ゼロからわかる!「さく井工事業許可」の取り方と知っておくべきポイント
掘削工職人として、あなたの技術と情熱をさらに大きく花開かせたい。
そうお考えなら、「さく井工事業許可」の取得は避けて通れない大切なステップです。
この記事では、さく井工事業許可の取得要件から見落としがちなポイントまで、あなたが知りたい情報をわかりやすく解説していきます。
1.「さく井工事業」の範囲を明確に!作業内容と他業種との違い
さく井工事業は、地下水を採取するための井戸を掘削したり、温泉を掘ったり、あるいは地盤調査のためにボーリングを行ったりする、非常に専門的で、地下の恵みを生活や産業に役立てる大切なお仕事ですね。
具体的にどのような作業が含まれるのか、そして他の業種とどう違うのか、ご説明しますね。
「建設工事の内容を定める告示」に基づくさく井工事業の作業内容
まず、「建設工事の内容を定める告示」という国のルールでは、さく井工事業は以下のように定義されています。
- さく井工事
さく井機械等を用いてさく孔、さく井を行う工事又はこれらの工事に伴う揚水設備設置等を行う工事
簡単に言うと、専用の機械を使って地面に穴を掘り(さく孔)、井戸を造り(さく井)、さらにその井戸から水を汲み上げる設備(揚水設備)を設置する工事全般を指します。
「建設業許可事務ガイドラインの例示」に基づく具体的な作業内容
次に、「建設業許可事務ガイドライン」という、許可を出す側の行政が参考にしている資料には、もっと具体的な例が載っています。
これらの例を一つずつ詳しく見ていきましょう。
- さく井工事(一般的な井戸掘削)
- これは、地下水を利用するための井戸を掘る工事の総称です。住宅用、農業用、工業用など様々な目的で、掘削機械(ボーリングマシンなど)を使って地下深くを掘り進め、適切な地下水脈に到達させる作業です。地下の地質を正確に把握し、効率よく安全に掘削する技術が求められます。
- 観測井工事
- 地下水位の変化や地盤沈下の状況などを長期的に観測するために設置する井戸の工事です。環境調査や地質調査の一環として行われます。
- 還元井工事
- 地下水を汲み上げた後、利用した水を再び地下に戻すための井戸の工事です。地下水枯渇の防止や、地盤沈下対策、地中熱利用などで行われます。
- 温泉掘削工事
- 温泉の源泉を掘り当てるための掘削工事です。深度が深くなることが多く、高温の温泉水やガスを扱うため、高度な技術と安全対策が特に重要になります。
- 揚水設備工事
- 掘削した井戸から水を汲み上げるためのポンプや配管、貯水槽などの設備を設置する工事です。井戸の性能を最大限に引き出し、安定的に水を供給するためのシステムを構築します。これはさく井工事に「伴う」工事として、さく井工事業の範囲に含まれます。
- 井戸築造工事
- 掘削された穴に、井戸としての機能を持たせるために、ケーシング(井戸の壁となるパイプ)の挿入、スクリーン(地下水を取り込む部分)の設置、砂利の充填、水の試験汲み上げ(揚水試験)などを行い、井戸として完成させる工事です。
間違いやすい他の業種との切り分け
ここがとても大切なポイントです。
さく井工事業と間違えやすい業種がいくつかありますので、しっかり区別できるようにしましょう。
- とび・土工・コンクリート工事との違い
- とび・土工・コンクリート工事は、土砂の掘削・埋め戻し、地盤の改良、コンクリートの打設など、「構造物の基礎や大規模な土工事」 がメインです。例えば、建物の基礎杭を造るためのボーリングは、とび・土工・コンクリート工事に分類されることがあります。
- さく井工事業は、あくまで「水や温泉、地質調査などを目的とした井戸・ボーリング孔の掘削とそれに伴う設備設置」に特化しています。
- 切り分けのポイント:「水資源の確保や地中情報の取得が主目的の掘削」はさく井工事、「構造物の支持を目的とした掘削(杭工事など)や大規模な基礎工事」はとび・土工・コンクリート工事、と区別されます。
- 切り分けのポイント:「水資源の確保や地中情報の取得が主目的の掘削」はさく井工事、「構造物の支持を目的とした掘削(杭工事など)や大規模な基礎工事」はとび・土工・コンクリート工事、と区別されます。
- 管工事との違い
- 管工事は、給排水、給湯、冷暖房、ガスなどの「配管設備を設置する工事」です。井戸から汲み上げた水を建物内に引き込むための配管は、通常は管工事に該当します。
- さく井工事業の「揚水設備工事」は、あくまで井戸の「揚水機能」を果たすためのポンプ設置や、井戸の直近の配管など、井戸本体に付随する範囲とされます。
- 切り分けのポイント: 「井戸の水を地上に汲み上げるための設備」がさく井工事、「汲み上げた水を建物などに送るための一般的な配管」が管工事、と区別されることが多いです。
- 切り分けのポイント: 「井戸の水を地上に汲み上げるための設備」がさく井工事、「汲み上げた水を建物などに送るための一般的な配管」が管工事、と区別されることが多いです。
- しゅんせつ工事との違い
- しゅんせつ工事は、河川、港湾などの底にある土砂を掘削し、取り除く工事です。主に水中で行われる作業です。
- さく井工事業は、主に陸上で地盤を掘削し、縦穴を掘る工事です。
- 切り分けのポイント:「水底の土砂を浚う」のがしゅんせつ工事、「地面に井戸を掘る」のがさく井工事、と明確に区別されます。
- 土木一式工事との違い
- 土木一式工事は、道路、河川、ダム、橋梁など、大規模な構造物やインフラ全体の建設工事を指し、その中にさく井工事が含まれることもあります。
- さく井工事業は、その中でも「井戸掘削」という専門分野に特化したものです。
- 切り分けのポイント: 大規模な土木プロジェクト全体を請け負う場合、その一部としてさく井工事が含まれていれば土木一式工事となりますが、「井戸掘削」そのものを専門に行う場合はさく井工事業となります。
2.「さく井工事業」で一般建設業許可を取得するための要件や注意点
ここからは、実際に許可を取得するための大切な要件について、最新の情報も踏まえてご説明しますね。
以前よりも緩和された部分もありますので、ぜひ前向きにご検討ください。
建設業許可の5つの基本要件
一般建設業許可を取得するためには、大きく分けて以下の5つの要件を満たす必要があります。
- 経営業務の管理責任者等
- 営業所ごとに置く専任の技術者(旧:専任技術者)
- 財産的基礎又は金銭的信用
- 欠格要件に該当しないこと
- 誠実性
一つずつ、分かりやすくご説明しますね。
1.経営業務の管理責任者等
以前は「経営業務の管理責任者(通称:経管)」という、かなり厳しい要件がありましたが、令和2年10月1日からは「経営業務の管理責任者等」という新しい要件に緩和されました。
これは、経営経験のある方がいなくても、経験のある方を補佐する体制が整っていれば許可が取れるようになったということです。
具体的には、以下のいずれかに該当する必要があります。
- (A)経営業務の管理責任者としての経験を持つ方
- 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
- 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験を有する者
- 建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者
- (B)適切な経営体制が構築されている方
- 建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
- 5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有する者
さらに、以下を有するものを置く必要があります。- 申請を行う会社で、建設業の財務管理について役員等に次ぐ職制上の地位の経験を5年以上有する者
- 申請を行う会社で、建設業の労務管理について役員等に次ぐ職制上の地位の経験を5年以上有する者
- 申請を行う会社で、建設業の業務運営について役員等に次ぐ職制上の地位の経験を5年以上有する者
ここがポイント:- 以前のように社長さんや役員の方が必ずしも長年の建設業経営経験を持っている必要がなくなりました。経験豊富なナンバー2の方や、会社の財務・労務をしっかりと管理できる方がいれば、許可取得の道が開ける可能性が高まりました。
- 常勤役員等は、原則としてその会社の役員や個人事業主でなければなりません。
- 経験を証明する書類(確定申告書、工事請負契約書など)が必要になりますので、日ごろからきちんと保管しておくことが大切です。
2.営業所ごとに置く専任の技術者(旧:専任技術者)
以前は「専任技術者」と呼ばれていましたが、要件の本質は変わりません。
各営業所に、その業種に関する専門知識と経験を持った技術者(「営業所技術者」と呼ぶこともあります)を常勤で配置する必要があります。
さく井工事業の場合、以下のいずれかの要件を満たす方が必要です。
- (A)国家資格を持っている方
- 建設業法「技術検定」:合格証明書
- 一級土木施工管理技士:合格後3年以上の実務経験
- 一級土木施工管理技士補:合格後3年以上の実務経験
- 二級土木施工管理技士(土木、鋼構造物塗装、薬液注入):合格後5年以上の実務経験
- 二級土木施工管理技士補(土木、鋼構造物塗装、薬液注入):合格後5年以上の実務経験
- 一級管工事施工管理技士:合格後3年以上の実務経験
- 一級管工事施工管理技士補:合格後3年以上の実務経験
- 二級管工事施工管理技士:合格後5年以上の実務経験
- 二級管工事施工管理技士補:合格後5年以上の実務経験
- 一級造園施工管理技士:合格後3年以上の実務経験
- 一級造園施工管理技士補:合格後3年以上の実務経験
- 二級造園施工管理技士:合格後5年以上の実務経験
- 二級造園施工管理技士補:合格後5年以上の実務経験
- 技術士法「技術士試験」:登録証
- 上下水道「上水道及び工業用水道」・総合技術監理(上下水道「上水道及び工業用水道」)
- 民間資格:認定証明書
- 地すべり防止工事士:登録後1年以上の実務経験
- 職業能力開発促進法「技能検定」:合格証書
検定職種の等級区分が二級のものは、合格後1年以上の実務経験が必要(平成16年4月1日以降の合格者は実務経験3年以上必要)- さく井
- 建設業法「技術検定」:合格証明書
- (B)実務経験が豊富な方
- さく井工事業に関する実務経験が10年以上ある方
- 指定学科(土木工学、鉱山学、機械工学、衛生工学)を卒業している場合、経験年数が短縮されます。
- 大学・高専卒業:3年以上
- 高校卒業:5年以上
ここがポイント:- 実務経験10年というのは、個人事業主としての経験も含まれます。
- 経験を証明するためには、工事請負契約書、請求書、入金確認ができる通帳のコピーなど、具体的な証拠書類が必要になります。曖昧な記憶ではなく、客観的に証明できるものを用意しましょう。
- 専任性について: 営業所技術者は、その営業所に常勤している必要があります。他の会社に籍を置いていたり、他の事業を兼業していたりする場合は認められません。
3.財産的基礎又は金銭的信用
会社にお金がきちんとあるか、信用があるか、という要件です。
一般建設業許可の場合は、以下のいずれかを満たす必要があります。
- 自己資本が500万円以上あること
直前の決算書(貸借対照表)の「純資産の額」が500万円以上であればOKです。 - 500万円以上の資金を調達する能力があること
預金残高証明書などで500万円以上の残高を証明できればOKです。申請日直前の残高証明書が必要です。 - 許可申請直前の過去5年間、継続して建設業の許可を受けて営業した実績があること
すでに許可をお持ちで更新される方などはこちらの要件でクリアできます。
ここがポイント:- 「500万円以上の資金を調達する能力」は、申請時に一時的に預金残高を増やして証明することも可能です。ただし、一時的な増額は、将来の経営に影響が出ないよう、慎重に検討しましょう。
4.欠格要件に該当しないこと
建設業の許可を取り消されたり、法律に違反したりしたことがないか、という要件です。
具体的には、以下のような事項に該当しないことが必要です。
- 成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者
- 不正な手段で許可を受けた、または営業停止処分に違反したことにより許可を取り消されてから5年が経過していない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年が経過していない者
- 建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法などの特定法令に違反して罰金刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年が経過していない者
- 暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年が経過していない者
- 未成年者で、その法定代理人が上記のいずれかに該当する者
ここがポイント:- 役員全員、政令で定める使用人(支店長など)、総株主の議決権の5%以上を有する個人株主、個人事業主本人などが対象となります。
5.誠実性
請負契約の締結や履行において、不正または不誠実な行為をするおそれがないこと、という要件です。
- 具体的には、契約内容を故意に履行しなかったり、請負代金をごまかしたり、他社を欺いたりするような行為がないことが求められます。
- 過去に建設業法違反などがあった場合、誠実性が認められないことがあります。
社会保険について
建設業許可の取得には、社会保険(健康保険、厚生年金保険)への加入が必須です。
- 法人であれば、従業員の有無にかかわらず、社長さん一人でも加入義務があります。
- 個人事業主の場合も、従業員を5人以上雇用していれば加入義務があります。
- 雇用保険も、従業員を雇用していれば加入義務があります。
ここがポイント:- 未加入の場合は、許可申請前に加入手続きを済ませておく必要があります。これは、建設業界全体の健全化を目指す国の動きとして、非常に重視されています。
その他、許可取得に向けた注意点
- 申請書類の準備: 必要書類は非常に多く、複雑です。ご自身で準備される場合は、時間と労力がかかります。
- 実務経験の証明: 工事請負契約書、注文書、請求書、入金確認ができる通帳のコピーなど、具体的な証拠書類を漏れなく揃えることが重要です。
- 営業所の確認: 営業所がきちんと機能しているか(独立したスペースがあるか、看板があるかなど)も確認されます。バーチャルオフィスなどは認められません。
- 経営業務の管理責任者等と営業所技術者の兼任: 要件を満たせば、同一人物が両方を兼ねることも可能です。ただし、その人が実態としてそれぞれの業務を遂行できる状況にある必要があります。
- 役員変更登記など: 許可申請前に役員や商号変更などが必要な場合は、事前に済ませておく必要があります。
さく井工事業の許可取得は、決して簡単な道のりではありませんが、要件が緩和されたことで、以前よりも取得しやすくなっています。
許可取得はゴールではなく、新たなスタートラインです。
この情報が、あなたの事業の発展に少しでも貢献できれば幸いです。

