 現場状況の確認のための情報通信機器の設置:遠隔の現場と必要な情報のやりとりを確実にできるスマホ、タブレット、WEBシステム等導入

実務上、営業所技術者等と監理技術者は、それぞれの役割を適切に果たすために、原則として兼務させないことが一般的です。

4.下請業者の主任技術者の配置免除

主任技術者の配置は、原則全ての工事現場に義務付けられています。
負担が大きいため、2020年10月に改正された建設業法によって導入された「専門工事一括管理施工制度」に基づく特例措置があります。

一定の条件を満たす場合に、建下請業者の工事現場への主任技術者の配置が免除できます。

  1. 特定専門工事が対象で、下請代金の合計額が3,500万円未満「鉄筋工事」又は「型枠工事」であること
  2. 一次下請Aは、当該特定専門工事と同一種類の建設工事に関して、1年以上の指導監督的な実務経験を有する主任技術者を配置していること。
  3. 当該特定専門工事について、再下請を行わないこと
  4. 元請業者と下請業者の間で、下請業者の主任技術者の配置を要しないことについて、書面による合意があること
    この際、一次下請Aは、注文者の書面による承諾を得る必要がある
主任技術者の配置免除

特定の専門工事において、元請の適切な管理体制と下請の一定の実務経験を前提に、主任技術者の重複配置を緩和する制度です。
適用には厳格な要件があるため、該当するかどうかを慎重に判断する必要があります。

ちょっと古い情報の動画ですが、参考としてYoutube動画をアップしています。