現場のプロを証明せよ!建設業許可の要「財産的要件」完全ガイド
「腕一本でやってきた。現場の仕事なら誰にも負けない。でも、役所の書類の話になるとさっぱりだ……」
「許可を取るには、銀行に何千万も入っていないとダメなのか?」
先日、ある建設業の社長様から、切実な表情でご相談をいただきました。
その社長様は、長年下請けとして素晴らしい実績を積み上げてこられましたが、いざ「元請から許可を取ってくれと言われた」段階で、高い壁にぶつかっておられました。
建設業許可には「人」「物」「金」の3つの大きなハードルがありますが、今回はその中でも、多くの社長様が不安を感じる「財産的要件(お金のルール)」に絞って解説します。
※「経営業務の管理責任者」や「営業所専任技術者」など、他の柱についてはまた別の記事で詳しくお伝えします。
1.なぜ建設業には「お金の証明」が必要なのか?
建設工事は、材料費の外注費、人件費など、先出しの費用が多額になります。
もし、請け負った会社が工事の途中で倒産してしまったら、発注者や下請け業者に多大な迷惑がかかります。
そのため、行政は「この会社なら、大きな工事を最後までやり遂げる体力があるな」ということを、数字で厳格にチェックするのです。
これが「財産的基礎・金銭的信用」と呼ばれる要件の正体です。
2.「一般建設業」のハードル:500万円の壁をどう超える?
まずは、多くの業者様が最初に目指す「一般建設業許可」から見ていきましょう。
実は、一般許可のハードルは、イメージされているほど高くありません。
以下のいずれか一つをクリアすれば良いのです。
ご自身の取得したい許可に合わせてご確認くださいね。
- 自己資本が500万円以上ある
直近の決算書(貸借対照表)を見てください。
「純資産の合計」が500万円以上あれば、それだけでクリアです。
- 500万円以上の「預金残高証明書」が出せる
「決算書では500万円に届かない……」という場合でも、諦めるのはまだ早いです。
銀行などの金融機関で「500万円以上の残高証明書」を発行してもらえれば、それが「資金調達能力がある」という証明になります。
ここで最大の注意点は、「残高の日付」が申請日の4週間(28日)以内でなければならないということです。
銀行の窓口で「発行してもらった日」ではなく、「何月何日時点の残高か」という日付が重要です。
- 5年間許可を持って営業した実績がある
これは更新の方や、すでに他の業種で許可を持っている方のための特例です。
5年間真面目に営業していれば、この要件はクリアしたとみなされます。
3.「特定建設業」のハードル:一気に跳ね上がる4つの条件
元請として大きな工事(下請代金の合計が5,000万円以上)を出す場合に必要となる「特定建設業許可」。
こちらのハードルは「一般」とは比べものにならないほど厳しくなります。
「特定」の場合は、残高証明書での救済はありません。
「直近の決算書」ですべてが決まります。
- 条件1:欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
簡単に言うと「赤字が溜まりすぎていないか」というチェックです。
貸借対照表の「繰越利益剰余金」がマイナスの額(欠損)が、資本金の額の20%以内に収まっている必要があります。
- 条件2:流動比率が75%以上であること
「1年以内に払うべきお金(流動負債)」に対して、「1年以内に入ってくるお金(流動資産)」がどれくらいあるかを見ます。
これが75%を下回ると、短期的な支払い能力が低いとみなされます。
「流動資産」を「流動負債」で割ったものが、75%以上であることを確認します。
- 条件3:資本金が2,000万円以上であること
法人の場合、登記されている資本金そのものが2,000万円以上必要です。
もし足りない場合は、申請前に「増資」を行う必要があります。
- 条件4:自己資本が4,000万円以上であること
貸借対照表の純資産の合計が4,000万円以上必要です。
これは「増資」だけでは解決できない場合が多く、日頃の積み上げが問われる厳しい基準です。
4.準備すべき「証明書類」
大阪府への申請において、実際に提出する書類は以下の通りです。
【一般建設業許可を申請する場合】
- 会社を設立してすぐ(1期目の決算前)の法人の場合
- 創業時における財務諸表(開始貸借対照表)
- 新規開業してすぐ(1期目の確定申告前)の個人の場合
- 創業時における財務諸表(開始貸借対照表)
- 金融機関が発行する500万円以上の預金残高証明書(申請日前28日以内の残高のもの)
- すでに1期以上の決算・確定申告を終えている法人の場合
- 直近の決算期における決算報告書
- 法人税の確定申告書のうち、税務署の受付印がある「別表一」の写し
- すでに1期以上の確定申告を終えている個人の場合
- 所得税の確定申告書のうち、税務署の受付印がある「第一表」および「第二表」の写し
- 青色申告決算書(または収支内訳書)
- 貸借対照表
【特定建設業許可を申請する場合】
- 新規設立した法人の場合 ※個人は2のみ
- 創業時における財務諸表(開始貸借対照表)
- すでに1期以上の決算・確定申告を終えている法人・個人の場合
- 法人の場合:直近の決算期における決算報告書 + 税務署の受付印がある法人税確定申告書「別表一」の写し
- 個人の場合:所得税確定申告書「第一表」「第二表」の写し + 青色申告決算書 + 貸借対照表
※税務署の受付印についての重要ルール
全ての申請において、税務署の受付印が必要です。
電子申告(e-Tax)の場合は、受付印の代わりに「受信通知(メール詳細)」を必ず添付してください。
なお、令和7年以降の申告分については、税務署の受付印は不要となります。
5.社長、ここが「落とし穴」です!
相談を受けた際、私が必ずお伝えする注意点がいくつかあります。
個人の「自己資本」は計算が特殊
個人の場合、貸借対照表の数字をそのまま見るのではありません。
「期首資本金 + 事業主借 + 事業主利益」の合計から「事業主貸」を差し引き、さらに利益留保性の引当金などを加算して算出します。
ご自身の計算で「500万円ある」と思っても、この計算で下回ってしまうケースがあるため要注意です。
資本金の増資特例
「資本金の額」については、直前の決算で基準を満たしていなくても、申請日までに増資を行えば認められる特例があります。
しかし、「自己資本(純資産)」の額についてはこの特例はなく、あくまで「決算書」の数字で判断されます。増資すればすべて解決するわけではないのです。
残高証明書の「鮮度」と「日付」
一般建設業で使う預金残高証明書は、「何月何日現在の残高か」という基準日が、申請日から数えて28日以内でなければなりません。
銀行に発行を依頼するタイミングと、役所へ行くタイミングを完璧に合わせる必要があります。
まとめ:数字は「これまでの信頼」の積み重ね
「財産的要件」は、一見すると冷たい数字の羅列に思えるかもしれません。
しかしそれは、社長がこれまで現場を収め、協力会社に支払い、コツコツと積み上げてきた「経営の足跡」を、国が認める形に翻訳したものです。
もし、今の決算書で基準に届かないとしても、ガッカリする必要はありません。
「あといくら増資すればいいのか?」
「次の決算でどこを改善すれば許可に届くのか?」
それを知ることが、地域に根を張る強い建設会社を作る第一歩になります。
次に行うべきこと: まずは、お手元に直近の「確定申告書」と「決算書」を用意してください。
法人の社長様なら、貸借対照表の右下にある「純資産合計」を見てください。
そこが500万円を超えていれば、おめでとうございます!第一関門は突破です。
もし届いていない場合は、メインバンクに「500万円以上の残高証明書をすぐに出せるか」を確認することから始めてみましょう。

