ゼロからわかる!「消防施設工事業許可」の取り方と知っておくべきポイント
消防設備士として、あなたの技術と情熱をさらに大きく花開かせたい。
そうお考えなら、「消防施設工事業許可」の取得は避けて通れない大切なステップです。
この記事では、消防施設工事業許可の取得要件から見落としがちなポイントまで、あなたが知りたい情報をわかりやすく解説していきます。
1.「消防施設工事業」の範囲を明確に!作業内容と他業種との違い
消防施設工事業は、建物や施設における火災の発生を感知し、消火し、被害を最小限に抑えるための設備を設置する、私たちの命と財産を守る非常に重要なお仕事ですね。
具体的にどのような作業が含まれるのか、そして他の業種とどう違うのか、ご説明しますね。
「建設工事の内容を定める告示」に基づく消防施設工事業の作業内容
まず、「建設工事の内容を定める告示」という国のルールでは、消防施設工事業は以下のように定義されています。
- 消防施設工事
消防施設工事とは、火災報知設備、消火設備、避難設備若しくは消火活動に必要な設備を設置する工事又はこれらと一体として、その機能を発揮するために必要な排煙設備、連結送水管若しくは連結散水設備を設置する工事
簡単に言うと、火災の発生を知らせたり、火を消したり、安全に避難したり、消防隊が活動しやすくするための設備を設置する工事全般を指します。
「建設業許可事務ガイドラインの例示」に基づく具体的な作業内容
次に、「建設業許可事務ガイドライン」という、許可を出す側の行政が参考にしている資料には、もっと具体的な例が載っています。
これらの例を一つずつ詳しく見ていきましょう。
- 屋内消火栓設置工事
- 建物内部に設置される消火栓(ホースとノズルが収納された箱)と、それに水を供給するための配管、ポンプ、貯水槽などを設置する工事です。火災発生時に建物内で初期消火を行うための重要な設備です。
- スプリンクラー設置工事
- 天井などに設置されたヘッドから自動的に水を散水し、火災を感知・消火する設備を設置する工事です。配管、ポンプ、貯水槽、感知器なども含みます。大規模な建物や避難困難な施設で義務付けられています。
- 泡消火設備設置工事
- 油火災や化学火災など、水では消火しにくい火災に対応するため、泡消火薬剤と水を混ぜて泡を放出し消火する設備を設置する工事です。危険物施設や駐車場などで使われます。
- 不活性ガス消火設備設置工事
- 電気室やサーバー室、美術館など、水による消火が不適切な場所で、窒素や二酸化炭素などの不活性ガスを放出し、酸素濃度を下げて消火する設備を設置する工事です。
- 動力消防ポンプ設置工事
- 自衛消防隊などが使用する、移動式の消防ポンプや、それに関連する設備の設置工事です。
- 火災報知機設置工事
- 建物内の火災を煙や熱で感知し、警報ベルや音声で建物内に知らせる設備(自動火災報知設備など)を設置する工事です。感知器、受信機、発信機、警報装置などを設置します。
- 漏電火災警報機設置工事
- 電気配線の漏電を感知し、火災の危険があることを知らせる警報機を設置する工事です。
- 非常警報設備設置工事
- 手動で非常ベルなどを鳴らし、避難を促す設備を設置する工事です。
- 金属製避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋又は排煙設備の設置工事
- 避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋: 火災発生時に安全に建物から脱出するための避難器具を設置する工事です。
- 排煙設備: 火災時に発生する煙を建物外に排出することで、避難経路を確保したり、消防隊の活動を容易にしたりするための設備を設置する工事です。排煙口、排煙ファン、ダクトなどが含まれます。
- ここが重要です!
消防施設工事業の許可は、あくまで「消防設備」の設置に特化したものです。建物全体の建築工事や、一般的な給排水設備・電気設備の設置とは区別されます。例えば、「建物を建てる」場合は建築一式工事、「建物内の一般的な給排水配管」は管工事、といった具合です。
間違いやすい他の業種との切り分け
ここがとても大切なポイントです。
消防施設工事業と間違えやすい業種がいくつかありますので、しっかり区別できるようにしましょう。
- 管工事との違い
- 管工事は、給排水、給湯、冷暖房、ガスなどの「建物内部の設備配管や、建物に引き込む範囲の配管」を設置する工事です。
- 消防施設工事業は、配管を行う点では共通しますが、その目的が「消防のための機能」に限定されます。例えば、スプリンクラーや屋内消火栓の配管は消防施設工事ですが、通常の給水管や排水管の設置は管工事です。
- 切り分けのポイント:「火災の消火・報知・避難」が主目的の配管や設備であれば消防施設工事、それ以外の一般的な給排水・空調・ガス配管であれば管工事。ただし、消火設備への水源供給のための配管など、一部重複する部分もあります。
- 電気工事との違い
- 電気工事は、発電設備、変電設備、送配電設備、建物内の電気設備(照明、コンセントなど)の設置など、「電気工作物の設置や電気配線」 を行う工事です。
- 消防施設工事業では、火災報知器や警報設備、消火ポンプの制御盤など、電気を使う設備を設置します。
- 切り分けのポイント:「建物全体の電気供給や照明・コンセント」が電気工事、「消防設備の電源供給や信号線、制御」が消防施設工事。自動火災報知設備のように、電気配線が主体となる設備は、消防施設工事業の範囲です。
- 機械器具設置工事との違い
- 機械器具設置工事は、工場生産設備、運搬機器、立体駐車場など、「特定の機能を持つ機械器具そのものを設置する」 工事です。消防設備の中にもポンプや制御盤など機械的な要素はあります。
- 切り分けのポイント: 機械器具設置工事は、幅広い産業機械の設置が対象ですが、消防施設工事業は、その中でも「消防の用途に供される設備」 に特化しています。例えば、ただのポンプ設置は機械器具設置工事となりえますが、消防ポンプの設置は消防施設工事です。
- 建築一式工事との違い
- 建築一式工事は、建物全体を総合的に請け負う工事です。消防設備は建物の内部に設置されますが、建物の躯体や構造そのものを造るものではありません。
- 切り分けのポイント: 「建物そのもの」を造るのが建築一式工事、「建物の中に消防に関するシステムを組み込む」のが消防施設工事です。
- 建築一式工事は、建物全体を総合的に請け負う工事です。消防設備は建物の内部に設置されますが、建物の躯体や構造そのものを造るものではありません。
2.「消防施設工事業」で一般建設業許可を取得するための要件や注意点
ここからは、実際に許可を取得するための大切な要件について、最新の情報も踏まえてご説明しますね。
以前よりも緩和された部分もありますので、ぜひ前向きにご検討ください。
建設業許可の5つの基本要件
一般建設業許可を取得するためには、大きく分けて以下の5つの要件を満たす必要があります。
- 経営業務の管理責任者等
- 営業所ごとに置く専任の技術者(旧:専任技術者)
- 財産的基礎又は金銭的信用
- 欠格要件に該当しないこと
- 誠実性
一つずつ、分かりやすくご説明しますね。
1.経営業務の管理責任者等
以前は「経営業務の管理責任者(通称:経管)」という、かなり厳しい要件がありましたが、令和2年10月1日からは「経営業務の管理責任者等」という新しい要件に緩和されました。
これは、経営経験のある方がいなくても、経験のある方を補佐する体制が整っていれば許可が取れるようになったということです。
具体的には、以下のいずれかに該当する必要があります。
- (A)経営業務の管理責任者としての経験を持つ方
- 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
- 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験を有する者
- 建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者
- (B)適切な経営体制が構築されている方
- 建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
- 5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有する者
さらに、以下を有するものを置く必要があります。- 申請を行う会社で、建設業の財務管理について役員等に次ぐ職制上の地位の経験を5年以上有する者
- 申請を行う会社で、建設業の労務管理について役員等に次ぐ職制上の地位の経験を5年以上有する者
- 申請を行う会社で、建設業の業務運営について役員等に次ぐ職制上の地位の経験を5年以上有する者
ここがポイント:- 以前のように社長さんや役員の方が必ずしも長年の建設業経営経験を持っている必要がなくなりました。経験豊富なナンバー2の方や、会社の財務・労務をしっかりと管理できる方がいれば、許可取得の道が開ける可能性が高まりました。
- 常勤役員等は、原則としてその会社の役員や個人事業主でなければなりません。
- 経験を証明する書類(確定申告書、工事請負契約書など)が必要になりますので、日ごろからきちんと保管しておくことが大切です。
2.営業所ごとに置く専任の技術者(旧:専任技術者)
以前は「専任技術者」と呼ばれていましたが、要件の本質は変わりません。
各営業所に、その業種に関する専門知識と経験を持った技術者(「営業所技術者」と呼ぶこともあります)を常勤で配置する必要があります。
消防施設工事業の場合、以下のいずれかの要件を満たす方が必要です。
- (A)国家資格を持っている方
- 建設業法「技術検定」:合格証明書
- 一級建築施工管理技士:合格後実務経験3年以上
- 一級建築施工管理技士補:合格後実務経験3年以上
- 二級建築施工管理技士(建築、躯体、仕上げ):合格後実務経験5年以上
- 二級建築施工管理技士補:合格後実務経験5年以上
- 一級電気工事施工管理技士:合格後実務経験3年以上
- 一級電気工事施工管理技士補:合格後実務経験3年以上
- 二級電気工事施工管理技士:合格後実務経験5年以上
- 二級電気工事施工管理技士補:合格後実務経験5年以上
- 一級管工事施工管理技士:合格後実務経験3年以上
- 一級管工事施工管理技士補:合格後実務経験3年以上
- 二級管工事施工管理技士:合格後実務経験5年以上
- 二級管工事施工管理技士補:合格後実務経験5年以上
- 消防法「消防設備士試験」:免状
- 甲種消防設備士
- 乙種消防設備士
- 国土交通大臣が認める登録基幹技能者
- 登録消火設備基幹技能者
- 建設業法「技術検定」:合格証明書
- (B)実務経験が豊富な方
- 消防施設工事業に関する実務経験が10年以上ある方
- 指定学科(建築学、機械工学、電気工学)を卒業している場合、経験年数が短縮されます。
- 大学・高専卒業:3年以上
- 高校卒業:5年以上
ここがポイント:- 実務経験10年というのは、個人事業主としての経験も含まれます。
- 経験を証明するためには、工事請負契約書、請求書、入金確認ができる通帳のコピーなど、具体的な証拠書類が必要になります。曖昧な記憶ではなく、客観的に証明できるものを用意しましょう。
- 専任性について: 営業所技術者は、その営業所に常勤している必要があります。他の会社に籍を置いていたり、他の事業を兼業していたりする場合は認められません。
3.財産的基礎又は金銭的信用
会社にお金がきちんとあるか、信用があるか、という要件です。
一般建設業許可の場合は、以下のいずれかを満たす必要があります。
- 自己資本が500万円以上あること
直前の決算書(貸借対照表)の「純資産の額」が500万円以上であればOKです。 - 500万円以上の資金を調達する能力があること
預金残高証明書などで500万円以上の残高を証明できればOKです。申請日直前の残高証明書が必要です。 - 許可申請直前の過去5年間、継続して建設業の許可を受けて営業した実績があること
すでに許可をお持ちで更新される方などはこちらの要件でクリアできます。
ここがポイント:- 「500万円以上の資金を調達する能力」は、申請時に一時的に預金残高を増やして証明することも可能です。ただし、一時的な増額は、将来の経営に影響が出ないよう、慎重に検討しましょう。
4.欠格要件に該当しないこと
建設業の許可を取り消されたり、法律に違反したりしたことがないか、という要件です。
具体的には、以下のような事項に該当しないことが必要です。
- 成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者
- 不正な手段で許可を受けた、または営業停止処分に違反したことにより許可を取り消されてから5年が経過していない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年が経過していない者
- 建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法などの特定法令に違反して罰金刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年が経過していない者
- 暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年が経過していない者
- 未成年者で、その法定代理人が上記のいずれかに該当する者
ここがポイント:- 役員全員、政令で定める使用人(支店長など)、総株主の議決権の5%以上を有する個人株主、個人事業主本人などが対象となります。
5.誠実性
請負契約の締結や履行において、不正または不誠実な行為をするおそれがないこと、という要件です。
- 具体的には、契約内容を故意に履行しなかったり、請負代金をごまかしたり、他社を欺いたりするような行為がないことが求められます。
- 過去に建設業法違反などがあった場合、誠実性が認められないことがあります。
社会保険について
建設業許可の取得には、社会保険(健康保険、厚生年金保険)への加入が必須です。
- 法人であれば、従業員の有無にかかわらず、社長さん一人でも加入義務があります。
- 個人事業主の場合も、従業員を5人以上雇用していれば加入義務があります。
- 雇用保険も、従業員を雇用していれば加入義務があります。
ここがポイント:- 未加入の場合は、許可申請前に加入手続きを済ませておく必要があります。これは、建設業界全体の健全化を目指す国の動きとして、非常に重視されています。
その他、許可取得に向けた注意点
- 申請書類の準備: 必要書類は非常に多く、複雑です。ご自身で準備される場合は、時間と労力がかかります。
- 実務経験の証明: 工事請負契約書、注文書、請求書、入金確認ができる通帳のコピーなど、具体的な証拠書類を漏れなく揃えることが重要です。
- 営業所の確認: 営業所がきちんと機能しているか(独立したスペースがあるか、看板があるかなど)も確認されます。バーチャルオフィスなどは認められません。
- 経営業務の管理責任者等と営業所技術者の兼任: 要件を満たせば、同一人物が両方を兼ねることも可能です。ただし、その人が実態としてそれぞれの業務を遂行できる状況にある必要があります。
- 役員変更登記など: 許可申請前に役員や商号変更などが必要な場合は、事前に済ませておく必要があります。
3.消防施設工事に関係する「消防設備士」について
消防施設工事を行う上で、建設業許可とは別に、「消防設備士」 の資格が非常に重要であり、場合によっては必須となります。
消防設備士とは?
消防設備士は、消防法に基づき、消防用設備等(消火器、火災報知器、スプリンクラーなど)の設置工事や整備(点検)を行うことができる国家資格者です。 消防設備は、火災時に人命と財産を守るための非常に重要な設備であるため、専門知識と技術を持つ消防設備士が工事や点検を行うことが義務付けられています。
消防設備士の種類
消防設備士の資格は、扱う消防設備の種類に応じて大きく以下の2種類に分かれます。
- 甲種消防設備士: 消防用設備等の工事と整備(点検) を行うことができます。
- 乙種消防設備士: 消防用設備等の整備(点検) のみを行うことができます。工事はできません。
さらに、それぞれの種別が、扱える消防設備の種類によって以下のように細かく分類されています(代表的なものを抜粋)。
- 甲種特類: 特殊消防用設備等(特殊な消火設備など)
- 甲種1類・乙種1類: 屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備などの消火設備(ポンプ、配管など水の系統)
- 甲種2類・乙種2類: 泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備などの消火設備(ガス・泡系統)
- 甲種3類・乙種3類: 避難器具(避難はしご、救助袋、緩降機など)
- 甲種4類・乙種4類: 自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、消防機関へ通報する火災報知設備、複合型居住施設用自動火災報知設備、特定小規模施設用自動火災報知設備などの警報設備(電気系統)
- 甲種5類・乙種5類: 金属製避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋、排煙設備などの避難設備・排煙設備
- 乙種6類: 消火器
- 乙種7類: 漏電火災警報器
消防設備士がなぜ重要なのか?
- 法律で義務付けられている: 消防法第17条の10により、消防用設備等の工事または整備は、消防設備士の免状の交付を受けている者でなければ行ってはならない、と定められています。つまり、建設業許可を持っていても、消防設備士の資格がなければ、多くの消防設備工事は法的に行えません。
- 建設業許可の営業所技術者要件: 建設業許可の「営業所技術者」の要件としても、特定の消防設備士資格が認められています。甲種消防設備士の資格は、直接的に消防施設工事業の技術力として評価されます。
- 専門性の証明: 消防設備士は、火災安全に関する専門知識と技術の証明であり、顧客や元請けからの信頼を得る上で非常に有利になります。
- 公共工事入札での有利性: 経営事項審査では直接的に評価されませんが、公共工事の入札において、有資格者数(特に消防設備士)は会社の技術力や体制を評価する上で考慮されることがあります。
ここが一番大切なポイントです!- もし御社が消防施設工事業の許可を取得して事業を本格的に展開されるのであれば、代表者または従業員の中に、必ず甲種消防設備士の資格を持つ方がいることが、事業運営上、そしてコンプライアンス上、極めて重要です。 建設業許可を取得するだけでなく、実務を行う上で必要な消防設備士の資格も併せて検討し、取得することをお勧めします。
消防施設工事業の許可取得は、決して簡単な道のりではありません。
許可取得はゴールではなく、新たなスタートラインです。
この情報が、あなたの事業の発展に少しでも貢献できれば幸いです。

