「工事進行基準って何?」行政書士がゼロから解説する会計のルール
建設業を営む皆さま、いつもお仕事お疲れ様です!
「工事進行基準」って、会計の専門用語みたいで難しく聞こえますよね。
「完成基準と何が違うんや?」
「うちの工事に適用できるんかな?」と、
疑問に思うのは当然です。
今回は、この「工事進行基準」について、適用要件や計算方法も含めて、わかりやすく解説させていただきますね。
会計の知識は、会社を安定させるための大切な武器ですよ!💪
1.建設業の会計ルールは3つあります
建設業の工事請負契約に関する会計のルールは、主に以下の3つの基準があります。
それぞれの特徴を知ることが、正しい処理の第一歩です。
① 工事完成基準(完成基準)
<どんなルール?>
工事全体がすべて完了し、発注者に引き渡された会計期間に、その工事の売上と利益の全額をまとめて計上するシンプルな方法です。
原則として、「工事完成基準」が適用されます。特に小規模な工事や、原価総額の予測が難しい工事はこちらになります。
<メリット・デメリット>
- メリット:会計処理が簡単でわかりやすいです。
- デメリット:工期が数年にわたる場合、利益が完成した年に集中して計上され、業績が不安定に見えやすくなります(=経審などで不利になる可能性があります)。
② 工事進行基準(進行基準)
<どんなルール?>
長期にわたる大規模な工事について、進捗度(工事の進み具合)に合わせて、売上と利益を期間ごとに分割して計上するルールです。
例えるなら、長いマラソンを走っているとして、「今年は全体の50%走ったから、売上の50%を計上しよう」「来年は残りの50%を計上しよう」と、頑張った分だけをその年の成績として認めてもらえるような仕組みです。
<適用要件>
以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
- 請負金額(売上総額)が契約で明確に定まっていること。
- 工事にかかる総原価(費用総額)を合理的に見積もることができること。
- 決算期末の時点で、工事全体の進捗度を合理的な方法で算定できること。
<計算方法のポイント>
進捗率(原価比例法で算定)をもとに、当期の完成工事高を計算します。
当期の売上を求める際は、前期までに計上した売上を必ず差し引く必要があります。
ステップ1:進捗率の計算(原価比例法)
建設業で最も一般的に用いられる、原価比例法で進捗率を求めます。
これは「費用をどれだけ使ったか」で「工事がどれだけ進んだか」を判断する方法です。

ステップ2:完成工事高の累計額の計算
請負金額の総額に、ステップ1で求めた進捗率をかけることで、「工事開始から当期末までに計上すべき売上(完成工事高)の累計額」を計算します。

ステップ3:当期に計上する売上高(完成工事高)の計算
当期(今期)に計上すべき売上高を算出します。

このステップ3で、前期までに売上として計上した分を差し引くことで、「当期に新しく発生した売上」だけを正確に計上します。
<メリット・デメリット>
- メリット:
- 収益が安定する(平準化):数年にわたる工事でも、毎年安定した売上・利益を計上できます。これにより、決算書の見た目が安定し、金融機関からの評価や、公共工事を受けるために大切な経営事項審査(経審)の点数にも良い影響を与えることがあります。
- 経営実態の反映:その期の頑張りが、きちんと決算書に反映されます。
- デメリット:
- 会計処理が複雑:進捗度を正確に計算するための手間や、専門的な知識が必要になります。
③ 部分完成基準
<どんなルール?>
一つの大きな工事契約であっても、引き渡しや代金の決済が可能な「完成した部分」だけを切り離して、その都度売上と利益を計上するルールです。
例:1つの大規模な団地造成工事で、「A棟の基礎工事が完了し、それに対する代金を受け取った」といった場合、A棟の基礎工事分を先に売上として計上します。
<適用要件>
以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
- 契約書で、引き渡しや決済が可能な部分が明確に区分されていること。
- 区分された部分が単独で収益性を持つと認められること。
- 区分された部分について発注者への引渡しまたは検査が完了していること。
<メリット・デメリット>
- メリット:工事の途中で売上を計上できるため、完成基準よりも早期に収益を認識でき、資金繰りや業績の改善に役立ちます。
- デメリット:どこまでを「部分完成」と見なすかの判断が難しく、契約書や現場の状況を詳細に確認する必要があります。
2.契約変更や追加工事があった場合、進行基準はどうする?
工事の途中で設計変更や追加工事の依頼があるのは、建設業ではよくあることです。
このような場合、進行基準の計算も変更しなければなりません。
契約変更があった場合は、その変更が決まった時点で、以下の2つの項目を直ちに見積もり直します。
- 請負金額の総額(売上総額)
- 追加工事や仕様変更による増額・減額を反映させます。
- 工事原価の総額(原価総額)
- 追加で必要になった材料や人件費などの費用を反映させます。
重要なのは、過去に遡るのではなく、変更が決まった期末から、新しい請負金額と新しい原価総額に基づいて進捗率を計算し直すことです。
進行基準でよく聞く「原価総額」は何を指すの?
工事進行基準の計算で使う「工事の完成までに要すると見込まれる工事原価の総額」(原価総額)とは、その工事を完了させるまでに最終的にかかるであろうと予測されるすべての費用を指します。
これは、当初の見積もりが基礎になりますが、期末ごとに以下の費用を見積もり直し、より正確な総額を算出する必要があります。
- 材料費(資材の購入費)
- 労務費(現場で働く技能者さんへの賃金)
- 外注費(協力会社へ支払う費用)
- 経費(重機のリース代、保険料など)
この原価総額の見積もりの正確性こそが、進行基準の適用における最も重要なポイントであり、会社の原価管理能力が問われる部分となります。
3.完成基準と進行基準、あなたの会社はどっちを選ぶべき?
完成基準と進行基準のどちらを選ぶべきか、その判断は主に以下の3つの視点から行うことができます。
1.【規模と期間】工事の性質から判断する
最も基本となるのが、請け負う工事の規模と期間です。
- 工事完成基準が適しているケース
- 工事期間が短い:単年度で完成する工事がほとんどである場合。
- 請負金額が比較的小規模:工事一件の請負金額が大きくない場合。
- メリット:会計処理がシンプルでわかりやすいため、経理担当者の負担が軽くなります。
- 工事進行基準が適しているケース
- 長期大規模工事が多い:工期が2年以上にわたる大規模な工事を多く請け負う場合。
- メリット:売上・利益を年度ごとに計上できるため、単年度で利益が集中することがなく、業績が平準化(安定化)します。
2.【経営戦略】経審・融資の視点から判断する
公共工事の受注や、金融機関からの評価を重視する場合、会計基準の選択が直接影響します。
- 工事進行基準が有利に働く理由
工事進行基準を適用すると、利益が安定的に毎期計上されます。
これは、特に以下の点で会社に有利に働きます。- ① 経営事項審査(経審)対策:
経審では、過去2年または3年の平均完工高(売上高)や利益率が評価されます。
完成基準だと、工事が完成した年にのみ売上が集中し、完成しない年は売上が「ゼロ」に見えてしまい、平均点が低くなるリスクがあります。
進行基準なら毎年安定して計上されるため、経審の評価を安定させ、点数を高める効果が期待できます。 - ② 金融機関からの評価:
金融機関は、一時的な業績の変動よりも、安定した売上と利益の推移を評価します。
進行基準の方が、計画的で安定した経営を行っていると判断されやすくなります。
- ① 経営事項審査(経審)対策:
3.【管理能力】原価管理体制から判断する
工事進行基準は会計処理が複雑なため、これを適用できるかどうかは、会社の管理能力にかかっています。
- 工事進行基準を選ぶ上での注意点
- 原価管理の徹底が必要:
進行基準を適用するには、「工事総原価を合理的に見積もれること」が必須要件です。
期末ごとに正確な進捗率を算出するため、材料費、労務費、外注費などの原価を厳密に把握・管理できる体制が整っている必要があります。 - 処理の複雑さ:
毎年、すべての長期工事について進捗率を計算し、前年度分を差し引くなど、経理処理が複雑になります。
経理部門や外部の税理士との連携が非常に重要です。
- 原価管理の徹底が必要:
「工事進行基準」は、会計のルールとしては複雑に見えますが、その目的は、皆さんの会社がどれだけ堅実に、安定して利益を出しているかを正しく証明することにあります。
特に、公共工事の受注に欠かせない経営事項審査(経審)で良い評価を得るためには、この収益の平準化が非常に重要になってきます。
この情報が、あなたの事業の発展に少しでも貢献できれば幸いです。

