現場のプライドを「信頼」に変える!建設業許可の要「誠実性」完全ガイド

「俺たちは現場で汗を流して、工期も守って、まっとうに商売をやってきた。それなのに、なぜ役所から『誠実かどうか』なんて審査されなきゃいけないんだ?」

先日、許可取得のご相談に来られた社長様が、少し複雑な表情でそう仰いました。
そのお気持ち、よく分かります。
日々、信頼第一で現場を収めているプロの方々にとって、「誠実性」という言葉を改めて突きつけられるのは、どこか試されているような気分になるものかもしれません。

しかし、建設業許可における「誠実性」とは、単なる道徳心の話ではありません。
それは、数千万円、時には数億円というお金が動き、人々の命を預かる建物を造るという「公的な責任」を負うにふさわしいかどうかを、法律のモノサシで測る非常に重要なステップなのです。

建設業許可には「経営管理能力」「技術力」「財産的基礎」など、クリアすべき高い壁がいくつもありますが、今回はその中でも意外と見落とされがちな「誠実性(せいじつせい)」という要件に絞って解説します。

※「経営業務の管理責任者」や「営業所専任技術者」など、他の柱についてはまた別の記事で詳しくお伝えします。

1.建設業法が求める「誠実性」の正体とは?

建設業法第7条(一般)および第15条(特定)には、許可の基準が定められています。
その中の一つに、「請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと」という一文があります。

これが「誠実性」の要件です。
行政の審査において、具体的にどのような行為が「NG」とされるのか、手引きの言葉を噛み砕いて見ていきましょう。

不正な行為
これは分かりやすい「法律違反」です。
請負契約を結ぶとき、あるいは工事を進める中で、相手を騙す(詐欺)、脅す(脅迫)、預かったお金を勝手に使う(横領)といった行為を指します。

不誠実な行為
こちらは「契約違反」です。
工事の内容がデタラメだったり、正当な理由なく工期を大幅に遅らせたり、天災などの不可抗力で損害が出た際の負担について契約を無視したりする行為を指します。

つまり、「嘘をつかない」「約束を守る」という、商売人として当たり前のことが法律で明文化されているのです。

2.「誰」の誠実さがチェックされるのか?(対象者の範囲)

ここが非常に重要なポイントです。
チェックされるのは、社長様一人だけではありません。
法人であれば、その組織を実質的に支配しているメンバー全員が対象となります。

役員等
取締役や執行役はもちろん、名前が「顧問」や「相談役」であっても、会社に対して取締役と同等以上の支配力を持っている人は含まれます。
さらに、「総株主の議決権の5%以上を持つ株主」や、「5%以上の出資をしている個人」も含まれるという点に注意してください。

一定の使用人
これは「支配人」や、本店以外の支店・営業所で契約を結ぶ権限を持っている「支店長」や「営業所長」のことです。
現場の責任者だけでなく、契約のハンコを押す立場にある人はすべて対象になります。

3.一発アウト!基準を満たさない具体的なケース

「自分たちは大丈夫だ」と思っていても、過去の経歴が足を引っ張るケースがあります。
特に注意が必要なのは、建設業以外の免許でのトラブルです。

  • 他の法律での処分: 建築士法や宅地建物取引業法などの規定により、不正や不誠実な行為をしたとして免許の取消処分を受け、その日から5年を経過していない場合。

もし、役員の中に過去5年以内に不動産業などで免許取消を受けた人がいる場合、その法人は誠実性の基準を満たさないとみなされ、許可は下りません。
これを隠して申請しても、役所の照会ですぐに判明します。

4.誠実性を証明するために必要な「証明書類」

実は、誠実性については「私は誠実です」という証拠を大量に出すわけではありません。
基本的には、申請書の中にある「欠格要件に該当しない旨の誓約書」に署名することで、「私たちは問題ありません」と宣言する形をとります。

しかし、その宣言が嘘ではないことを裏付けるために、以下の公的な証明書類を添付します。

役員等全員分の「登記されてないことの証明書」
これは、認知症、知的障害、精神上の障害などにより、成年被後見人や被保佐人として登記されていないことを法務局が証明する書類です。
「判断能力がしっかりしており、責任を持って契約を結べる状態であること」を証明します。

役員等全員分の「身分証明書」
本籍地の市区町村が発行するもので、破産者でないことなどを証明する書類です。
(※運転免許証などのコピーではなく、役所が発行する専用の書類です)

株主等一覧表
議決権の5%以上を持つ株主を明確にし、その人々もチェックの対象であることを明らかにします。

5.社長、ここが「見落としがちな罠」です!

実務上、特に気をつけていただきたいのが「非常勤役員」の存在です。

審査の対象には「非常勤役員」も含まれます。
「名前を貸しているだけの親戚だから現場には関わっていない」
「名前だけの役員だから過去の経歴は関係ないだろう」
という言い訳は通用しません。

もし、非常勤の取締役が過去に別の会社で不誠実な行為に関与していた場合、今の会社全体の許可に影響を及ぼします。
役員を新たに登記する際や、許可申請の前には、必ずその方のバックグラウンド(特に過去5年以内の他業種での処分歴)を確認しておくことが、会社を守ることに繋がります。

逆に、既に許可を受けて継続して建設業を営んでいる業者様については、過去に問題を起こした事実が確定していない限り、基本的にはこの基準を満たしているものとしてスムーズに取り扱われます。

まとめ:誠実性は「許可証」という看板の土台

「誠実性」という要件は、一見すると当たり前すぎて軽視されがちです。
しかし、国が「この業者に許可を与えても大丈夫だ」と太鼓判を押すための、いわば「最低限のパスポート」なのです。

書類上の誓約一つをとっても、そこには「これまでのプロとしての歩みに嘘はない」という重みが込められています。
この土台がしっかりしているからこそ、その上に「技術力」や「資金力」という武器が積み重なり、最強の「許可業者」という看板が完成するのです。

次に行うべきこと: まずは、自社の「全部事項証明書(登記簿謄本)」を開いて、役員の一覧を確認してください。
そして、5%以上の株主が誰であるかを再確認しましょう。
そのメンバーの中に、過去5年以内に建設関連の免許でトラブルがあった人がいないか、念のため「指差し確認」をすることから、許可取得の物語は始まります。