【建設業許可】建設工事は書面で契約すること

書面による契約

建設工事にて、

「仲の良い下請とは、口頭で契約してもいいでしょ」

などと、思われておられませんか?

建設業法では、書面で請負契約を締結することを求めています。

1.「請負契約」は書面で契約をしなければならない

建設工事の請負契約の明確性及び正確性の担保及び当事者間の紛争発生の防止のため、書面で請負契約をすることを建設業法では求めています。

建設業法で定められた一定の事項を記載した書面に、それぞれの当事者が署名または記名押印をして、相互に書面を交付しなければなりません。

書面での契約方法には、以下のようなものがあります。

  1. 請負契約書を交わす方法
  2. 基本契約書を交わし、注文書・請書を交換する方法
  3. 注文書・請書の交換のみによる方法

次のようなケースでは、建設業法違反となります。

  • 下請工事にたいして書面による契約を行わない。
  • 建設業法で定められた記載事項を書いていない契約書面を交付した。
  • 元請業者の指示に従い、請負契約締結の前に工事に着手し、後から契約書を交付した。

建設業法で定められた記載事項として、建設業法第19条第1項で規定されています。

令和2年10月の改正建設業法の施工により、14項目であった記載事項が16項目に増えました。
古い請負契約書を使っている場合は、見直す必要があります。

  1. 工事内容
  2. 請負代金の額
  3. 工事着手の時期及び工事完成の時期
  4. 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
  5. 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
  6. 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
  7. 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
  8. 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
  9. 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
  10. 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
  11. 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
  12. 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
  13. 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
  14. 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
  15. 契約に関する紛争の解決方法
  16. その他国土交通省令で定める事項
建設業法第19条第1項

これらの項目が記載した請負契約書等を作成することは大変です。

建設業法の基準をクリアした請負契約書は、以下のサイトからダウンロードして活用することができます。

国土交通省の中央建設業審議会「建設工事標準請負契約約款

民間(七会)連合協定工事請負契約約款委員会「工事請負契約約款

2.契約書は書面の原本である必要があるのか

建設業法第19条では、「署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない」と定められています。

建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
~以下省略~

建設業法第19条

メールやFAXで送信する方法だと、契約の相手方にコピーが送信されることになるため認められていません。

必ず請負契約書の内容の改変が出来ないように、原本の交付を求められます。

書面の契約の代わりに、CI-NETなどによる電子契約も認められています。

電子契約であれば、署名または記名押印は不要です。

以下の建設業法施行規則の基準をクリアした電子契約が必要となります。

第十三条の四 法第十九条第三項の国土交通省令で定める措置は、次に掲げるものとする。
一 電子情報処理組織を使用する措置のうち次に掲げるもの
イ 建設工事の請負契約の当事者の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)と当該契約の相手方の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて法第十九条第一項に掲げる事項又は請負契約の内容で同項に掲げる事項に該当するものの変更の内容(以下「契約事項等」という。)を送信し、受信者の使用に係る電子計算機に備えられた受信者ファイル(専ら当該契約の相手方の用に供されるファイルをいう。以下この条において同じ。)に記録する措置
ロ 建設工事の請負契約の当事者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された契約事項等を電気通信回線を通じて当該契約の相手方の閲覧に供し、当該契約の相手方の使用に係る電子計算機に備えられた当該契約の相手方の受信者ファイルに当該契約事項等を記録する措置
ハ 建設工事の請負契約の当事者の使用に係る電子計算機に備えられた受信者ファイルに記録された契約事項等を電気通信回線を通じて当該契約の相手方の閲覧に供する措置
二 磁気ディスク等をもつて調製するファイルに契約事項等を記録したものを交付する措置
2 前項各号に掲げる措置は、次に掲げる技術的基準に適合するものでなければならない。
一 当該契約の相手方がファイルへの記録を出力することによる書面を作成することができるものであること。
二 ファイルに記録された契約事項等について、改変が行われていないかどうかを確認することができる措置を講じていること。
三 当該契約の相手方が本人であることを確認することができる措置を講じていること。

建設業法施行規則

電子契約による請負契約の締結は課税文書に該当しないため、印紙税は課税されません。
印紙税の節約を目的とするのであれば、電子契約による方法を取りましょう。

3.まとめ

大まかに、まとめてみると。

  • 書面で請負契約をすることを建設業法では求めている。
  • それぞれの当事者が署名または記名押印をして、相互に書面を交付しなければならない。
  • 建設業法で定められた記載事項が16項目ある。
  • 請負契約書の改変が出来ないように、原本の交付を求められる。
  • 書面の契約の代わりに、電子契約も認められている。
  • 電子契約結は課税文書に該当しないため、印紙税は課税されない。

請負契約は、仕事の完成という「結果」に対して責任を負う契約です。
契約内容がうやむやだったり、言った言わないという紛争が発生すると、完成という結果に辿りつけません。

そのためきちんと書面を交わして契約するように、と建設業法で定められています。

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