「令3条使用人」って誰のこと?行政書士がわかりやすく解説

建設業を営む皆さま、いつもお仕事お疲れ様です!

建設業許可は、主たる営業所(本店・本社)だけでなく、すべての営業所が適切に運営されていることを求められます。

特に、建設工事の請負契約は、金額も大きく、専門的な知識が必要です。

そのため、支店や営業所が勝手に契約を結んだり、杜撰な管理で工事を行ったりしないよう、各営業所にしっかりとした権限と責任を持った管理者を置くことが義務付けられています。

今回は、営業所の経営的な管理を担う、経営業務の管理責任者に準ずる非常に大切なポジションである令3条使用人について、優しく詳しく解説していきます。

1「令3条使用人」とは、ズバリ支店長営業所長のこと!

「令3条使用人」とは、建設業許可を受けた会社(法人)または個人事業主が、本店・本社以外の支店や営業所に配置する責任者を指す通称です。

この用語は、建設業法施行令第3条に由来しており、条文では以下のように定義されています。

使用人は、支配人及び支店又は営業所の代表者であるものとする。

この条文からもわかる通り、「令3条使用人」は、大きく分けて以下の二つの立場の方を指します。

  1. 支配人:会社法に基づき登記された支配人
  2. 支店又は営業所の代表者:役職名に関わらず、実質的にその営業所を代表する責任者

つまり、「令3条使用人」は、その支店や営業所が適切に建設工事を請け負い、契約通りに履行できるよう、現場の運営全体を任されている責任者なのです。

一般的には、支店長営業所長など、その営業所の代表者として、以下の重要な権限を委任されている方を指します。

  • 建設工事の請負契約の締結
  • 入札見積もりなど、契約に関する業務
  • 請け負った工事の履行に関する管理監督

令3条使用人は、本店・本社にいる経営業務の管理責任者の代わりに、従たる営業所で業務を適正に管理・監督する役割を担います。

令3条使用人に求められるのは、役職名や登記上の地位ではなく、実質的な権限と勤務実態です。

そのため令3条使用人は、必ずしも会社の役員(取締役など)である必要はありません

令3条使用人は、その定義が「支配人及び支店又は営業所の代表者であるもの」とされているため、役員ではない従業員でも選任できます。

2.令3条使用人の要件(なれる人の条件)

誰でも令3条使用人になれるわけではありません。

その役割の重要性から、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 令3条使用人は、その従たる営業所に常時勤務(フルタイムで継続的に勤務)していることが必須です。
    建設業許可事務ガイドラインでは、令3条使用人について「原則として、当該営業所において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画の下に毎日所定の時間中、その職務に従事している者がこれに該当する」と説明されています。
    • 他の営業所との兼務はできません。
    • 他社の常勤役員や、他の法令で専任が義務付けられている職(例:管理建築士)との兼務も、原則として認められません。
    • ただし、同一の営業所に常勤する営業所技術者(専任技術者)であれば、兼務することが認められます。
       
  2. 権限が代表者から委任されていること
    会社(法人)の代表者から、その営業所における請負契約の締結に関する権限を正式に委任されている必要があります。
     
  3. 欠格要件に該当しないこと
    建設業法で定められている欠格要件(例:過去に建設業法違反で罰金刑を受けた、暴力団員等であるなど)に該当しないことも必要です。
    • また過去5年間法令違反や不誠実な行為による処罰・処分がないかことの誠実性も求められます。

3.令3条使用人から経管に!

以前は、経営常務の管理責任者(経管)になるためには「取締役としての経営経験」が必須でした。

しかし、2020年(令和2年)の法改正により、実質的に経営管理を担ってきた経験が評価されるようになりました。

令3条使用人は、従たる営業所(支店や営業所)において、契約の締結や履行を管理する現場のトップ責任者です。

そのため、その経験は会社の経営に準ずる管理経験として認められるようになったのです。

  • 要件:建設業に関し、5年以上にわたり、以下の地位にある者として経営業務を執行する権限の委任を受け、経営業務を管理した経験を有すること。
    • 法人:
      • 令3条使用人(支配人、支店または営業所の代表者)
    • 個人事業主:
      • 支配人(支配人登記されていることが望ましい)
      • 建設業を営む個人事業主の使用人

💡 重要なポイント

  1. 「令3条使用人としての届出」が必要:単に支店長を務めていたというだけでは足りません。その期間、行政庁に対し「令3条使用人」として正式に届け出がなされ、受理されている必要があります。
  2. 権限の委任:形式的に名義を借りていただけでは認められません。会社の代表者から、請負契約の締結などに関する権限を正式に委任され、実質的に経営管理業務を行っていたことが求められます。
  3. 常勤性:当然ながら、経管要件を満たす経験期間中、その営業所に常勤していたことが必要です。

支店や営業所が建設業法上の「営業所」に該当し、そこで契約行為を行うのであれば、令3条使用人(支店長・営業所長など)の配置は必須です。

配置する人がこれらの要件を確実に満たしているか、また、常勤性を証明する書類の準備など、許可申請においては非常に重要なポイントになります。

この情報が、あなたの事業の発展に少しでも貢献できれば幸いです。