会社の命運を握る「専任技術者」とは?許可を守り抜くための必須知識をやさしく解説

建設業の許可を取るために、絶対に欠かせない「二つの柱」があります。
一つは、「経営のリーダー(経営業務の管理責任者)」です。
そしてもう一つが、今回お話しする「技術の責任者(専任技術者)」です。

この二つが揃って初めて、会社は許可という「許可証」を手にできる機会を与えられます。
今日はこの「専任技術者(営業所にずっといて、技術のサポートをする人)」について、一歩ずつ丁寧に解説します。

1.専任技術者は、会社の「技術の守り神」です

「専任技術者」という言葉は、少し難しく聞こえるかもしれませんね。
令和6年の法律改正では、新しく「営業所技術者」という名前もつきました。

この人の役割は、大きく分けて二つあります。

  1. 正しい契約を結ぶこと
    工事の注文を受けるとき、金額や工期(工事を終わらせるまでの期間)が無理なものになっていないか、プロの目でチェックします。
  2. 現場を支えること
    実際に現場で働く「配置技術者(現場で直接指揮をとる人)」が困らないよう、営業所からバックアップします。

つまり、会社が「無茶な工事」をして倒産したり、事故を起こしたりしないように見守る「守り神」のような存在なのです。

😎 「専任」という言葉の本当の意味

この「専任」という言葉には、とても重い意味があります。
役所からは、「常勤(毎日しっかり出勤していること)」と「専ら従事(その仕事だけに集中すること)」の二つが求められます。

具体的には、以下のような人は「専任」とは認められません。

  • 家が遠すぎて、毎日通うのが無理な人
  • 他の会社の役員をしていたり、自分の商売を別に持っていたりする人
  • 別の場所で「宅建の責任者」など、他の法律で『そこにいなさい』と決められている人

「名前だけ貸してくれればいいよ」という考えは、絶対に通用しません。
大阪府などの自治体では、営業所の電気代が安すぎる(=人がいない証拠)だけで、「本当にそこに技術者がいるのか?」と調査が入ることもあるのです。

2.どうすれば「専任技術者」になれるの?

専任技術者になるためには、その業種についての「専門知識」が必要です。
主に、次の3つのルートがあります。

  1. 国家資格ルート(一番おすすめ!)
    1級や2級の「施工管理技士(工事の指揮ができる資格)」などを持っている人です。
    資格があれば、それだけで「実力がある」と認められます。
  2. 学校卒業 + 実務経験ルート
    指定された学科(建築学や土木工学など)を卒業している人です。
    • 大学・高専卒業なら: その後3年以上の実務経験
    • 高校卒業なら: その後5年以上の実務経験 これで認められます。
  3. 10年間の実務経験ルート(根気が必要です)
    資格も指定学科の卒業もなくても、その工事を「10年以上」経験していれば認められます。
    ただし、この「10年」を証明するのは、実はとても大変なお仕事です。

😅 実務経験を証明するための「証拠」集め
「10年やってきたから大丈夫!」と言っても、役所は口約束では信じてくれません。
客観的(誰が見ても明らかであること)な証拠が必要です。

  • 工事の契約書や注文書
    「どんな工事」を「いつ」やったかが詳しく書いてある書類です。
  • お金のやり取りがわかる通帳
    その工事の代金が、間違いなく会社に入っている証拠を見せます。
  • 厚生年金の記録
    その期間、間違いなくその会社で働いていたことを証明します。

最近では、ハンコがいらない「電子申請(パソコンで手続きすること)」が増えました。
便利になった反面、ハンコの代わりに「年金事務所の公的な書類」などを厳しく求められるようになっています。

😃 令和5年からの新しいルール(チャンスが増えました!)
ここで、経営者のみなさまに朗報(良いニュース)があります。
令和5年7月から、ルールが少し優しくなりました。

今まで、「2級の試験に受かったけれど、まだ免許(免状)はもらっていない」という状態では、実務経験を短くすることはできませんでした。
しかし新しいルールでは、「1次検定(筆記試験のようなもの)」に合格しただけでも、学校卒業と同じ扱いをしてくれるようになったのです。

例えば、資格がなくて10年の経験が必要だった業種でも、2級の1次試験に受かっていれば「その後5年の経験」で済む場合があります。
これは、若手の技術者を早く責任者にしたい会社にとって、大きなチャンスです!

3.専任技術者がいなくなると、会社はどうなる?

これが一番怖いお話です。
専任技術者は、許可を維持するための「絶対条件」です。
もし、技術者が急に辞めたり、亡くなったりして、代わりの人がすぐに見つからない場合……。

残念ながら、その瞬間に「建設業の許可」は取り消しの対象になってしまいます。

許可がなくなれば、500万円以上の大きな工事は一切受けられません。
売上がなくなるだけでなく、銀行からの信頼も失ってしまいます。

売上を伸ばすことは「攻め」の経営ですが、技術者を育て、守ることは「守り」の経営です。
この両方の車輪がうまく回っていないと、会社という車は前に進めません。

4.まとめ:会社を一生守るための「3つの約束」

専任技術者のルールは、年々細かく、厳しくなっています。
しかし、これらはすべて「発注者の保護」と「会社の信頼」のためにあるものです。
最後に、経営者さまが今日から取り組める「まとめ」をお伝えします。

  1. 技術者の「もしも」を常に想定しましょう
    専任技術者の代わりは、すぐには見つかりません。
    今の担当者が辞めたり、定年を迎えたりしたとき、誰に引き継ぐか。
    この「技術者のバトン」を準備しておくことが、一番の経営課題です。
  2. 若手には「1次試験」から挑戦してもらいましょう
    令和5年からの新ルールで、合格すれば実務経験がぐっと短縮されます。
    「まずは1次試験だけでも受けてみよう」と声をかけること。
    それが、数年後に会社を救う「許可の種」になります。
  3. 「証拠(書類)」を宝物のように扱いましょう
    10年の経験を証明するのは、記憶ではなく「記録」です。
    契約書、注文書、通帳、そして年金の記録。
    これらが整っている会社こそが、役所からも取引先からも「強い会社」だと認められます。

「攻め」の売上と、「守り」の技術者。
この両方の車輪をバランスよく回すことが、10年、20年と続く優良企業への道です。

法令遵守は、会社を縛る鎖ではなく、荒波から守る「鎧」になります。
新しいルールを味方につけて、自信を持って大きな現場へ挑んでいきましょう。
みなさまの会社のさらなる発展を、心から願っております!

📚 参考:専任技術者に関する主な条文と書類

  • 建設業法 第7条第2号(一般建設業の技術者のルール)
  • 建設業法 第15条第2号(特定建設業の技術者のルール)
  • 専任技術者証明書(様式第8号)
  • 実務経験証明書(様式第9号)
  • 指導監督的実務経験証明書(様式第10号)

あなたの会社の「技術の守り神」を、これからも大切にしていってくださいね。
心から応援しております!